GLP-1受容体作動薬であるウゴービ皮下注がノボ ノルディスク ファーマから、2024年2月22日に発売されました。
ウゴービ皮下注は、「肥満症」の効能または効果を有する医療用医薬品として発売される、約30年ぶりの新薬で、空腹感を軽減し、満腹感を高めることにより、食事の量を減らしてカロリー摂取量を抑え、体重減少を促す作用があります。
2023年3月に日本で承認を取得し、同年11月に薬価収載されました。
先日メーカー主催の勉強会に参加しました
この記事では、ウゴービ皮下注の保険適応条件や効果効能、副作用に関して解説します!
- ウゴービ皮下注の保険適応条件
- ウゴービ皮下注の効果効能
- ウゴービ皮下注の副作用
- ウゴービ皮下注のオゼンピック皮下注やリベルサスとの違い
- ウゴービ皮下注はメディカルダイエットに使用できるか
- ウゴービ皮下注は個人輸入代行で手に入るか
ウゴービ皮下注とはどのような薬?肥満症治療薬って?
ウゴービ皮下注は注目されている肥満症治療薬です。
2型糖尿病治療薬であるオゼンピック皮下注やリベルサス錠と同じ成分の注射薬です。
同じ成分を肥満治療薬として新規に開発、申請した注射薬と考えるとわかりやすいでしょうか?
ウゴービ皮下注の適応症とは?
適応症は肥満症です。
ただし、条件があります。
- 第1の条件
-
『高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。』
- 第2の条件
-
- BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
- BMIが35kg/m2以上
この「食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず」という条件が予想以上に難しいです。
詳しくは後述します!
ウゴービ皮下注の主成分はセマグルチド!オゼンピック皮下注やリベルサス錠などと同じ成分!
前述したように、ウゴービ皮下注の主成分はセマグルチドで、オゼンピック皮下注やリベルサス錠とまったく同じ成分です。
ただ、世界的に美容などの自由診療で需要が増加しています。
ダイエット目的での使用が拡大し、国内でも出荷調整がかかり、本当に必要な人に届かない状況が続き、厚労省や医師会からも注意喚起がでています。
メディカルダイエットに関する記事はこちら↓
ウゴービ皮下注は初めてGLP-1作動薬で肥満症に適応が通った薬
オゼンピック皮下注やリベルサス錠は糖尿病の患者さんを対象に開発された薬であるため、糖尿病でない肥満症の人に対するデータが不十分でした。
ウゴービ皮下注の効果・効能とは?
ウゴービ皮下注は肥満症の適応で承認された日本で初めてのGLP-1受容体作動薬です。
冒頭でも説明しましたが、空腹感を軽減し、満腹感を高めることにより、食事の量を減らしてカロリー摂取量を抑え、体重減少を促す作用があります。
1.7mg以上のデータであることに注意が必要ですが、10%以上の体重減少効果が50%近くあることがわかっています。
100㎏あったら、15ヶ月くらいで10㎏くらいは減らせるということですね。
GLP-1とは?どのような物質?
- GLP-1は、食事をとって血糖値が上がると、小腸にあるL細胞から分泌されます。
- すい臓のβ細胞表面にあるGLP-1の鍵穴 (受容体) にくっつき、β細胞内からインスリンを分泌させます。
- GLP-1は、血糖値が高い場合にのみインスリンを分泌させる特徴があります。
- この血糖値を下げる効果に加え、食欲抑制作用や摂取した食物の胃からの排出させる効果があります。
ウゴービ皮下注の副作用や注意点とは?
副作用として代表的なものは、消化器症状です。
食欲減退、悪心、下痢、嘔吐、消化不良、便秘、腹痛などが5%以上の頻度で報告されています。
ほかにも頭痛などが5%以上の頻度で報告されています。
消化器症状は、効果が強くですぎることでおきる副作用です。
ウゴービ皮下注の使用方法の注意点は?
週に1回使用する薬です。
用量は0.25㎎、0.5mg、1.0㎎、1.7mg、2.4mgの5段階があり、0.25mgからスタートし4週毎に増量していきます。
ウゴービ皮下注とオゼンピック皮下注やリベルサス錠との違いとは?
デバイス、適応症、最高用量、投与日数制限(ウゴービ皮下注は68週まで)がある点が異なります。
より詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください↓
ウゴービ皮下注の保険適応の条件が厳しい!限られた病院でしか処方できない!
先日ウゴービ皮下注の勉強会があったのですが、想像以上に保険適応条件がきびしく、限られた医療機関でしか処方できないな…と感じました。
以下に情報をまとめましたので参考にしてください。
ウゴービ皮下注は「最適使用推進ガイドライン(医薬品)」に指定されている
「最適使用推進ガイドライン」ってそもそも何なのかよくわからなかったので調べてみたのですが、以下のような医薬品に指定されているガイドラインのようです。
新規作用機序を有する革新的な医薬品については、最新の科学的見地に基づく最適な使用を推進する観点から、承認に係る審査と並行して最適使用推進ガイドラインを作成し、当該医薬品の使用に係る患者及び医療機関等の要件、考え方及び留意事項を示すこととしています。
最適使用推進ガイドライン(医薬品)|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
ウゴービ皮下注のほかには、抗がん剤のネモリズマブやアトピー性皮膚炎治療薬のトラロキヌマブ、片頭痛治療薬であるエレヌマブなど、遺伝子組み換え技術を用いた医薬品が該当しています。
ウゴービ皮下注のガイドラインは、医薬品医療機器総合機構、日本肥満学会、日本肥満症治療学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本内科学会の協力のもと作成されたものです。
このウゴービ皮下注がこのガイドラインの作成対象になった理由は以下のようです。
- 日本では約1,600万人が肥満症を抱えている一方で、医師により肥満症と診断されている人はわずか2.1%(33万人)である
- GLP-1製剤が不適正使用をふせぐため
- 『適正使用をより確実に推進すること』『新たな肥満症治療のモデルケース事例を積み上げていくため
適応症にかなり縛りがある
適応症のところでも簡易的に説明しましたが、詳しく説明するため、適応症の条件を以下にまとめました。
- 高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれか1つ以上の診断がなされている
- BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する、またはBMIが35kg/m2以上
- 適切な食事療法・運動療法を実施している
- 高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病に対して、適切な治療を実施している
3と4に関して今回新たに説明があったので、詳しく説明していきます!
栄養指導を定期的に受けていることが条件
どのような栄養指導をおこなうことが条件になっているかをまとめました。
- 適切な食事療法・運動療法に関わる治療計画を作成し、6カ月以上実施しても十分な効果が得られない患者であること
- 6カ月の間に2カ月に1回以上の頻度で管理栄養士による栄養指導を受けた患者であること。
管理栄養士が指導をしなければならない点と、頻回な栄養指導が条件になっています。
栄養指導を受けている記録も残す必要がある
さらに以下の記録をのこすことが求められています。
薬物療法も行われていなければならない
ガイドラインには以下のように記載されています。
本剤を投与する施設において合併している高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病に対して薬物療法を含む適切な治療がおこなわれている患者であること。
本罪で治療を始める前に高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれか1つ以上に対して適切に薬物療法が行われている患者であること。
上記の文面からわかるように、高血圧等の診断だけではだめで、薬物治療が行われていることが条件になっています。
専門医が常駐している必要がある
標榜科が内科、循環器内科、内分泌内科、代謝内科、糖尿病内科であることだけでなく、それら科目の専門医が常駐していること、教育研究施設であること、管理栄養士が常駐していることなどさまざまな施設要件があります。
詳細は以下の参考資料やメーカーに問い合わせてみてください。
ウゴービ皮下注は現時点では流通に制限がかかっている
上記のガイドラインからもわかるように、厚労省や医師会から、現段階ではきびしい制限がかかっており、適正使用の観点から、流通にも制限がかかる見通しです。
事前に申請があった病院からでしか処方できない
今後はどうなっていくかわかりませんが、現段階では、突然処方したいと思っても処方できないように制限がかかっています。
ウゴービ皮下注はメディカルダイエットに使用できる?
従来のオゼンピック皮下注などとは異なり、適応症が肥満症であるため、ダイエット目的で使用したいと思っている人もいるかもしれません。
そのような人のために解説したいと思います。
本当に必要な人に届かない!ダイエット目的での使用に厚生労働省が慎重かつ否定的な姿勢
厚生労働省、消費者庁、国民生活センター、医師会などあらゆる団体が、ウゴービ皮下注やオゼンピック皮下注、リベルサス錠などのGLP-1受容体作動薬をダイエットで適応外使用することに対して否定的な姿勢を示しています。
ウゴービ皮下注は流通の制限のため、自費処方が難しい
上記でも説明したように、ウゴービ皮下注には流通規制がかかる見込みです。
自由診療であれば、保険適応が厳しくても関係ないと思われるかもしれませんが、流通が制限されているため、手に入れることは難しいと思われます。
メディカルダイエットでのトラブルの報告が増加!国民生活センターからも注意喚起!
国民生活センターからは2017年から幾度となくメディカルダイエットに関して注意喚起が出ています。
過大広告による優良誤認、副作用、定期購入、自己注射などの手技の不十分な説明などです。
このような流れをうけてウゴービ皮下注に対して厳しい保険適応制限や流通制限がかかっていることを考えると、自由診療で手に入れるのはかなり難しいと考えられます。
メディカルダイエットに関して詳しく知りたい方はこちら↓
書籍で学びたい方はこちらの本がおすすめです。
880円(税込み)※2024.3現在
個人輸入は要注意!自己責任であることの理解を!
ウゴービ皮下注の主成分であるセマグルチドのジェネリック医薬品は個人輸入などで手に入れることは可能です。
しかし、粗悪品を購入してしまうリスク、副作用などさまざまなリスクがあります。
また個人輸入を利用し、重大な健康被害が生じた場合に、その救済を図る公的制度(医薬品副作用被害救済制度)では救済対象とならないことに注意しましょう!
まとめ
ウゴービ皮下注の保険適応条件を中心に、効果・効能、副作用、メディカルダイエットに関しての動向などをまとめました。
参考になれば幸いです。
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