保険薬局に勤めていたころから、ややこしい薬だと思っていたのですが、病院に転職後は更にややこしくなってしまいました。
かばこややこしすぎて、何回もメーカーに確認をとりました。



ややこしすぎて、専門医ですら混乱しているようです。
エンレスト錠の基本情報などは他の記事にまとめているため、この記事では割愛しています。
- エンレスト錠の監査時のチェック項目
- エンレスト錠でコメントが必要になるケース
- エンレスト錠で心不全病名登録が必須になるケース
エンレスト錠に関する記事は他のこちら




エンレスト錠の2種類の用法の使い分けとは?


エンレスト錠には、 分1と分2の2種類の用法があります。
適応症には慢性心不全と高血圧があります。



因みにどちらの用法で処方する場合も、エンレスト錠初回時は必ずレセプトコメントが必要です。



「高血圧治療強化のため」や、「心不全治療強化のため」等ですかね。
分1での処方は基本的には高血圧という扱い
慢性心不全をお持ちの患者さんは、大体高血圧も併発しています。
ではどちらの病名を登録して処方を出せばよいでしょうか?
結論としては、なるべく高用量を初回から処方したい場合は、高血圧の病名、分1で処方する必要があります。
どうしても分2で処方したい場合は、慢性心不全の病名で、50mg 2T分2で初回は処方する必要があります。



後述しますが、分2での処方は、初回投与時の縛りがかなりキツイです。



分2処方の場合は、かなり注意してルールを守らないと、保険請求が通らない可能性があります。
エンレスト錠の高血圧での処方は、条件によっては第一選択も可能
エンレスト錠は基本的には第二選択薬という位置づけです。
ただし、条件によっては第一選択で使用してもよいことになっています。
具体的には以下のような状況、状態の時です。
エンレスト錠が第一選択として処方できる具体例
- 24時間にわたる降圧が求められるnon-dipper型の高血圧症患者
- 利尿作用を有する薬剤の投与が適切と考えられる減塩困難な高血圧症患者
- 心疾患を有する高血圧症患者
エンレスト錠を適正にご使用いただくために|ノバルティスより抜粋
高血圧での使用の場合は、カルシウム拮抗薬からの切り替えも可能
エンレスト錠は発売当初は必ずARBやACE阻害剤からの切り替えが必須と言っていましたが、現在では何らかの降圧薬からの切り替えであれば、処方可能とされています。
つまり、ARBやACE阻害剤だけでなく、Ca拮抗薬、β遮断薬、α遮断薬からの切り替えも可能となりました。
エンレスト錠を分2で用いる場合の注意点とは?


循環器の専門医の先生も間違えるし、医事課もわかっておらず、何度となくメーカーに確認しました。
分2での処方は自動的に慢性心不全とみなされる
高血圧でも分2で処方したい医師もいるでしょう。
そのため、まず分2にする場合は、分1からの変更であろうが、初回であろうが、いかなる場合であろうと慢性心不全の病名登録は必須になります。
分2での初回投与時は50mgから
高血圧は200mg分1から処方できるし、100㎎ 2T分2からでもいいじゃない?なんて声が聞こえてきそう、いや今まで何回か実際に医師から言われたことなのですが、初回は必ず50mg 2T分2での処方と決められています。
※ただし例外があります。
エンレスト錠200mg1T分1からエンレスト錠100mg 2T分2に変更は可能です。



ただし、切り替え時に慢性心不全の病名登録と、「慢性心不全治療開始のため」などのレセプトコメントは忘れないようにしましょう!
分2で初回投与時は必ずARBやACE阻害薬から切り替える
あれ?さっきはCa拮抗薬からの切り替えでもいいって言っていたような…と思われますよね?
ここがややこしいところなのですが、慢性心不全で分2処方初回時は必ずARBやACE阻害剤から切り替えなければなりません。



高血圧の場合と異なるため、非常に混乱します。
心不全と高血圧の両方の病名がある場合、分2にしたほうが安全(2026.5追記)
MRさんから聞いた情報ですが、心不全と高血圧の両方の病名がついている場合、分1で処方をしたものが返戻がきたケースがあるようです。



返戻されても降圧剤として使用などのコメントを追加すれば、受理されるようですが…
50mg分1はグレーゾーン
基本情報として、50mgは慢性心不全の適応のみです。そして慢性心不全で処方を出す場合は分2です。そう考えると、慢性心不全にも、高血圧の適応にも入らない、微妙な処方だということです。



メーカーさんによると、処方を切られる可能性は否定できないそうです。
たまに100mgだと効き過ぎちゃうから、半分に減らしたいんだよねってという患者さんもいるのかもしれませんが、その場合は潔く、ARBに戻す、もしくはエンレストの処方自体を中止するなど、本当にエンレスト錠が必要な病態なのかどうかを再考してもらうように医師に促していいと思います。
エンレスト錠と検査値の注意点


これに関しては以前の記事でも記載したため、簡単にまとめます。
検査値のチェックポイント
- 慢性心不全で使用の場合、血圧が110mmHg 以下でないかどうかの確認が必要です。これ以下の場合は血圧が下がりすぎる為注意が必要です(添付文書上は95㎜Hg ですが、メーカー側は110㎜Hg以上を推奨しています)。
- K値が5.4mEq/L以上である場合は注意が必要です。成分であるバルサルタンによるK値上昇の恐れがあります。
- eGFR 30mL/min/1.73m2 未満の場合は試験を行っていないため安全性が保障されていません。



ACE阻害薬からの切り替えの時は36時間あけること、増量に2~4週間あけるなども忘れずに確認しましょう!
以前の記事はこちら


エンレスト錠処方時にコメントが必要になるケース


少し煩雑なため、ここでまとめます。
エンレスト錠の初回投与時は必ず必要
高血圧、慢性心不全処方時のどちらであっても、初回投与時はレセプトコメントが必要です。
具体例としては、「高血圧治療強化のため」「慢性心不全治療強化のため」などです。
エンレスト錠を高血圧で第一選択薬として使用するとき
前述したように、特別な場合のみエンレスト錠を高血圧治療薬として第一選択で使用することが可能です。
しかし、この場合は必ずレセプトコメントを入れてください。
具体例としては、「non-dipper型の高血圧症患者のため」「利尿作用を有する薬剤の投与が適切と考えられる減塩困難な高血圧症患者のため」「心疾患を有する高血圧症患者のため」などです。
他院からの依頼など、使用実績がある場合
他院で処方実績がある場合であっても、その施設での処方が初回の場合はレセプトコメントが必要です。
具体例としては「他院でエンレスト使用実績あり」などです。
エンレスト錠分1から分2に切り替えの時
前述したように、エンレスト錠分1から分2に切り替えは可能です。
しかし、この際もレセプトコメントが必要です。
具体例としては「慢性心不全治療開始のため」などです。



くどいですが、病名登録を忘れないようにしましょう!
まとめ(2026.5追記)


いかがだったでしょうか?
エンレスト錠はとてもよい薬である一方、処方する条件がややこしい薬のうちのひとつです。
ややこしい理由としては、臨床試験実施状況の問題や、エンレスト錠の歴史が浅いこと、降圧作用が強いため適応条件が厳しいこと、エンレスト錠に含まれるザクビトリルを慢性心不全の人には特によく効かせるため分2処方指示になっていること、などが考えられています。
そのため、今後はこれらの状況は改善していく可能性があります。
ただ、現時点では以下のことに気をつけたほうがよいでしょう。
- エンレスト錠の病名登録は必須
- エンレスト錠は分1の場合は高血圧、分2の場合は慢性心不全
- エンレスト錠の初回投与時は必ずレセプトコメントが必要
- エンレスト錠の分1から分2変更時や第一選択投与時にはレセプトコメントが必要
- エンレスト錠分2処方時は特にさまざまなルールが多い
- エンレスト錠の処方時、増量時は検査値や前薬投与状況の確認が必要



表でまとめました⇂
| 用法 | 分1 | 分2 |
| 開始用量 | 200mg 1T分1(少ない分には可) | 50mg 2T分2(これ以上の用量での開始は不可) |
| 適応量 | 100mg、200mg | 50mg、100mg、200mg |
| 病名登録(必須) | 高血圧 | 慢性心不全 |
| 第一選択の可否 | 条件によって可 | 不可 |
| 第一選択の条件(コメント要) | non-dipper型高血圧患者、利尿作用を要する薬剤の投与が適切な減塩困難な患者、心疾患を有する高血圧の患者等 | 不可 |
| ARB(ACE阻害薬からの切り替え) | 他の降圧薬からでも可 | 必要 |
| コメントが必要な要件 | ・開始時 ・第一選択として使用時 ・他院からの引継ぎ | ・開始時 ・分1からの用法切り替え時 ・他院からの引継ぎ |
| 注意点 | 50mg 1T分1は基本不可 | ・慢性心不全の病名がついている場合、分1だと返戻される可能性あり ・50mg 1T分1は基本不可 |
| 特例 | 既に分1で処方歴アリの場合は、分2に変更可能。但し必ず慢性心不全の病名登録とコメント必要 ※用量を増やすのは不可 例)200mg1T分1⇒100mg 2T分2 「慢性心不全治療の開始のため」 | |
| その他 | 標準治療(ARBやACE阻害薬以外のβ遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬のどれか)の併用の有無は問わない |
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