もしかしたら今飲んでる薬に認知症を悪化させる薬があるかもしれない…。
一度そう思い出すと高齢者や高齢者のご家族は飲んでいる薬を、このまま飲んでもいいのか不安になってしまうと思います。
病気があり、治療のために飲んでいるのであれば仕方がないですが、本当は必要ないのでは?と思う薬も仕事をしていて結構あるので、そういった薬を中心にまとめてみました。
抗コリン作用が認知機能に影響を与えるのか?
【高齢者の安全な薬物ガイドライン2015】に抗コリン作用と認知機能との関連が指摘されています。
単独では抗コリン作用が大きくなくても、併用することで抗コリン作用が増加し、認知機能を生じやすくなることに注意が必要だと思います。
実は様々な薬に抗コリン作用はあるが、治療上仕方のないものも多い
病気の治療上中止にするわけにはいかないものも多い為、このサイトでは過度な不安を与えたり、治療効果に影響を与える可能性がある情報、治療上必要と考えられる薬の情報は割愛したいと思います。
抗コリン作用は認知症だけでなく、他にも影響を与える
軽い抗コリン作用であれば問題ないですが、強い抗コリン作用は前立腺肥大、閉塞型緑内障、睡眠時無呼吸症候群とは禁忌になっている物もあります。

今日来た前立腺肥大の患者さんで、風邪薬で尿閉を起こした人がいました。
まれなケースではありますが、未治療の前立腺肥大を持っている人は注意が必要です。
また、便秘やのどの渇きの原因になることもあるので注意が必要です。
第一世代ヒスタミンH₁受容体拮抗薬(抗アレルギー薬)は本当に必要?

蕁麻疹やアトピー、耳鼻科では鼻水止めなどに使用されます。
市販薬としては風邪薬に該当するものには大体この第一世代ヒスタミンH₁受容体拮抗薬が含まれています。
市販薬では眠剤にもこの成分が含まれています。
思いつく限り、調べられる限り列挙してみました。
具体的にどんな成分が第一世代ヒスタミンH₁受容体拮抗薬に該当するか?
- ジフェンヒドラミン(医療用医薬品:レスタミン、トラベルミン 市販薬:レスタミンコーワ糖衣錠、ドリエル)
- クレマスチン(医療用医薬品:タベジール)
- dl-マレイン酸クロルフェニラミン(医療用医薬品:ネオレスタミン)
- (d-)マレイン酸クロルフェニラミン(医療用医薬品:ポララミン、セレスタミン 市販薬:風邪薬やアレルギー薬など多くのものに入っています。)
- ヒドロキシジン(医療用医薬品:アタラックス)
- シプロへプタジン(医療用医薬品:ペリアクチン)
耳鼻科や皮膚科で漫然と出ていることも…
耳鼻科ではセレスタミン、皮膚科ではアタラックスが長期で使用されているケースを見かけます。
本当に必要なケースであれば仕方がないとは思うのですが、本当に必要かどうかは医師にしかわからないため、症状が落ち着いている場合は継続の必要性を、医師に一度聞いてみた方がいいと思います。
市販薬としてやたらと含まれているマレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン
どちらも長期で服用するには強い印象のある抗アレルギー剤ですが、風邪薬として100種類以上の薬に含まれていて、検索してみて正直びっくりしました。値段が安いのでしょうか?
これらの薬は抗アレルギー作用だけでなく、鎮静作用や睡眠作用もあるので、風邪症状がある場合にゆっくり眠れるというメリットがあるのは確かです。
ドラールという市販の眠剤も成分はこのジフェンヒドラミンのようでした。アレルギーとしてではなく、この鎮静作用や催眠作用を目的としているのでしょう。
しかし、咳症状のみの場合や、軽い鼻水であればこの薬は少し強すぎるイメージがあります。
副作用の原因となる薬を服用するのは、避けたいところではないでしょうか。
数日で服用を中止するようであれば問題ないですが、長期(14日以上)で服用しているようであれば、医療機関を受診してしっかり医療用医薬品を出してもらった方がいいでしょう。
軽いアレルギー症状であれば、第2世代の抗アレルギー薬で十分です。
市販薬でも販売されているフェキソフェナジン、その他医療用医薬品にも第2世代の抗アレルギー薬が沢山存在します。
これらの第2世代抗アレルギー薬は抗コリン作用が弱いだけでなく、近年では第一世代に劣らないような作用を持つ薬も報告されています。
症状が続く場合は市販薬を漫然と続けず、医療機関を早めに受診した方がいいでしょう。
塗り薬、点眼薬などはほとんど問題にならないので安心して使用してください。
塗り薬や点眼薬は局所的なものがほとんどなので、このような副作用を起こすことは稀です。
用法用量を守って使用していれば問題ないでしょう。
ヒスタミンH₂受容体拮抗薬(胃薬)は本当に必要か?

【高齢者の安全な薬物ガイドライン2015】には高齢者において認知機能の低下、せん妄を引き起こすリスクがあるため、可能な限り控えることが望ましいと書かれています。
題名に抗コリン作用と入れておいて恐縮ですが、抗コリン作用による認知機能の低下かどうかはこの薬に関しては不明です。別の要因も考えられます。
また、これらの薬のほとんどは腎排泄であるため、腎機能が低下している高齢者にはその点でもあまりお勧めできません。
具体的にどんな成分がヒスタミンH₂受容体拮抗薬に該当するか。
市販薬でも医療用医薬品でも該当薬が沢山ある為、全てを書ききることが出来ません。

購入を迷っている場合は、薬剤師に相談してください。
- シメチジン(医療用医薬品:タガメット等)
- ラニチジン(医療用医薬品:ザンタック、市販薬:アバロンZ、三井Z胃腸薬等)
- ファモチジン(医療用医薬品:ガスター、市販薬:ガスター10等)
- ニザチジン(医療用医薬品:アシノン、市販薬:アシノンZ等)
- ロキサチジン(市販薬:アルタット)
- ラフチジン(医療用医薬品:プロテカジン)等
胃薬は漫然と継続しているケースが多い。本当に必要であれば別の薬剤も検討出来るのでは?
沢山薬を飲んでいるからという理由で追加されているケースがありますが、胃が弱い方で、胃に影響の出やすい薬(NSAIDsやバイアスピリンなど)を服用中でなければ、さほど問題にならないケースでも、漫然と投与されていることがあります。
胃が痛かったから、などのケースも薬が原因ではなかったケースもあり、実は中止しても問題なかったなどというケースもあります。
胃薬をやめない方がいいケースもある。しかしそういう場合は別の薬に変更も可能
胃に影響が出やすい薬【NSAIDs(ロキソニン、ボルタレンなど)やバイアスピリンなど】が出ている場合は胃薬は続けた方が無難です。
また、過去に消化性潰瘍や逆流性食道炎の指摘があった場合もやめると再燃する可能性があるので慎重に判断した方がいいでしょう。
しかし、 ヒスタミンH₂受容体拮抗薬 (H₂ブロッカー)ではなくプロトンポンプ阻害薬(PPI)という選択肢もあるので、そちらに変更可能かどうか医師に相談してみてもいいと思います。
眠剤は本当に必要か?

【高齢者の安全な薬物ガイドライン2015】には 、ベンゾジアゼピン系(Bz系)の睡眠薬・抗不安薬は、認知機能の低下、転倒、骨折、日中の倦怠感などのリスクがある為、可能な限り使用を控える事とされています。
ベンゾジアゼピン系(Bz系)薬には抗コリン作用のみならず、筋弛緩作用、物忘れ、倦怠感、依存性などが以前から指摘されているためです。
非ベンゾジアゼピン系薬(Z-Drug)もBz系ほどではないにせよ、同様に注意喚起されています。
具体的にどんな成分がベンゾジアゼピン系(Bz系)薬 、 非ベンゾジアゼピン系(Z-Drug) 薬に該当するか
これもとても種類が多い為、全てを書ききることが出来ませんが、一部を記載します。
これらは市販薬では手に入らず、最近では専門医以外もむやみやたらと処方が出せないように制限がかかっています。
薬物乱用を防止するため、一部処方日数の制限もあります。
ベンゾジアゼピン系(Bz系)薬
- フルラゼパム(ダルメート他)
- ジアゼパム(セルシン、ホリゾン他)
- トリアゾラム(ハルシオン他)
- エチゾラム(デパス他)
非ベンゾジアゼピン系(Z-Drug) 薬
- ゾピクロン(アモバン他)
- ゾルピデム(マイスリー他)
- エスゾピクロン(ルネスタ他)
まずは薬物療法の前に生活改善を試みてみてください
- 定時の起床
- 朝方の日光浴
- 午睡時間の制限
- 就寝前の過剰な水分摂取を控える
- アルコール、ニコチンの制限
- 静かな就寝環境
- 寝る前のテレビや携帯電話などによるブルーライトの制限
などが有効であると言われています。
まとめ
胃薬や抗アレルギー薬、眠剤は漫然と使用を続けている人が多いなというのが私が日々薬局で仕事をしていて感じている事です。
本当に必要な場合は継続するべきなのですが、実はやめてみても何の問題もなかったケースもあり、今一度処方医と処方薬に関して相談してみても良いのでは?と感じています。
特に問題だと思うのが、市販薬に沢山このような薬が含まれている事です。
医療用医薬品を既に飲んでいる場合は、市販の薬を購入する前に、医師や薬剤師に必ず相談した方がいいでしょう。
認知機能が落ちてきて、薬の飲み忘れが増えてきた時の対処法
薬を全部まとめてパックする方法(一包化)があります。
これでも飲み忘れる事はありますが、だいぶ減りますし、誤飲を防ぐことが出来るので、ご本人もご家族にとっても安心だと思います。
薬局で頼めばしてくれますので、ぜひご検討ください。
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