私の働いている病院は糖尿病の専門病院の為、薬として扱う範囲は狭くなってしまいました。
しかしその代わりに薬のみならず検査や栄養などに関して学べる事が沢山あり、病気を全体として見ていく感覚が楽しいと感じています。

心臓内科の先生も来ているので、糖尿病その他成人病、心疾患の薬は扱っています。
メンタルやリウマチ、抗がん剤の併用薬チェック程度は行っています。
糖尿病は薬だけでは治らない!?
総合病院の門前薬局で働いていた時は見えていなかったのですが、想像以上に糖尿病は普段の生活を個人の意識改善が必要な病気です。

HbA1cと腎機能しか薬局では注意していませんでしたが、実際には血糖値の上下、体重の変化、薬による食欲の影響、普段の食生活、運動習慣、家族のサポート、インスリンの手技、本人の意識など様々な事を意識して初めてコントロールできる病気であることを学んでいます。
糖尿病患者の数
糖尿病に罹患している人が1000万人、疑いのある人が1000万人、成人の6人に1人が糖尿病もしくは予備軍となっています。

透析になる原因の1位が糖尿病です。高血糖は腎臓にかなりの負担を与えています。
糖尿病は食事、運動、本人の意識改革がすごく大切
定期的に丁寧な指導が入ったり、入院により自身の栄養バランス、生活スタイルが身体にあっていないことを学習することでかなり糖尿病は改善していきます。

他の病院でお手上げだった患者さんが改善していくのは感動します。

もちろんメンタル疾患だったり、家族関係が複雑だったり、高齢で認知機能が悪化していて介入が難しいケースも沢山ありますが…
糖尿病を改善していく多職種の関り方
所属している病院では、医師を中心に、看護師、管理栄養士、薬剤師、検査技師がそれぞれ共通の糖尿病に関する知識を共有しながらそれぞれの専門性を活かしつつ外来、入院ともに患者さんのサポートに当たっています。

腎疾患(CKD)に関してもかなり手厚く指導が入ります。

皆で指導内容を共有できるように、カードパスのようなものを活用しています

医師
糖尿病専門医、心臓専門医、泌尿器専門医がおり、必要に応じて連携をとっています。

糖尿病と心疾患、腎臓、泌尿器、眼の関りはかなり深いということを入職して知りました。
看護師
主にインスリンの手技、指導にあたっています。
緊急入院時の対応、入院病棟管理もほとんど看護師さんの仕事です。

糖尿病になるひとは高齢者が多いから指導が大変そうです…
管理栄養士
糖尿病と栄養管理はかなり重要な結びつきがあるため、コメディカルの中で一番活躍しているのが管理栄養士さんだと思っています。

生活指導、薬物指導、運動の指導まで彼女たちは何でもやっています。そして説明の仕方がべらぼうに上手です。

カンファレンスでも大活躍しているのは管理栄養士さん!

糖尿病の方は食生活に問題があるけれども、隠すので、それを上手に傾聴を重ねて導いていくのが上手です!
入院中は適正なカロリー、塩分量の食事をとってもらい、普段との食事量の違いを実感してもらうのも大切な事です。
薬剤師
外来時の監査、疑義照会対応、様々な職種の人からの薬の質問、ワクチン管理、入院薬の準備、医師に対して薬に関して情報提供したり、勉強会セッティングなども仕事です。
少し医師と職能が被る部分があるので、チーム医療になると、栄養士さんほどの活躍が出来ていない感じが少し残念です…。

医師としてはもっと処方提案とかキレのいいアドバイスとか欲しいらしいですが、専門医に対してそんなアドバイスが出来るほどの力がまだありません…(涙)
検査技師
血液検査や生理検査などを行い、糖尿病の進行度合い、合併症(動脈硬化、視神経障害、神経障害、腎障害)の進行度合いを確認しています。

抗GAD抗体(自己抗体)、CRPなどインスリン分泌の有無、Ⅰ型糖尿病とⅡ型糖尿病診断法、2つの境界型の存在なども、入職して初めて知りました。

MCVなど動脈硬化の測定法、音叉などの神経障害の測定法なども初めて知りました。
糖尿病の薬の使い方
薬局で勤めていた時はそこまで深い処方意図があったとは知らず、転職してよかったな…としみじみ思っています。

へーと思った薬の使い方を紹介します
専門医ならではの処方
- メトホルミンとツイミーグの併用

構造が似ているし、作用も似ているイメージがあったので、併用不可なのでは?とすら思っていました。
しかし専門医の間では全然別物という認識で、頻繁ではないですが、インスリン抵抗性が高い人に併用されます。

メトホルミンは下痢が多く、ツイミーグもメトホルミンほどではないですが下痢がでるので、下痢の副作用に注意です。

ツイミーグはDPP-4阻害薬と類似の作用もありますが、DPP4阻害薬との併用も問題ありません。
- SGLT2阻害薬はⅠ型糖尿病患者には慎重投与

I型の糖尿病の人はケトアシドーシスを引き起こしやすいのですが、SGLT2阻害薬を服用していると血糖が上がらず、正常血糖ケトアシドーシスを引き起こすことがあるので注意しています。

最近心疾患の予後をよくするという情報のせいでやたらSGLT2阻害薬の処方が増えているようですが、I型糖尿病のケトン体が2以上出ているケースや、Ⅱ型糖尿病でもダイエットしているケースなどは要注意みたいです。

SGLT2阻害薬の他院処方をみて、「ほらな!他の医者はわかってない」と院長がぼやいてました
- オゼンピックは食欲を抑える目的で使用

肥満気味の人や、食欲を抑えられない人にオゼンピックが積極的に出ていますね。トルリシティは食欲低下作用は弱いみたいですね。

精神疾患でドカ食いしてしまう人、SU剤で食欲が出ていた人に処方していました

新薬のマンジャロは食欲低下作用と体重抑制作用がオゼンピックよりさらに強いようだけど、逆にフレイルの患者さんには使えなさそうだよね。
- チアジド系は血糖を上げる事が多いので注意する

フルイトランとか好きなDr多いですが、難治性の高血糖を引き起こしているケースもあるようで専門医は注意してみているようです。

合剤にも入っているから確認しないとね
- メトホルミンはやっぱり最強だけど、想像以上に下痢が多い。

メトホルミンを中止するとHbA1cが上昇することが多いので、やっぱり最強なんだと思います。
しかし水様便がかなり多いので注意

乳酸アシドーシスはほとんど起きませんが、透析患者では起きることもあるようなので、腎機能がeGFR<30になったら禁忌だし、中止が無難。専門医ですらそこはやめている。
- 一昔前のレべミル等のベースコントロール薬に比べると、ゾルトファイ(トレシーバとビクトーザの合剤)は超優秀

合剤だから優秀なのか、それぞれの効果が優秀なのかはわかりませんが、レべミルを異常な量で投与していた患者さんでも、ゾルトファイに変えたら通常量でコントロールできています。
その他糖尿病薬以外の処方の仕方
- ニフェジピン投与中の頭痛、肩こりで葛根湯長期処方のケース、ロサルタンに変えることで改善

ニフェジピンの副作用の肩こり…。浮腫のイメージはあったけど、そういやそんな副作用あったなという感じで忘れていました。

このぐらいのことは気が付いて言って来て欲しいと言われましたが、ちょっと私の力量では(涙)
糖尿病専門医がいる施設でとれる資格とは?
糖尿病療養指導士(Certified Diabetes Educator of JAPAN :CDEJ)
糖尿病患者の療養指導に従事するコメディカルスタッフ(看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士※准看護士、栄養士は現在では不可に)に与えられる資格で、糖尿病専門医のいる施設で2年以上従事し、必要な症例を提出すると受験資格が得られます。
2020年7月時点で18774人の合格者がおり、2023年現在23回の試験が行われました。

年に1回しかないので、実質3年仕事に従事した後に試験を受ける人が多いみたいです。
入職前、入職後もテキストを使って勉強中なのですが、薬学以外の栄養学、検査、医学、理学療法に関しての出題が3/4くらいを占めているので、間違えまくっています(涙)

受験は約2年後なので、ゆっくりやっていこうと思っています

検査、栄養、運動のところが馴染みがなさ過ぎて頭に入らない…
参考書籍
糖尿病指導ガイドブック2022 ★★★
受験生の全員が持っている一番重要なテキストです。まずはこれをしっかり読み込みます。
試験対策問題集 糖尿病療養指導のための力試し300題 ★★★
これも周りで受けている人は皆持っているようなので、ほぼ必須を言っていいと思います。
ところどころ問題文の誤りなどが目立ちますが、解説がかなり丁寧で、良い問題集だと思います。
地域糖尿病療養指導士(Local Certified Diabetes Educators :LDCE、Certified Diabetes Educators of Local :CDEL)
全都道府県でCDELが組織され、2020年7月時点で54団体となっています。
CDEJとは異なり、医療事務、歯科医師などCDEJの受験資格のない人でも幅広く受験することが出来ます。

私のいる病院では事務科のスタッフの大多数が持っています
二つの資格の違いは?
知識量と受験資格、更新の必要性などの違いがあります。

ざっくり言うとこんな感じです↓
- CDEJは管理栄養士、薬剤師、看護師、理学療法士、臨床検査技師しか受験資格がないが、CDELは様々な職種の人に受験資格がある
- CDEJは受験資格に、就労条件、症例の提出、試験があるだけでなく、必要な単位を取得したうえで更新を5年に一度しなければならず、取得だけでなく維持にもお金と時間がかかる。CDELは就労条件、症例提出などはなく、講習会受講で受験資格が得られることが多い。試験問題も地域により様々(調べながら出来る試験のことも)で、更新の有無も地域による。一般的に受験手数料、更新手数料はCDEJに比較して安価である。
全体的にはCDEJの方が取得難易度が高い為、重宝される傾向にあります。費用がかかるため、取得を推奨している施設では、補助金として給料が上がるケースが多いようです。

私のいる病院でも月2万円あがるので、皆受験するようです。

入職時にもいずれ取得して欲しいと念を押されたので、教育入院を行っているような病院では重要な資格みたいです。
勉強不足を痛感する毎日
わからないことが多く、カンファレンスでは睡魔に襲われて、最後に怒られていますが、頑張ります!
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