【薬剤師が解説!】貧血の治療薬(鉄剤)が気持ち悪い、飲めない、困った!改善方法を教えます!

飲みにくい薬の飲み方

 

途中で気持ち悪くなり中断する人がかなり多い薬剤の一つ鉄剤。何種類かあるので、それぞれの違いと、気持ち悪さがなくなる時期、改善方法などを可能な限りお伝えします。

鉄欠乏貧血とは?

鉄欠乏性貧血は体内の鉄が不足することで赤血球の中に含まれるヘモグロビンが作れなくなることによって生じる、貧血の中で最も頻度が高い疾患です。

原因は?

原因としては、1.鉄需要増加、2.鉄供給の低下、3.鉄喪失の3つに分けられます。

  1. 鉄需要増加(思春期、妊娠女性)
  2. 鉄供給の低下(鉄の摂取不足、吸収不良)
  3. 鉄喪失(生理、消化管出血、婦人科疾患など

どんな症状がでるか。

  • 無症状(多くは健康診断や職場健診の採血結果で指摘されます)
  • 動悸(少しでも酸素を運ぼうと心拍数が増えるため)
  • 息切れ(少しでも体内に酸素を取り込もうとするため)
  • 疲労感、倦怠感(体を動かす筋肉の酸素が不足するため)
  • 顔色不良(赤みがない、黒っぽくなったと言われる)
  • 匙状爪(爪が反り返る、割れやすい、もろい)
  • 味覚障害、舌のひりひり感

どのくらい血液検査の数値が下がったら貧血?治療開始になるのか

ヘモグロビンHb(正常値)女性:12-16g/dl 男性:14-18g/dl

鉄Fe(正常値)女性:50-170μg/dl 男性60-210μg/dl

フェリチン値(正常値)女性:5-157ng/ml 男性:20-280 ng/ml

ヘモグロビン(Hb)が12以下、かつ過去歴、フェリチン値(貯蔵鉄)Fe(鉄)から貧血かどうかを判断します。フェリチン値 10以下では鉄欠乏性貧血の可能性が高くなります。

ヘモグロビン値8以下では治療薬の開始が強く推奨されます。

慢性的な貧血の場合は症状がない場合がありますが、ヘモグロビン値5以下の場合は高地にいるのと同じような低酸素状態になっているため、心肥大が見られる場合もあります。

食事を気を付ければ薬を飲まなくてもいい?

鉄は食事中の含有量の約1/10程度しか吸収されないと言われています。

そのため、軽度の貧血であれば食事からの摂取でも問題ないですが、ヘモグロビン(Hb)が9を切るような重度の貧血、医師から治療をした方がいいと言われる段階の場合は薬での治療を受ける事をお勧めします。

また、コーヒー、紅茶はヘモグロビン(Hb)を下げると言われているので、貧血になっている場合は少し量を控えた方がいいでしょう。

治療薬である鉄剤の種類とそれぞれの特徴

出典:いらすとや

飲み薬

クエン酸第一鉄(フェロミア) 重合体を作らず、安定して吸収される。顆粒もあるが、錠剤よりもかさ高くなります。食後でも、胃の切除後でも可能です。

硫酸鉄(フェロ・グラデュメット) 胃酸が少ない状態で服用すると吸収率が2/3まで低下します。 濃いお茶で大きく吸収が低下したという報告があるので、濃いお茶では飲まない方がいいでしょう

フマル酸第一徐放カプセル(フェルムカプセル) 鉄剤の中で最も単位重量当たりの鉄含量が高く、1日1カプセルの服用で治療可能です。

インクレミンシロップ 液体で粘度が高いです。一過性ですが、便、歯または舌が黒くなります。特にバナナと一緒に食べると黒くなります。元に戻るので途中でやめないことが大切です。0度以下で結晶が析出することがあります。一番胃腸症状が出にくい鉄剤と言われています。小児にも使用可能です。サクランボのような匂いと味がします。

かばこ
かばこ

インタビューフォームでは30℃以下遮光保存であれば4か月程度であれば問題なく使用できるようですが、できれば夏場などは室温が高くなるので冷所保存が安全でしょう(沢山もらって冷蔵庫に入りきらない場合は冷暗所に保存を)。光で色が変わるので必ず遮光保存してください。

新しく適応が加わった薬

クエン酸第2鉄(リオナ)慢性腎臓病の高リン酸血症改善薬として2014年より使用されてきたリオナが、鉄欠乏性貧血として2021.3から適応が追加になりました。食直後に服用する薬です。現在(2021.11)、色々な鉄剤が出荷調整がかかり手に入りにくい状況の為、今後そういったときの選択肢の一つになっていくかもしれないですね。

注射薬

どうしても鉄剤の内服が出来ない人には、これらの注射薬もあります。

フェジン静注(含糖酸化鉄注射液) 連日投与が必要です。

フェインジェクト(カルボキシマルトース第二鉄)【2020.9発売】週に1回投与で通院の負担を減らせるようになりました。

かばこ
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生理の時だけ貧血になるなどの場合であれば、フェジン静注を月に1回程度注射で治療終了している方もいました。貧血の程度によるため、迷っている方は医師に相談してみてください。

治療効果に違いはあるか

貧血の治療効果に差はないと言われています。

服用時の注意点は?お茶と一緒に飲んでもいい?

鉄剤は以前はお茶のタンニンと複合体を形成して吸収されにくくなるので禁止とされてきましたが、貧血時の鉄吸収は亢進しているので、現在ではそこまでお茶を厳しく制限する必要はないと言われています。

しかしフェロ・グラデュメットでは濃いお茶で大きく吸収が低下したという報告もあるので注意が必要です。

因みに牛乳とは相性が悪い為、2時間空けるようにしてください。

牛乳のpHは5~7のため、腸で溶けるためのコーティングが胃の中で溶けてしまい、効果が減弱されたり、無くなったりしてしまうためです。

併用注意な薬は?

抗生剤(ニューキノロン系、テトラサイクリン系、セフゾン)、チラージンは鉄吸収を抑制するのでなるべく避けるようにしてください(2~3時間あけて)

胃薬と一緒に飲んでもいい?

以前は胃薬との併用は吸収が落ちるので控えた方がいいと言われていましたが、現在ではそれほど影響がないと言われているため、胃薬を一緒に飲んでも問題ありません(メーカー確認済)

ビタミンCは一緒にとった方がいい?

ビタミンCは鉄吸収を促進する効果がありますが、貧血時は鉄吸収が亢進している状態なので無理に一緒に飲む必要はありません。

どのくらい継続しないといけないか

鉄剤は安定するまで3~6か月程度継続することが一般的です。ヘモグロビンは6週から8週で数値が回復してきますが、フェリチン値(貯蔵鉄)の回復に時間がかかります。フェリチン値(貯蔵鉄)の数値が改善してくるまで薬を続けないとすぐに再度貧血になってしまう恐れがあります。

代表的な副作用は?

  • 悪心、嘔吐、腹痛、腹部不快感、下痢、便秘などの胃腸症状が主なものになります。鉄剤を服用した人の約10%~20%程度が胃腸症状を感じると言われています。
  • 便が黒くなります(色がついているだけで、特に問題はありません)

副作用で一番訴えが多い「気持ち悪さ」の原因と改善方法

出典:いらすとや

なぜ鉄剤で気持ち悪くなるのか

薬の中の鉄が胃や十二指腸で放出されるため刺激が強く、悪心(むかつき・吐き気)、嘔吐、便秘、下痢などの消化器症状が出ると言われています。

飲み続けていれば気持ち悪さはなくなる?

1~2週間程度で気にならなくなる場合もありますが、個人差があるように感じます。患者さんの中では「1ヶ月以上我慢したが、耐えられなくて中止した」という方もいました。

「気持ち悪さ」が続く場合の改善方法

  1. 食直後にのむ(胃への刺激を緩和する)
  2. 少し多めの水と寝る前に飲む(そのまま寝てしまうので不快感が気にならなくなる)
  3. 胃薬を併用する(以前は鉄の吸収を下げる為併用できないと言われていましたが、現在は問題ないことがわかっています)
  4. 他の種類の鉄剤に変更する(どの薬でも駄目な場合もありますが、変更すると飲めるようになるパターンもあります。)
かばこ
かばこ

特にインクレミンシロップがお勧めです。これに変更後、吐き気が収まった方がかなりいます。下記にも詳しく記載しましたので、参考にしてください。

 5.クエン酸第一鉄(フェロミア)の場合は50㎎でも効果があると言われているので、100㎎を飲んでいた場合は量を50㎎に減らしてもらう。

 6.注射薬もあるので、通院が面倒でなければこちらに変更する(胃腸を通らずに直接血中のはいるため、気持ち悪さを感じなくなります)

かばこ
かばこ

実際の投薬時にもこれらの方法で解消した話を聞いたことがあります。注射薬は通院が面倒なので最終手段と考え、上記の方法を一度試してみてください。

薬剤により「気持ち悪さ」の頻度の違いはあるか

添付文書を拝見したところ、悪心嘔吐に関して

クエン酸第一鉄(フェロミア): 5%以上

フェログラデュメット、フェルムカプセル:0.1〜5%未満

インクレミンシロップ:頻度不明

という結果が出ました。

若干クエン酸第一鉄(フェロミア)が不快感を感じやすいかもしれません。インクレミンシロップは吐き気が出にくいイメージがあります。

この薬で不快感を感じる場合は他剤に変更することを考えてもいいかもしれません。(実際にインクレミンシロップに変更例が多数あります)

かばこ
かばこ

因みに、インクレミンシロップは小児以外は適応外の為、保険者によっては保険が降りない可能性があります。(ただ、ほとんどの保険者では通ると思われますが…。)

鉄剤は出荷調整が続いているため、思った薬が手に入らない可能性があります。(2021.11.12現在)

現在ジェネリック医薬品の供給不安定の影響でクエン酸第一鉄(フェロミア)、フェルムカプセル、フェログラデュメットは出荷調整が続いており、手に入りにくい状況です。医療機関、薬局によっては望んだ薬剤が手に入らない可能性があるのでご了承ください。

ジェネリック医薬品の出荷調整に関するニュースに関してはこちら↓

 

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