リベルサスとオゼンピックは共に成分名はセマグルチドという薬で、Ⅱ型糖尿病に適応が通っている薬です。
色々と注意点が多い薬の為、メーカーの勉強会で得た情報、糖尿病専門病院での処方の仕方も合わせて、薬剤師目線でわかりやすく伝えていきたいと思います。
セマグルチド(商品名:リベルサス錠、オゼンピック注)の作用機序、効果

セマグルチドという成分で、リベルサス錠、オゼンピック注という2種類のお薬が発売されています。
同じ成分ですが、どういう違いがあるのでしょうか?
詳しく見ていきましょう!
作用機序
GLP-1受容体作動薬と言われる薬の一種です。
膵β細胞上のGLP-1受容体に選択的に結合し、ATPからcAMPの産生を促進させることにより、グルコース濃度依存的にインスリンを分泌させます。さらに、血糖値が高い場合にはグルカゴン分泌を抑制します。


既にGLP-1作動薬としてはリベルサス(経口薬)、オゼンピック(注射薬)の他に商品名としてビクトーザ、トルリシティ、リキスミア、バイエッタ、ビデュリオンが注射薬として販売されています。インスリン製剤との合剤ではゾルトファイ、ソクリアも注射薬として販売されています。
効果・効能(他のGLP-1受容体作動薬との違い)
- 腎機能に関係なく使用できます。
- DDP-4と作用が重複するため、同時に使用することは出来ません。
- 副作用として胃部不快感、下痢、便秘等が報告されているため、少量から始めて徐々に増やす必要があります。
- DDP-4阻害薬、他のGLP-1受容体作動薬よりも体重低下作用や多少HbA1c低下作用があるため、肥満傾向のある人に出ることが多い薬です。
- そのため、初期の食事療法の段階での使用も推奨されています。
MSD製薬 リベルサス臨床試験データから一部抜粋しました。
体重減少効果を期待されて処方される薬だが、実際のんでいる患者さんでの変化は?
食欲抑制効果、体重減少効果は明らかに、トルリシティ、ビクトーザより強いです。
下痢や胃部不快感は用量依存的に増える傾向があります。
経口であることが影響しているのか、添加剤の影響なのか、リベルサスの方がオゼンピックよりも消化器症状が多い印象です。

当院の医師は、食欲が抑えられない精神科の患者さんに、敢えて処方しています。

新薬のマンジャロは、更に体重低下作用が強いようなので、フレイル傾向の患者さんには使用できないかもしれません。
オゼンピック注の特徴と使用方法の注意点
週に1回使用の製剤で、その点はデュラグルチド(商品名:トルリシティ皮下注)に類似していますが、作用時間、体重減少効果はオゼンピックの方が強いと言われています。
以前は単位ごとに製剤が分かれていましたが、デバイスの不具合が指摘され、現在は2㎎まで調整できるデバイスに変更されています。

使用上の注意点
- デュラグルチド(トルリシティ皮下注)よりも多少作用時間が長く、体重低下作用はオゼンピックの方が強いようです(ノボノルディスクプロ SUSTAIN7試験参照)。そのため、切り替えるときは初めて使用する場合と同様に、必ず0.25㎎からにしてください。
- 冷所から出してすぐに使ってもOK
- 胃部不快感、便秘、下痢の副作用が出やすい為、必ず0.25㎎から開始し、徐々に増やすようにします。

少量から始めれば、胃部不快感は慣れてきて出にくいようです。
この副作用はトルリシティ皮下注の2倍出るようです。
- 0.25㎎から開始し、4週後には0.5㎎に増やすことが推奨されていますが、副作用が出た、0.25㎎で十分に効果が出ている場合は0.5㎎まで増やさずにそのまま0.25㎎で継続することもあります。
- 打ち忘れた場合は、4日目まではそのまま打って問題ありません。次回からは正しい曜日に打ってください。5日以上あく場合はスキップしてください。

リベルサス錠の特徴と使用上の注意点

吸収促進剤SNAC(サルカプロザードNa)を含むことで、胃で分解されにくく、胃粘膜を少しあけて通りやすくすることで吸収を上げることに成功した、現在日本で唯一の経口GLP1-1受容体作動薬です。
半減期が長い為、たまに忘れても血中濃度に大きな影響はないことも特徴になります。
使用上、調剤時の注意点
- 必ず食間に服用してください!起床時がおすすめです。毎日服用する必要があります。

吸収促進剤(SNAC)を添付しても、そもそも1%程度しか吸収されないため、成分量も注射薬よりも多めに入っています。食後や服用後30分以内に食事をとると効果0になってしまうため、必ず食間服用は守ってください。

30分以上あけていれば、それ以上空いている分には問題ないです。
30分経ったら、きっちり食事をとらないといけないわけではないよ!
- コップ半分の水(120ml以下)、出来れば水1口で服用すること。

少なければ少ない程水の量は良いです。
多すぎると 吸収促進剤(SNAC)の濃度が落ちて効果が落ちる為です。服薬ゼリーも不可になります。
- 光の影響を受けるため、一包化などは推奨されていません。

発売当初は、シートを縦に切ってはいけないない(必ず偶数で処方)どと言われていましたが、現在は端数などで処方しても問題ないことがわかっています。

当院は糖尿病専門の病院ですが、普通に切って渡しています。

古い指導箋には、まだ「シート縦に切るの禁止」の注意書きがあるので、よく薬局から問い合わせを受けるのですが、その点はメーカーにも確認済です。
- 吸収促進剤(SNAC)の量が2倍になるため、14㎎は7㎎×2Tでは調剤できません。
- オゼンピックと同様に、副作用を防ぐため、必ず3㎎から開始し、4週以上あけて徐々に増やす事。
リベルサス、オゼンピックは長期で使用すると、効果が落ちてくる?
大体半年を過ぎたあたりから、HbAicなどの低下効果が落ちてくるデータがあるようです。
耐性が出来る等とは少し違うようですが…。
リベルサスやオゼンピックはかなり食欲を落とす効果があるため、食欲がわかないことに疲れた患者さんの服薬コンプライアンスが落ちてくる、または間食が増えてくることによる影響が大きいのでは?との専門医のご意見でした。

糖尿病になる人は、そもそも食べることが好きな人が多いからね。

食べることがストレス解消だから、食べれないとストレスがたまるのかも…
まとめ
オゼンピック発売当初、注射薬は以前からGLP-1受容体作動薬は色々種類が出ていたので、体重減少効果は素晴らしいですが、他の点では正直目新しさはあまりありませんでした。
しかしHbA1c低下効果も素晴らしく、食欲抑制効果が強い為、食べ過ぎてしまう患者さんにも使用しやすく、当院では頻繁に処方されています。
リベルサスは、食事の影響を受けてしまうのは難点ですが、注射を打たなくて良い点は、とても画期的だと思います。
どちらの薬も投薬時、監査時に注意点、説明することが多い薬です。この情報が参考になれば幸いです。
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