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なぜメトホルミンで下痢になる?整腸剤で対策できる?メトホルミンの多面的効果とあわせて薬剤師が徹底解説!

メトホルミンはビグアナイド薬に分類される経口糖尿病治療薬のひとつで、多面的な効果や安全性が高いこともあり、非常によく使われている薬です。

しかしメトホルミンを飲み始めてから下痢が気になっていたり、苦痛を感じている人はいないでしょうか?

そのような人のために、メトホルミンの下痢が起きるメカニズム、対処法、どのような時に主治医に報告したほうがいいのかなどをまとめました。

メトホルミンの作用や効能に関しても簡単にまとめましたので、併せてご覧いただけたら幸いです!

この記事をよんでわかること
  • メトホルミンのメインの効果だけでなく、ほかの多面的効果
  • メトホルミンは低血糖を起こすかどうか
  • メトホルミンのその他の副作用とは?
  • メトホルミンを飲むと下痢を起こす理由
  • メトホルミンの下痢を防ぐ方法
  • どんな時は主治医に相談したほうがいい?
目次

メトホルミンはどういう薬?どんな効果があるの?

メトホルミンはどのような効果のある薬なのでしょうか?

適応外使用や今後期待されている効果などの情報も併せてまとめました。詳しく見ていきましょう!

メトホルミンはインスリンの抵抗性を改善する

メトホルミンはインスリン感受性を高め(インスリン抵抗性を改善)、血糖降下作用を発揮します。

メカニズムとしては、肝臓での糖新生(肝臓からの糖の放出)の抑制、筋肉を中心とした末梢組織での糖の取り込みを促進です。

そのほか、食欲抑制糖質吸収遅延効果などが報告されています。

メトホルミンのその他の効果

メトホルミンにはインスリン抵抗性改善作用だけでなく、多方面にわたる効能が報告されています。

まだ研究段階のものも多いですが、まとめてみました。

心血管イベントの抑制効果

メトホルミンの心血管イベントの抑制効果は、体重を増やさずに、インスリン抵抗性を改善し、さらに血管内皮機能やリポ蛋白代謝、酸化ストレスの改善を介して糖尿病における催血栓作用を改善するためと考えられています。

便の中にブドウ糖を排泄 GLP-1の分泌も促進

メトホルミンにはインスリン分泌を刺激する消化管ホルモン(インクレチン)であるGLP-1の分泌促進作用もあると報告されています。

体重減少には、このGLP-1による胃排出の抑制効果や食欲の抑制作用も関与している可能性があります。

さらに神戸大学では、メトホルミン「便の中にブドウ糖を排泄させる」という作用があることを、ヒトを対象とした研究結果を発表しています。

がんの発症リスクをおさえる

2型糖尿病患者でのがんの発症率は、メトホルミン使用者で低かったという研究報告があがっています。

メトホルミンが作用する「AMPK」(AMP活性化プロテインキナーゼ)は、細胞の中で生命を維持するために必要な働きを担っている重要な酵素のひとつです。

肝臓などでAMPKを活性化することで、がんの発症を抑えていると考えられています。

ほかにもウイルス感染した細胞やがん化した細胞など、生体に危害を与える細胞の殺傷・除去に関わっているキラーT細胞である「CD8」が、メトホルミンによって活性化・増殖するという研究を岡山大学が発表しています。

不妊治療にも効果が期待されている

不妊の原因の一つである多嚢胞性卵巣症候群(POCS)というものがあります。

多嚢胞性卵巣症候群(POCS)が起きる原因の1つに、インスリン抵抗性が関与しているということが研究によって分かってきました。

インスリン抵抗性のある多嚢胞性卵巣症候群の場合、メトホルミンを主成分とする薬を服用することで、排卵しやすくなることが期待されています。

2022年12月に不妊治療に適応が通っています。

かばこ

メトホルミンは妊娠初期に飲んでいることが判明しても安全な薬とされています。

老化予防の研究も進んでいる

オーストラリアのとある地域在住の高齢者1,037人(70~90歳)を対象におこなった研究結果で、メトホルミンを用いることで、糖尿病による認知機能の低下を非糖尿病患者と同程度に抑える可能性が示唆されました。

腸内フローラにも影響

メトホルミンの服用によって、腸内細菌に対して好ましい変化があらわれ、それが血糖コントロール改善に影響を与えている可能性があるという研究がシンポジウムで報告されています。

ダイエット効果はあるの?

前述したように、メトホルミンには体重を増やさず、ブドウ糖を便に排泄する効果、GLP-1の分泌を促進する効果が報告されています。

劇的な体重減少効果は期待できませんが、食べ過ぎを減らしたり、食欲を抑えたり、便秘の改善などのダイエットサポート効果は期待できるのではないでしょうか。

メトホルミンの副作用は怖い?低血糖は起きるの?

副作用に関して簡単に説明したいと思います。

メトホルミンはほとんど低血糖をおこさない薬!

メトホルミンはインスリンの分泌を伴わないため、単剤では低血糖をおこしにくく、安全性の高い薬です。

添付文書でも、低血糖の症状と思われる、「発汗・脱力感・空腹感」の症状は頻度不明と報告されており、非常に低い確率であることがわかります。

メトホルミン250mg「SN」添付文書より抜粋

アシドーシスをおこす恐れがある?頻度と対策とは

1970年代に、同じビグアナイド系であるフェンホルミンで致死的な副作用である乳酸アシドーシスが問題となり、1977年に、日本・米国・欧州でフェンホルミンが使用禁止となりました。

そのため、メトホルミンでもアシドーシスに関して注意喚起がおこなわれていますが、じつはそれほどメトホルミンのアシドーシスをおこすリスクは高くありません。

メトホルミン内服患者の乳酸アシドーシスの罹患率は10万人年当たり9人と非常にまれですが、メトホルミンを内服していなくても10万人年当たり10人と同程度の罹患です。

しかし腎機能が落ちている患者さんでは事情が変わってきます。

メトホルミンを内服している2型糖尿病患者7万7601人を対象としたコホート研究では、乳酸アシドーシスの発症は、腎機能正常(eGFR>90㎖/min/1.73㎡以上)、軽度の腎機能障害(eGFR60〜90㎖/min/1.73㎡)、中等度の腎機能障害(eGFR30〜60㎖/min/1.73㎡)、高度の腎機能障害(eGFR≦30㎖/min/1.73㎡未満)の患者でそれぞれ、10万人年当たり7.6、4.6、17、39であり、有意差は認めないものの、中等度以上の腎機能障害患者で多い傾向となっています。

かばこ

メトホルミンの添付文書上でもeGFRが30以下は禁忌となっています。
私の勤務先でも、eGFR30を切った場合は必ずメトホルミンは中止にしています。

下痢や便秘などの消化器症状が多い!

下痢、便秘などの消化器症状の発生頻度は高めです。

添付文書でも下痢は40.5%、悪心(15.4%)、食欲不振(11.8%)、腹痛(11.5%)便秘は0.1%~5%となっています。

メトホルミンを飲み始めてから下痢になった?原因は?

それではなぜメトホルミンで下痢がおこるのか、どのくらいで収まるのか、改善方法はあるのかなど詳しく見ていきましょう!

メトホルミンが下痢を起こすメカニズムとは

メトホルミンによる下痢のメカニズムはまだまだ不明な点も多いですが、現在考えられているのは、小腸からの糖吸収抑制による腸内フローラの変化や小腸ブドウ糖代謝の影響す。

開始時やメトホルミンの増量時に出やすいので注意が必要です。

メトホルミンの下痢は治らない?整腸剤で防げる?

ビオフェルミン製薬がマウスを使用しておこなった研究によると、メトホルミン投与でおきる軟便は腸内フローラの変化が関係している可能性があり、ビフィズス菌の投与によりこの変化を抑制し、軟便を改善したと報告しています。

人での実験はこれからですが、もし効果があれば、下痢の副作用でメトホルミンを中断する人が減ってくるのではないかと期待されています。

メトホルミンの消化器症状の多くは次第に慣れてくる

メーカーの報告によると、1~2週間で慣れる人がほとんどです。

実際に私が投薬した人も、徐々に改善した人が多いように感じました。

どんな時に主治医に相談したほうがいい?

もともと胃腸の弱い人だと、水便のような下痢が続き、つらいと感じる場合もあるようです。

主治医に用量の相談や、中止の相談をしてみてもよいと思います。

かばこ

同じグループではないですが、ツイミーグメトホルミンと類似の作用をもっています。
メトホルミンからそちらに変更になる場合もあります。
もしくはメトホルミン少量にツイミーグをかぶせる場合もあります。

まとめ

メトホルミンは糖尿病のみならず、さまざまな分野で注目されている薬です。

安全性も高いのですが、想像以上に下痢の副作用が多く、体質によっては中断する場合もあります。

今回は下痢のメカニズムやメトホルミンの多面的な作用に関して調べてみました。参考になれば幸いです。

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