トレーシングレポート(服薬情報提供書)のすぐに使える報告実例を紹介します!その1

この記事ではトレーシングレポートの実例を5例紹介しています。

私は大体月に6枚から10枚程度トレーシングレポートを門前の医療機関を中心に提出しています。

前回書いた記事に記載したトレーシングレポートは他院に対してのものでしたが、今回は主に門前の病院に対して提出しているトレーシングレポートを報告したいと思います。

トレーシングレポートを送りたいけれどどんな内容をおくったらよいか迷っている人の参考になれば幸いです。

この記事がおすすめな人
  • トレーシングレポートとはどんなものか知りたい人
  • トレーシングレポートの例を知りたい人
目次

トレーシングレポート報告例

門前の薬局のトレーシングレポートは既にひな形が指定されており、それに従って記載するようになっています。

門前病院のトレーシングレポートのひな形に関しての公開は許可されていないためいません。

記載した内容のみ抜粋して載せています。

報告例① 頭痛で神経内科受診中の30代女性の訴え

処方薬:ゾーミックRM2.5㎎

患者さんからの訴え

ゾーミックRMをタイミングよく服用してもほとんど効果を感じていない。

以前ロキソニンを飲んで効果を感じたが、強いのではないかと不安になり、服用しないようにしている。

薬剤師からの報告と提案

ゾーミックの服用のタイミングを指導箋を用いて確認しましたが、問題なさそうでした。

ほかのトリプタン系の検討も可能であればお願いします。

また、以前ロキソニンで効果あったようなので追加検討、もしくはアセトアミノフェンを頭痛時に使用しても良いようであればご指示をお願いします。

以前発熱時用としてアセトアミノフェンを処方されており、残薬があります。発熱時以外は使用してはいけないと本人は解釈しており、発熱時のみ使用中です。

ゾーミックが効果なく、ロキソニンがそれほど効果の出る頭痛の場合は片頭痛でない可能性もあると思い、このトレーシングレポートを書きました。

症状としては頭痛の前に光が見えるなどの典型的な片頭痛の症状があること、不確かな情報で処方医の病名に関して口を出すのはご法度なため、それとなくもう一度よく診て欲しいという意図をほのめかした結果、このようなトレーシングレポートになりました。

この患者さんは、次の時にゾーミック中止になり、ロキソニンが追加になりました。

報告例② パーキンソン病で多剤服用の70代男性の運転に関して

処方薬: カルコーパ、レキップ、

他院からの処方薬剤: ルネスタ、サインバルタ

患者さんからの訴え

現在毎朝20分程度保育園の送り迎えを行っている。

車の運転は問題ないよ。

薬剤師からの報告

現在貴院よりカルコーパ、レキップ 他院よりルネスタ、サインバルタと眠気が非常に出やすい薬が多数処方されている状況です。

特にレキップは車の運転に関して警告が出ており、更に高齢であることを考えると、車の運転に関して注意が必要な状況だと思われます。

現在毎朝20分程度保育園の送り迎えを行っていると患者様より伺いました。

ご本人は大丈夫とおっしゃっていましたが、小さな子供を連れての運転、小さな子供がウロウロする朝方の運転は注意力が落ちてくると大変危険です。

今後危険性を感じる場合は先生の方からも患者様への注意喚起をお願いします。

私自身が子供を乗せて運転する環境にいること、近年高齢者の自動車事故が増えているため、危険を感じ、少々余計なお世話かもしれませんが、トレーシングレポートを提出しました。

薬剤師から言われても気にも留めませんが、医師から言われると車の運転をやめようと考える患者さんが多いこと、医師からであればドクターストップをかけられるため、必要な場合はそのような措置を取ってほしかったからです。

同じ科の別の先生はレキップなどの警告が出ている薬に関しては、車の運転をやめるまで処方しないなどかなり注意されています。

本来であればそのくらいして欲しいな…というのが子供をもつ母親としての気持ちです。

報告例③ 予防接種のあとに吐き気が止まらない10代の女性の併用薬

処方薬:ドンペリドン10㎎、ブルフェン錠100㎎

他院からの処方薬剤:カロナール、ナウゼリン10㎎

患者さんからの訴え

主治医にお薬手帳は見せたが、今日は別の吐き気止めを出すと言っていたような気がする。

カロナールは中止でいいと言っていた気がする。

薬剤師からの報告

①「主治医にお薬手帳は見せたが、今日は別の吐き気止めを出すと言っていたような気がする。カロナールは中止でいいと言っていた気がする。」と話が不明瞭だったため疑義紹介をしたいと申し出たが、かたくなに拒否。

他院からナウゼリン(成分名:ドンペリドン)が処方出ており、残薬ある(数不明)とのことなので重複しないように薬袋に記載し、カロナールも中止するように説明して今回はお渡ししました。

ナウゼリン 1日4回服用しても吐き気が止まらず、前医からは本当に必要な時だけ飲むように注意喚起されていたとのこと。

薬袋にも1日2回(処方箋の指示通り)までと記載してお渡ししましたが、主治医にはその話は伝えていないとのことの為、念のため報告します。

コロナのワクチン接種後から調子が悪くなったとおっしゃっていましたが、かなり強烈な感じのお母さまで、子ども吐き気は気持ちからくるものでは?と疑ってしまうような親子でした。

ドンペリドンではない薬を処方するつもりだった(例えばプリンペランなど)も考えられ、本来なら疑義紹介が必要でした。

しかし「疑義照会したいなら勝手にやれば?私たちは待たないし、お金も払う気がない。でも疑義紹介で変わったら教えてくれるのよね?」というクレーマーな患者様で、疑義紹介は難しいと判断し、このような対応になりました。

後々患者さんとの行き違いで病院からのクレームを避けるために事前に内容を報告した形です。

報告例④ K値が2.7まで低下した60代男性

処方の出ていない病院にお薬手帳で確認した情報でトレーシングレポートを作成した例です。

他院処方薬(お薬手帳で確認):カリメート経口液20% 3包分3

門前病院処方薬:トラセミド錠4㎎ 1日1回0.5錠 朝食後

検査値に関する報告

K値:2.7mmol/L(正常値は3.5~5.0mmol/L)

トレーシングレポートを送ることになった背景

門前の病院で血液検査した際にK値が異常に下がっており、お薬手帳で確認したところ、他院の内科からK値を下げる薬が出ており、それが原因で下がりすぎていることが判明。

そこで門前の病院にこのままの量でカリメートを飲ませ続けて良いのか疑義紹介をかけました。

医師

うちで出している薬ではないから中止の指示は出せないんだよね。
薬局からこの病院に連絡をとってくれると助かるな…。

お薬手帳に載っている病院にトレーシングレポートを利用して連絡しました。

薬剤師の対応

月●日、当薬局の門前病院 循環器内科受診。

血液検査にてK値が2.7まで低下していたため、トラセミドはこのまま処方継続でいいのか、カリメート経口液(貴院処方)を減量指示しなくていいのか循環器内科主治医に疑義紹介を行いました。

その結果、トラセミドはこのまま処方継続指示あり。

カリメート経口液は貴院での処方薬であるため、貴院にてK低値になっている旨を伝えて指示を仰ぐように主治医より回答有り。

薬剤に関する提案:

K値が非常に低い数値になっており、心臓疾患もお持ちのようなので不整脈等に注意が必要かと存じます。

カリメート減量の検討を可能であればお願いいたします。

すぐにカリメート処方している病院から連絡があり、1日1回に減量すること、直接患者さんに病院から連絡してくれるとの回答をいただけました。

報告例⑤ 腸閉塞、ヘルニア(脱腸)がある80代の患者さんにコロネル長期処方

処方薬:コロネル細粒83.3%

患者さんからの訴え

便秘が酷くなっており、2日に1度、必ずいきまないと出ません。

薬剤師からの提案

もともとコロネル細粒「術後イレウス等の腸閉塞を引き起こす恐れのある患者には禁忌」となっており、既往歴には腸閉塞(2020.2 疑義紹介済)、ヘルニア(脱腸)があり、毎回いきまないと便が出ない状態が心配です。

酸化Mg(マグミット)や腎機能低下気味の高齢者でも安心して使用できるラグノスゼリー等の下剤はいかがでしょうか。

ご検討いただけますと幸いです。

一度以前疑義紹介を行った例でしたが、しつこくまたトレーシングレポートを送ってみました。

外科のため、薬に先生が関心がなく、トレーシングレポートを見てくれていないのか、その後の処方は継続になってしまいました。

ここまでやってもだめなら仕方がないと諦めた例でした。

トレーシングレポートの利用の仕方

報告例を見ていただけるとわかると思いますが、疑義照会をかけるまでではないけれど、一応先生に報告しておきたいことは割と何でも送っています。

  • 患者さんの訴えであれ?と思ったことや、一応先生に報告したほうがよいと思ったこと
  • 患者さんに色々な手段を使ってかなり伝えたつもりでも、うまく伝わったか不安な場合(クレーマーや認知症等)。事前に医療機関にクレームになるのを防ぐために、こちらはやるべきことをしたと訴える為
  • 薬に関して、緊急性はないが必要な検査が行われていないのではないかと思った場合
  • 検査値に関して、緊急性はないが、高値で放置されていてこのままだと危険な状態になる恐れがある場合。既に症状が出はじめている場合
  • 他院の併用薬などの報告を患者さんがしていなかった場合
  • 多剤服用で、減らせそうな薬がある場合

患者さんを間に挟んだ伝言ゲームはやめよう

私は主治医の顔が見えない、声が聞こえないから、うまく伝わらないかもと思うことはどんどん報告するようにしています。

こちらの意図がうまく伝わらず、患者さんから医師にクレームが入り、薬剤部からクレームがきて泣きそうになったことがありました。

患者さんに「先生に聞いてきてね」と言っても伝わっていなかったこともありました。

患者さんを間に挟んだ伝言ゲームはやめようと思うようになりました。

門前病院の先生とよく直接コミュニュケーションがとれ、連携がとれている場合はトレーシングレポートの出番は減るかもしれませんね。

患者さんに許可をもらえなくてもどんどん書く

一応許可がもらえないと点数を加算することは出来ませんが、大きな点数ではないこと、給料は点数がついてもつかなくても変わらないので、気になったらどんどん送ってしまっています。

患者さんに医師にトレーシングレポートを送ることを言うと、「自分で言えるからいい」「点数取るならいらない」と言われることが多いですが、殆んどの場合は患者さんが自分でうまく伝えられていませんし、忘れてしまっています。

患者さんは先生の前に行くと薬のことより、症状のことで頭がいっぱいになること、専門知識がないため、伝える際にこちらが伝えたかったニュアンスや大事なことはほとんど省かれてしまっています。

そのため、私はどんどん患者さんの許可を得ずにトレーシングレポートを送っています。

ただし、患者さんに許可を得ていないことは、話の行き違いにならないように必ず記載するようにしています。

「送らないでと言ったのに…、自分で言うと言ったのに…」となるとまたクレームになってしまうので注意が必要です。

トレーシングレポートの記載時間といつ書いているのか?

前回他院に対して記載したレポートは色々記載することがあり、数時間程度かかったので流石に家に持ち帰ってサービス残業で行いました。

前回のトレーシングレポートに関する記事こちら↓

しかし門前の病院はひな形があるため、記載する場所が少なく、とても書きやすくなっています。

そのため所要時間としては1件につき10分から15分程度のため、十分に業務時間内にできる範囲です。

おわりに

この記事では簡単なトレーシングレポートの実例を紹介しました。

その2、その3もあります。もっとトレーシングレポート実例を知りたい方はぜひ読んでみてください!

ほかのトレーシングレポート実例はこちら↓

トレーシングレポートを受け取った病院の対応、考えはこちら↓

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