GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は、薬剤師や医師ならば知らない人がいないくらい、今やメジャーな薬です。
しかし医師であっても専門外の医師は、「GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は併用してはならない」ことを知らない人がかなりいるようなので、記事にしてみました。

何回か、薬局時代に疑義紹介かけました。

この前勉強会でも、DPP-4阻害薬にGLP-1受容体作動薬を、なぜかぶせてはいけないのかを質問していた医師がいました。
GLP-1受容体作動薬とは?

作用や具体的な薬品名を紹介します。
GLP-1受容体作動薬の作用
膵β細胞に膜状上のGLP-1受容体に結合し、血糖依存性にインスリン分泌促進作用を発揮する薬です。同時にグルカゴン分泌抑制効果もあります。
薬にもよりますが、胃内容物排泄抑制作用があり、消化器症状の副作用が出やすく、食欲抑制、体重低下作用がある傾向にあります。

急性膵炎の副作用があるので、膵炎の既往のある人には慎重投与です。
GLP-1作動薬の具体的な商品名
ほとんどのものが注射薬です。
- ビクトーザ(リラグルチド)
- バイエッタ(エキセナミド)
- リキスミア(リキシセナチド)
- ビデュリオン(持続性エキセナチド)
- トルリシティ(デュラグルチド)※週1回
- オゼンピック※週1回、リベルサス(セマグルチド)★

★リベルサスのみ唯一の経口薬です。
- ゾルトファイ(トレシーバ(インスリン デグルデク)+ ビクトーザ(リラグルチド)の合剤)※週1回
- マンジャロ(チルゼパチド)New 世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬。薬価収載は2023.4※週1回
DPP-4阻害薬とは?
簡単に、作用と代表的な薬を紹介します。
DPP-4阻害薬の作用
DPP-4の選択的阻害により、活性型GLP-1濃度および活性型GIP濃度を高め、血糖降下作用を発揮する薬です。
血糖依存的にインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制するため、単独投与では低血糖の可能性は低いです。
また、体重減少、増加もしにくい薬です。
DPP-4阻害薬の具体的な商品名
- ジャヌビア・グラクティブ(シダグリプチン)
- エクア(ビルダグリプチン)
- ネシーナ(アログリプチン)
- トラゼンタ(リナグリプチン)
- テネリア(テルネグリプチン)
- スイニー(アナグリプチン)
- オングリザ(サキサグリプチン)
- ザファティック(トレラグリプチン)※週1回
- マリゼブ(オマリグリプチン)※週1回
なぜ併用してはならないと言われているのか

作用からして、GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は類似しているという認識は皆さんお持ちだと思います。
具体的に何故ダメなのかの根拠を記載してみました。
作用点が同じため
DPP-4は消化管ホルモンのインクレチン(GLP-1、GIP)の分解しますが、DPP-4阻害薬はこのDPP-4の働きを阻害することで、インクレチンホルモン(GLP-1、GIP)の濃度をあげます。
GLP-1受容体作動薬は、このGLP-1やGIP(マンジャロのみ)と同じ作用をもっています。そのため、結果として同じ膵臓の受容体に作用している状態です。

【糖尿病治療ガイド2022~2023】にも記載あり
膵β細胞膜上のGLP-1受容体に結合し、血糖依存的にインスリン分泌を促進作用を発揮する。さらにグルカゴン分泌抑制作用も有する。同様にGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有するDPP-4阻害薬との併用の有効性および安全性は確認されていない。
糖尿病治療ガイド2022~2023 ⑥薬物治療
上記のように記載されており、テネリアのQ&Aにも下記のような記載があります。

健康保険で切られる可能性あり
健康保険の保険機関(国保か社保か)や、地域によっても判断が分かれるところではあります。
しかし、私のいる県では健康保険で保険が切られてしまうので、併用しないように、処方時、監査時のどちらも注意してチェックしています。
糖尿病専門医の間では常識
バイトで来ている他県の糖尿病専門医の方々も、必ずDPP-4阻害薬とGLP-1作動薬はどちらかに絞るようにしているため、おそらく専門医の間では常識なのだと思われます。
他にもある、注意の必要な糖尿病薬の組み合わせ

この辺りは知っている方が多い為、あえて記事にするつもりはないのですが、禁忌薬には記載されていませんが、SU剤とグリニド薬も作用点が同じで、保険で切られる可能性が高い組み合わせのため、注意が必要です。

以前薬局にと勤めていた時、近くの病院の院長が、どんなに言っても、SU剤とグリニド薬を併用したがるため困ったことがありました。

保険で切られなかったのかな?保険者の判断も、人により分かれるのかもしれないです。
まとめ
以前勤めていた薬局で一緒だった薬剤師も、「GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は併用してはならない」ことを知らなかったため、記事にしてみました。
参考になれば幸いです。
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