患者さんからみれば、「処方箋をじっとみて何をしているのだろう…」
薬学生からみれば、「薬剤師にとって一番重要な仕事だけど、何を具体的にチェックしているのか、何のチェックが漏れたら大変なんだろうか…」と始めはとても不安になる仕事の部分だと思います。
その都度変わる部分もあるので、全てではないですが、大体ここは確認しているよ!というところを説明したいと思います。

薬剤師の監査業務の確認事項
処方箋の形式にそっているか確認
- 処方箋の期限が切れていないか
- 処方薬が日数制限にはかかっていないか(眠剤や麻薬など)
- 麻薬処方箋の場合には、麻薬施用者の免許番号など必要な情報が記載されているかどうか
- 覚せい剤原料の含まれる処方の場合は患者、医師ともに登録された者であることの確認
- 医師から必要なコメントの記載はあるか。コメントの内容は適正かどうか。
処方量、用法など処方内容に関して
- 調剤された薬の量は間違っていないかどうか。正しい薬剤が調剤されているかどうか。
- 処方量は添付文書記載情報をオーバーしていないか
- 処方量は添付文書記載情報より少なすぎないか
- 体重に対しての量、腎機能に対しての処方量は適正であるか。
- 用法の回数は添付文書の範囲内に収まっているか。週に1回などの特殊な飲み方をする薬ではないか。
- 用法は正しいか。(食前、食直前、空腹時でないと効果の出ない薬もあります)
- 初回であれば、徐々に増やす、徐々に減らすなどの制限のかかってる薬かどうか。該当している場合はその量に沿った処方が行われているか
- 同種、同効薬の薬が重複して出ていないか。(特に最近は合剤に注意が必要だと感じています。合剤だと何が含まれているのかわかりにくくなるため、医師も誤って重複して出してくるケースがあります)
- 減量の仕方、増量の仕方は問題ない薬かどうか(ステロイドや向精神薬など急激に減らすと危険な薬などがあります)
- 副作用歴に該当の薬が出ていないか
- 一包化、分割指示が出ているが、そのような調剤が出来る薬かどうか(湿度などに弱かったり、特殊なコーティングを施している薬剤の為、一部そのような調剤は出来ない薬があります)
検査値との照らし合わせ

私たちはCTやレントゲンは全く分からないため、主に血液検査、尿検査の結果を確認して問題ないか推測しています。
- 薬を開始する前に検査が必要な薬ではないかどうか。必要な場合はきちんと検査が行われているかどうか。
- 薬を服用している際中も適切な血液検査が行われているか
- 薬を開始、継続するにあたり、問題ない血液検査数値であるかどうか(副作用が疑われるような検査結果が出ていないか。処方量は減量の必要がないかどうか)
お薬手帳情報との照らし合わせ

お薬手帳は重要な情報源です。患者さんが想像する以上に私たち薬局と病院とはデータ共有が進んでおらず、カルテなどは閲覧することが出来ません。その中での可能な限りの医療安全を確保するために提出をお願いします。
- 重複薬はないかどうか。(合剤もそうですが、ジェネリック医薬品の普及により、他院で同効薬が出ていることに気が付かず処方が出ているケースがあります)
- 既往歴に禁忌の薬が出ていないかどうか(他院の処方内容、アンケートから病名を推測して、問題がないかどうか確認します)
- 処方薬同士に禁忌の薬が出ていないか(飲み合わせの確認)
- 副作用歴に該当の薬が出ていないか
その他
- 入院して開始する必要のある薬であるかどうか。必要な場合は入院後に院外に処方が出ているか。
- 予約制の病院の場合は、次回まで処方日数が足りているかどうか。
- 薬の日数が全てそろっているか(先生が日数変更し忘れて一部の薬だけ処方日数が足りないことがあります)
毎回これだけの確認を行っているのか?
思い出しただけでも上記のような沢山の確認を行っているのだな…と自分の仕事のことながらよくやれているなと思いました。
毎日同じことをやっているので、自然に危険な事を察知できるようになっているのでこなせているのだともいます。(大体人間の間違えるポイントは似た傾向があるため)
そのように考えると、監査業務が一番その薬剤師の勉強量や経験に比例して精度が上がってくる部分だと思います。

特に最近は検査値の記載など、病院からの情報開示が増えて色々な事に気が付けるようになってしまい、より一層難易度を増してきたように思います。(いいことなんですが、明らかに仕事量は増えています)
初回はとても確認に時間がかかる
初回に行った薬局でやたら待たされることがあると思います。歯科で1剤の確認、既往歴がほとんどない、併用薬はほとんどない、などの場合はさほど時間がかからないとは思いますが、処方薬が多い場合には上記の確認事項をすべて行っているのでとても時間がかかります。
初回は医師のミスが最も多い
医師も同じように確認事項が多すぎるせいかミスが多い傾向があります。特に処方薬剤が多く、タイプを沢山しないといけない場合、タイプミスやコメントミスが散見されます。
私たちもそのことをよくわかっているので、より一層注意して確認しているため余計に時間がかかるのです。
私たちはカルテや紹介状を見ることが出来ないので、お薬手帳を確認しながら、前医の処方と見比べて相違ないか確認しているのですが、特に説明もなく違う薬が出ていることがあります(タイプミスであることが多い)
このようなミスはお薬手帳がないと気が付くことが出来ないため、初回受診の方は必ずお薬手帳の携帯をお願いします!
継続処方の場合は確認は一部だけで済む
2回目以降の場合は確認したことを薬歴に記載してある為、必要最低限の確認だけを行うようにしています。
処方変更のあった薬、新規薬の確認
これは必ず継続処方の場合は重点的に行っています。処方変更の際も医師のミスが起きやすいポイントの為、かなり詳しく添付文書を確認しています。
他の薬も見ているが、基本的には仲間の薬剤師を信頼しているので、さらっと見ている
もちろん今まで継続中の薬も確認しているが、全てをみていると時間がかかりすぎてしまうため、さらっと見て異常がないか確認しています。
どちらかというと継続中の薬に関しては、長期服用の影響で副作用が出ていないかどうか、本当に継続の必要な薬なのかどうか、必要がないようであれば医師に報告する必要性があるかどうかなどの観点から見ています。
また、定期的に検査する必要のある薬もある為、必要な検査が行われているかどうかなども見ています。
監査業務は薬剤師の仕事の中で、とてもやりがいがあって楽しい部分

やっている仕事内容だけ見ると、”うえっ”となってしまいそうになるかもしれません。
監査業務は上記にも書いた通り、薬剤師の経験と勉強量に精度が左右される部分であるため、自分が成長した分だけ患者さんに最も還元されていく部分でもあります。
1年前の自分では気が付けなかったことに気づき、より適正な医療を提供できたときに喜びとやりがいを感じる
添付文書には書かれていないことでもアレ?と今までの経験と薬学的知識を合わせて疑問に思いメーカーに確認して気が付くこともあります。
監査によって、適正な医療を届けることが出来たと感じた時、とても喜びを感じます。
薬剤師の勉強に終わりはない
仕事を始めたころは、何年か勉強したらわからないことがなくなってルーチンワークになっていくのかなと思っていました。
新薬が次々に出てくる
素晴らしい事なんですが、毎年次々に新しい効能の薬が発売されており、つい数年前までは治らずに苦しんでいた病気が普通の人と同じくらい生活できるレベルまでコントロールできるものになってきています。
ただそれと同時に私たちは次々と勉強する必要性に迫られています。
知っていると思っていた薬でもわからないことが出てくる
患者さんの視点に立って勉強していたつもりでも、患者さんの質問でハッとさせられることがあります。まだまだ知らなかったことが沢山あり、日々勉強の毎日です。
私自身もまだまだ成長中
偉そうに色々書きましたが、監査業務もこれしかしなくていいというものではなく、基本的に医療の変化、自分自身の勉強量、経験によって変化していくものだと思います。よりよい医療を提供するためにより一層頑張りたいと思います。
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