ニフェジピンCRが手に入らなくて困ってはいませんか?
私の勤務しているクリニックでは、ニフェジピンCR20mgが特に入ってこなくて困っています。

ニフェジピンCR10mgを倍量出してなんとかごまかしてますが、そろそろ10mgも怪しくなってきました。
医師に納得してほかの薬に変更していただけるように、ニフェジピンCRの代替薬候補に関してまとめました。
この記事でわかること
- ニフェジピンCRとアムロジピンの違い
- ニフェジピンCRとほかのカルシウム拮抗薬との違い
- カルシウム拮抗薬の選び方
- カルシウム拮抗薬は1日1回か2回か
ニフェジピンCR(アダラート他)とは

おそらくこの記事を読んでくださる方は、ニフェジピンCRに関してよく知っている方が多いと思うため、簡潔にまとめました。
効果・効能
下記に適応が通っています。
- 高血圧、腎実質性高血圧症、腎血管性高血圧症
- 狭心症、異形狭心症
副作用
色々ありますが、一番代表的なものは薬の効きすぎによる、低血圧です。
ほかに代表的なものとして、浮腫、顔面紅潮、頭痛、めまい、倦怠感などが報告されています。

ニフェジピンCRの副作用で頭痛、めまいが出ている可能性があるにもかかわらず、葛根湯、その他頭痛薬が出ているケースがあります。

もちろんめまいや頭痛はニフェジピンCRの副作用ではないかもしれません。けれどニフェジピンCRが高用量で出ている場合は、可能性が否定できないため、注意してチェックしたほうがよいでしょう。
副作用は用量依存で発生する?
報告されている副作用のほとんどは、血管の拡張が原因でおきるものです。
用量がふえるほど、副作用の出る確率は上がると考えられます。
1日2回投与できる?
ニフェジピンCRの用法は適応疾患により異なります。
適応疾患 | 用法・用量 | 最高用量 |
高血圧 | 20〜40mgを1日1回 | 1回40mg1日2回 |
腎実質性高血圧症、腎血管性高血圧症 | 20〜40mgを1日1回 | None |
狭心症、異型狭心症 | 40mgを1日1回 | 1日1回60mg |
高血圧の場合のみ、1日2回まで使用できます。2013年に1回40mg 1日2回までの適応が通りました。

以前は1日1回だったので、よく疑義紹介をかけていました。
1日1回と2回とではそんなに効果が違うの?
薬物動態的な視点から考えると、定常状態になる薬のため、1日1回でも2回でもよいのではないかと考えられます。
しかし実際の臨床現場では、1日に飲む量は同じでも、1日1回と2回とでは降圧効果が異なるとの報告が多いようです。

朝がたの高血圧を抑える効果が高い気がするようです。
添付文書では、以下のような記載があります↓
本態性高血圧症患者に40mgを1日1回又は1日2回2週間経口投与したときのトラフ時血中未変化体濃度は、1日1回投与で26.7ng/mL、1日2回投与で68.1ng/mLであった
アダラートCR添付文書より抜粋
また、インタビューフォームで1日1回40mgよりも1日2回80mgのほうが効果があったことが報告されています。

1日2回だから効果があるというよりは、用量が単純に2倍に増えた影響が多い気もします。
同じ用量を分1と分2で比較したデータは発見できませんでした。
ニフェジピンCR(アダラート他)の注意点
ものすごく有名なのでいまさらですが、ニフェジピンCRは分割したり、粉砕してはいけません。

徐放製剤なので粉砕すると、製剤工夫が意味をなさなくなってしまいます。

インタビューフォームにも記載がありますが、副作用発現のリスクもぐっと上がるので、必ずブロックしましょう!

もう1点ですが、ニフェジピンCRの血中濃度があがるので、グレープフルーツジュースとの併用には注意しましょう!
ニフェジピンCR(アダラートCR他)とほかのジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の違い

作用するCaチャネルの型による使い分け(L型、N型、T型)なども意識されていた時代があるようですが、臨床的な違いに結び付くほどのエビデンスが少ないため、あまり最近は意識されていないようです。
よく使用されるジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬の特徴をまとめました。
医薬品名 | 特徴 |
ニフェジピンCR(アダラートCR他) | ・最も降圧作用が強力。作用時間は24時間 ・朝がたの痙攣縮抑制作用がある |
アムロジピン(ノルバスク他) | ・36時間たっても体の中に半分の薬効成分が残る。 ・降圧作用は強力 ・腎臓の輸入細動脈を開きますが、輸出細動脈を開かないので比較的むくみが起こりやすい |
ベニジピン(コニール他) | ・朝がたの痙攣縮抑制作用がある。 ・輸入細動脈と共に輸出細動脈も開くので、むくみが起こりにくく、蛋白尿を減らす ・作用時間は4時間程度 |
シルニジピン(アテレック他) | ・交感神経抑制作用(心拍数の上昇抑制)を有するため、頻脈の方に使用しやすい ・輸入細動脈と共に輸出細動脈も開くのでむくみが起こりにくく、蛋白尿を減らす ・作用時間は3時間程度 |
カルブロック(アゼルニジピン他) | ・腎臓からのナトリウム排泄作用を有する ・輸入細動脈と共に輸出細動脈も開くのでむくみが起こりにくく、蛋白尿を減らす。 ・緩やかな降圧で心臓への負担が軽く、頻脈の人に使いやすい ・作用時間は4時間程度 |
アムロジピンやニフェジピンCRの降圧効果はARBよりも強いことが論文で報告されています。
アムロジピンがほかのジヒドロピリジン系の降圧剤と比較して降圧作用が強いことも論文で報告されています。
どのジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬がもっとも使用されているか
日経メディカルによる2023年の調査によると、
1位:アムロジピン(ノルバスク、アムロジン)76.6%
2位:ニフェジピン(アダラート、セバミットR他)7.4%
3位:アゼルニジピン(カルブロック他)5.7%
その他 10.3%
2015年からずっと調査を続けているようですが、ずっとアムロジピンが圧倒的なシェアを誇っているようです。
結局アダラートCR(ニフェジピンCR)と一番類似しているのはアムロジピン?

強さや作用時間などを考慮して考えると、一番アダラートCR(ニフェジピンCR)と類似しているのは、ノルバスク(アムロジピン)ではないかと考えられます。
ただ、当院の医師の意見では、やはりアダラートCR(ニフェジピンCR)のほうが降圧効果が強いようで、まったく同じというわけではないようです。
比較換算表ってあるの?
さまざまな論文を読みましたが、探した範囲では、アダラートCR(ニフェジピンCR)とノルバスク(アムロジピン)をはっきりと比較したデータは発見できませんでした。

アダラートLとノルバスクの比較データはありました。
発売はノルバスクが1993年、アダラートCRが1998年です。
経験則だと思いますが、埼玉協同病院 薬剤科が作成した資料を参考に作成した表を掲載します。
薬品名 | 用量 | |||
ノルバスク(アムロジピン) | 2.5mg | 5mg | 7.5mg | 10mg |
アダラートCR(ニフェジピンCR) | 30mg | 60mg |
当院の医師も類似のことを言っていたので、ずっと使用している方の印象はだいたい上記のような感じなのかもしれません。

ニフェジピンCR 1回40mgを1日2回だと、アムロジピンのMAXを超えられます。
これもニフェジピンCRのほうが強いと言われる理由の一つかもしれませんね。
どうしてアムロジピン?ニフェジピンCR?医師の意見とは
2015年の日経メディカルに掲載されていたものをまとめました。
アムロジピンを選ぶ理由としては以下のようです。
- 確実に降圧できる
- 半減期が長く、早朝高血圧をおさえる
- 拡張期高血圧を抑える
- 合剤に含まれているので使用しやすい
ニフェジピンCRを選ぶ理由は以下のようです。
- 降圧効果が強く、冠攣縮性狭心症に有効
- 妊娠高血圧症候群の後に使用しやすい
- 即効性がある
アムロジピンは1日2回で使用できる?
ニフェジピンCRの代替薬として一番提案しやすいのは、アムロジピンだと思います。
しかし医師によっては分2での使用にこだわっている人もいるため、その場合はどうしたらいいのでしょうか?
地域にもよるが、アムロジピンも分2で処方できる
アムロジピンは1日2回では適応が通っていません。
1日2回は適応外使用になるため、保険が通るかどうかは保険者の判断になります。
ちなみに私の居住地ではアムロジピンは1日2回で処方できます。近隣の市では、医師のコメントをつければ通るようです。参考にしてください。
実際にアムロジピン5㎎を分2にすることで降圧効果が上がったとする医師の意見です↓
アムロジピン5mgを1日1回に投与した群(199人)と2.5mgずつ1日2回に分けた群(260人)の治療効果を比較し、早朝高血圧の低下に差があることを見いだした。1回投与群では収縮期血圧低下が平均10mmHgだったのに対し、2回投与群では12.5mmHgだった。
日経DI2015年4月号 降圧薬 その処方、どうして?Ca拮抗薬降圧薬より抜粋
参考資料

参考にした資料を以下にまとめました。
参考文献
- アダラートCR添付文書
- ニフェジピンCR「サワイ」インタビューフォーム
- Outcomes in hypertensive patients at high cardiovascular risk treated with regimens based on valsartan or amlodipine: the VALUE randomised trial
- 第3世代のカルシウム拮抗薬:ベシル酸アムロジピンの開発
参考サイト
- 埼玉協同病院 薬剤科 DIニュース
- DI Online 降圧薬 その処方、どうして?
- 日経DI2015年4月号 降圧薬 その処方、どうして?Ca拮抗薬降圧薬
- カルシウム拮抗薬市場でアムロジピン、シェア7割強の圧倒的な人気
- 日経メディカル Ca拮抗薬:アムロジピンが圧倒的な人気
まとめ
私が勤めているクリニックの医師はニフェジピンCRの使用頻度が高いです。しかし出荷調整の影響で、あまりにも最近手に入りません。
代替薬を提案しなければならない段階が近づいてきているため、いろいろ調べてみました。
全国で困っている薬局や病院はたくさんあると思うので、良ければ参考にしてください。
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