整腸剤ってどれも同じだと思っていませんか?
この記事では、医療用整腸剤に関して、本当にどれも同じなのか、それとも違うのかについて、徹底的に深堀してみました。
- 整腸剤の基本情報
- 販売されている整腸剤一覧とその違い
- 成分の違いと役割
医療用整腸剤の基本情報

そもそも整腸剤の役割って何なのでしょうか?
下痢の時にしか役に立たないのでしょうか?
しっかりと見ていきましょう!
整腸剤の役割と特徴
腸内には、善玉菌・悪玉菌・日和見菌がバランス良く存在していますが、このバランスが崩れると、下痢や便秘、腹部の不快感など、さまざまな症状が現れることがあります。
整腸剤は、これらの腸内細菌叢を整え、消化器症状を軽減させる働きを持っています。
主に乳酸菌やビフィズス菌、酪酸菌といった有用な細菌を含むものが多く、腸への直接的な補充を通じて、腸内環境を健康的な状態へと導く役割があります。
かばこここまでは知ってる人が多い情報ですね!
腸内環境を整えるメカニズム
整腸剤の効果の多くは、腸内の悪玉菌を減らし、善玉菌を増やすことに基づいています。
例えば、乳酸菌やビフィズス菌は腸内で乳酸を生成し、これが腸内を酸性環境に保つことで、悪玉菌の増殖を抑制します。
また、酪酸菌は腸粘膜のエネルギー源となる酪酸を生成し、腸のバリア機能をサポートします。
さらに一部の整腸剤は、腸内で抗菌薬の影響を受けない特性を持つことから、抗生物質服用後の腸内菌叢の回復にも役立ちます。



整腸剤に含まれる菌によって、微妙に持っている作用が違うことが伺えます。
整腸剤と他の消化器薬との違い
そのため、胃酸を抑える胃薬や腸の動きを促進する下剤ほどの即効性はありません。
腸内細菌が健康を支える重要な要因であり、そのバランスを保つことが、消化器全体の正常な機能維持につながるため、長期的な健康管理や予防の観点から処方されることが多く見られます。



即効性がないから、効果がないと感じる人がいるのかもしれないですね。
医療用整腸剤の種類と主な成分


ここでは、腸内細菌の種類と、含まれる整腸剤一覧(一部割愛)と、ジェネリック医薬品に関して紹介していきます!
乳酸菌系整腸剤の特徴と効果
乳酸菌系整腸剤は、腸内の善玉菌を補い腸内環境を整える効果があります。
糖化菌はどんな作用があるの?
糖化菌は乳酸菌(ラクトミン)と一緒に配合されていることが多い菌です。
酪酸菌・ビフィズス菌を含む製品
酪酸菌やビフィズス菌を含む医療用整腸剤は、特に腸内の善玉菌を増やすことに優れています。
ビフィズス菌は小腸や大腸における善玉菌の一種であり、乳酸菌(ラクトミン)と同様に腸内環境を整える働きがあります。
一方で、酪酸菌は芽胞(耐久性が高い細胞構造)を形成し、腸へ生きたまま到達しやすいとされています。抗菌薬投与後に増加する悪玉菌に対してその増殖を抑える作用をもつとされています。腸内で短鎖脂肪酸を生成し、腸の粘膜を保護する作用があります。
ビオフェルミンと乳酸菌(ラクトミン)は何が違うの?
ビフィズス菌と乳酸菌(ラクトミン)は似た作用をもつ菌です。何が違うのか、以下の表にまとめてみました。
| ビフィズス菌 | 乳酸菌(ラクトミン) | |
| 生育場所 | 主に大腸 | 主に小腸、自然界・発酵食品 |
| 酸素のある場所での生育 | できない | できる |
| 主な代謝物 | 乳酸+酢酸 | 乳酸 |
乳酸は腸内環境を弱酸性にします。悪玉菌はアルカリ性の環境を好むため、乳酸菌が優勢な酸性の環境下では増殖できません。
酪酸菌はスーパー善玉菌!?メリットとデメリットとは?
酪酸菌は現在非常に注目されている善玉菌です。
注目されている理由としては、以下のメリットがあります。
- 短鎖脂肪酸の1つである「酪酸」を産生する:酪酸菌は、自らこの「酪酸」を産生するだけでなく、乳酸菌が作った「乳酸」を使って「酪酸」を産生することもできる。
- 腸のエネルギー源:大腸の細胞の主要なエネルギー源となり、腸の健康を維持する。
- 腸内環境の改善:腸内を酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑えることで、腸内環境を良好に保つ。
- 腸のバリア機能強化:大腸の粘膜を修復し、バリア機能を高めることで、病原菌の侵入を防ぐ。
- 免疫機能の調整:免疫システムを調整し、炎症やアレルギーを抑える働きがある。
- 全身への影響:腸から吸収された酪酸が、血液を介して脳など全身の臓器に影響を与える可能性も示唆されている。



乳酸菌やビフィズス菌は、「乳酸」を産生しますが、人間はこの「乳酸」を吸収するのが苦手です。ところが酪酸菌により、「乳酸」を「酪酸」に変えることにより、効率的に吸収することができます!
しかし、酪酸菌も万能ではありません。以下のようなデメリットも指摘されています。
- 酸素が苦手:酪酸菌は小腸での働きはないと言われています。つまり、小腸にある免疫スイッチを押す機能はないことになります。酪酸菌は、大腸でしか活動できません。
- 食べ物の中で生息が難しい:酪酸菌は酸素が苦手であることや酪酸臭という独特の臭いなどにより、酪酸菌がぬか漬け以外の食べ物に含まれることはほとんどありません。
- 摂りすぎると大腸がんや腸の粘膜免疫の低下を招くことがある:最近の論文で、取りすぎにより、逆効果を招くことが報告されています。適度な摂取を心掛けるようにしましょう。
生菌製剤と非生菌製剤の違い
整腸剤には、生菌製剤と非生菌製剤の2つのタイプがあります。生菌製剤は、生きた乳酸菌やビフィズス菌を直接腸内に届けることで、腸内での活発な作用を見込むものです。
これに対し、非生菌製剤は、死菌あるいはその代謝産物を配合しており、生菌のように腸内で増殖はしないものの、腸内菌叢に良い影響を与えるという特徴があります。
整腸剤としては、ラックビーR散やビオフェルミンR散が該当します。
代表的な医療用整腸剤の比較一覧表
整腸剤の比較一覧表を作成しました(あまりにも品目が多すぎたため、類似薬以下に関しては、散剤と錠剤があるものは、一部割愛させていただいております。)
| 分類 | ビフィズス菌製剤 | 酪酸菌剤 | ラクトミン(乳酸菌) | ビフィズス菌配合散 | 酪酸菌配合散 | 耐性ビフィズス菌製剤 |
| 代表的な商品名 | ビオフェルミン錠 | ミヤBM細粒・錠 | ビオフェルミン配合散 | ビオスミン配合散 | ビオスリー配合散 | ビオフェルミンR散 |
| その他の類似薬 | ビフィスゲン散、ビオスミン配合散、ラックビー微粒N | アタバニン散、ビオラクト原末、ラクトミン原末 | ラックビーR散 | |||
| 後発品 | レベニンS散、ビオヂアスミンF−2散、 | |||||
| 成分 | ビフィズス菌 | 酪酸菌(宮入菌) | ラクトミン(乳酸菌)・糖化菌 | ラクトミン(乳酸菌)・ビフィズス菌 | ラクトミン(乳酸菌)・酪酸菌・糖化菌 | 耐性乳酸菌 |
| 薬効 | 腸内菌叢の異常による諸症状の改善 | 腸内菌叢の異常による諸症状の改善 | 腸内菌叢の異常による諸症状の改善 | 腸内菌叢の異常による諸症状の改善 | 腸内菌叢の異常による諸症状の改善 | 抗生物質、化学療法剤投与時の腸内菌叢の異常による諸症状の改善 |



薬価に関しても調べようと思ったのですが、先発も後発も価格が同程度なので、記載しませんでした。



大体6円~6.5円/錠もしくはgに収まっていました。
牛乳アレルギー禁忌の整腸剤はなくなった?
以前はラックビーR散に「牛乳アレルギー禁忌」が記載されていましたが、2022年の添付文書改訂で牛乳アレルギーに対する禁忌が外れました。
耐性乳酸菌10%「トーワ」とエンテロノンR散にも「牛乳アレルギー禁忌」の記載がありましたが、どちらの薬剤も現在販売が中止されています。
そのため、「牛乳アレルギー禁忌」の整腸薬はなくなったと考えてよさそうです。
症状別に見る整腸剤の効果的な使い分け


整腸剤はビオフェルミンR酸などを除いて、ほとんどの商品が同一の適応症を有しています。
製剤間における大規模臨床比較試験は行われていないため、使い分けのエビデンスは確立していませんが、菌種により消化管部位に対する親和性の違い等があります。
下痢症状に適した整腸剤
下痢症状が発生する要因の一つは、腸内菌叢のバランスが乱れることです。
この場合、乳酸菌やビフィズス菌を主成分とした生菌製剤が選ばれることが一般的です。
例えば、ビオフェルミンRやラックビーRなどの製品は、悪玉菌を抑えながら善玉菌を増やす働きがあり、下痢を改善する効果が期待できます。さらに、これらの製剤は抗生物質の影響を受けないため、抗生物質治療中にも併用できる点が特徴です。
便秘改善に効果的な製剤
便秘症状には、腸の蠕動運動を促進し、便を柔らかくする整腸剤が効果的です。
短鎖脂肪酸には大腸の蠕動運動を活発化して便秘を予防したりする効果が報告されています。
短鎖脂肪酸である酪酸や酢酸を生成する酪酸菌やビフィズス菌を含むミヤBM散やビオスミン配合散、ビオスリー配合散のような整腸剤には、便秘を改善する効果が期待できます。
抗生物質服用後の腸内環境回復に役立つ整腸剤
抗生物質の服用は腸内細菌に影響を及ぼし、腸内菌叢のバランスを乱すことがあります。このような場合、抗生物質の影響を受けにくい整腸剤を選択することが大切です。
ビオフェルミンRやラックビーRに代表される製品は、腸内に善玉菌を補充しながら菌叢バランスを整えるのに役立ちます。また、これらの製剤は腸内フローラの回復を促し、消化器症状の早期改善をサポートします。抗生物質治療後の整腸剤の使用は、腸内環境を守るために重要な選択となります。
また、ミヤBM散等に含まれる酪酸菌は、芽胞を形成するため胃酸や熱だけでなく、抗生物質にも強いのが特徴です。
医師は整腸剤をどんな使い分けをしている?
参考程度ですが、整腸剤の使い分けをしているという記事を発見したのでご紹介します。
Q. 「具体的にどのような点を考慮して使い分けていますか?」の設問で「その他」と答えた方だけに伺います。具体的にどのような点を考慮して使い分けているかお聞かせください。(自由回答)
- エビデンスはないが、自身の経験から、感染性か非感染性かで、使い分けている。感染性の場合にはビフィズス菌系を、非感染性の時には酪酸菌製剤にしている【脳・神経科開業医】
- ミヤBMは8割の患者が便の固まる方向へ、ビオスリーは8割の患者が緩くなる方向へ働く印象。エンテロノンはガスの張りが減って良かったのに、なくなって残念だ【消化器内科勤務医】
- 剤型が錠剤か散剤かで使い分けている【消化器外科勤務医、小児科勤務医】
- 刺激性と非刺激性下剤の使い分けや併用をしている【産婦人科勤務医】
- 牛乳成分の有無、錠剤か粉末かで使い分けている【小児科開業医】
- 普段便秘がちか、下痢がちかで使い分けている【内科開業医】
- 胃腸炎と便秘では異なるものを処方する【小児科開業医】
まとめ


この記事では、整腸剤の役割から、含まれる成分の種類と違い、薬の使い分けに関してまでを解説しました。
- 整腸剤によって含まれる成分が異なる。
- 酪酸菌、ビフィズス菌は短鎖脂肪酸を生成し、下痢以外にも便秘やがんなど様々な効能が報告されている。
- 乳酸菌は腸内のphを酸性にし、腸内環境を整えるはたらきがある。
最新の研究では、腸内細菌が肥満や糖尿病、心血管系疾患とも関連していることが明らかになりつつあります。これにより、これからの整腸剤の役割は、生活習慣病の予防や全身の健康管理にまで広がる可能性を秘めています。
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