一度そう思い出すと高齢者や高齢者のご家族は飲んでいる薬を、このまま飲んでもいいのか不安になってしまうと思います。
病気があり、治療のために飲んでいるのであれば仕方がないですが、本当は必要ないのでは?と思う薬もあるため、そういった薬を中心にまとめてみました。
- 認知症になるのがこわい人
- 薬による認知症の影響を知りたい人
抗コリン作用が認知症に危険?抗コリン作用って何?
単独では抗コリン作用が大きくない薬であっても、いくつか併用することで抗コリン作用が増加し、認知機能を生じやすくなる場合があります。
抗コリン作用ってどんな作用?
抗コリン作用とは、アセチルコリンという副交感神経の伝達物質を抑えるはたらきのことです。
アセチルコリンの作用が活発な状態では、胃・腸・食道などの痙攣、胃炎・腸炎・潰瘍などの発症や悪化、下痢や腹痛などがあらわれる場合があります。
どんな薬に抗コリン作用がある?治療上仕方のないものも多い
上記でも説明した通り、アセチルコリンが活発に動きすぎると胃・腸・食道などの痙攣、胃炎・腸炎・潰瘍などの発症や悪化、下痢や腹痛などがあらわれる場合があります。
そのため、アセチルコリンを抑えること(抗コリン作用)で、これらの症状を抑える薬が数多く存在します。
下痢止めや鎮痙薬などが代表的です。
ただ、薬の主作用ではなく、副作用で抗コリン作用をもっている薬があります。
たとえ副作用があったとしても治療上続けざる得ない薬もあるのですが、本当に必要なのか疑わしい薬もあります。
例えば、眠剤、胃薬、抗アレルギー薬、風邪薬、花粉症治療薬などです。
この記事ではそのような薬を中心に解説していきます。
抗コリン作用は認知症だけでなく、ほかの臓器にも影響を与える
軽い抗コリン作用であれば問題ないですが、強い抗コリン作用は前立腺肥大、閉塞型緑内障、睡眠時無呼吸症候群とは禁忌になっている物もあります。
前立腺肥大症の患者さんで、風邪薬で尿閉をおこした人がいました。
まれなケースではありますが、注意したほうがよいでしょう。
また、便秘やのどの渇きの原因になることもあるため注意が必要です。
参考資料「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」
その風邪薬、抗アレルギー薬、花粉症治療薬、睡眠薬は本当に必要?
第一世代ヒスタミンH₁受容体拮抗薬という抗アレルギー作用のある薬は強い抗コリン作用をもつことで有名です。
じつは市販で売られている眠剤にもこの成分が含まれています。
思いつく限り、調べられる限り列挙してみました。
具体的にどんな成分が第一世代ヒスタミンH₁受容体拮抗薬に該当する?
よく見かける第一世代ヒスタミンH₁受容体拮抗薬の成分と商品名に関して以下にまとめました。
- ジフェンヒドラミン(医療用医薬品:レスタミン、トラベルミン 市販薬:レスタミンコーワ糖衣錠、ドリエル)
- クレマスチン(医療用医薬品:タベジール)
- dl-マレイン酸クロルフェニラミン(医療用医薬品:ネオレスタミン)
- (d-)マレイン酸クロルフェニラミン(医療用医薬品:ポララミン、セレスタミン 市販薬:風邪薬やアレルギー薬など多くのものに入っています。)
- ヒドロキシジン(医療用医薬品:アタラックス)
- シプロへプタジン(医療用医薬品:ペリアクチン)
耳鼻科や皮膚科で漫然と処方されていることも…
本当に必要なケースであれば仕方がないとは思うのですが、症状が落ち着いている場合は継続の必要性を、主治医に一度聞いてみた方がいいと思います。
市販薬としてやたらと含まれているマレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン
マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミンは、風邪薬として100種類以上の薬に含まれています。
検索してみて正直びっくりしました。
値段が安いのでしょうか?
これらの薬は抗アレルギー作用だけでなく、鎮静作用や睡眠作用もあるため、風邪症状がある場合にゆっくり眠れるというメリットがあるのは確かです。
ドラールという市販の眠剤も成分はこのジフェンヒドラミンのようでした。
アレルギーとしてではなく、この鎮静作用や催眠作用を目的としているのでしょう。
数日で服用を中止するようであれば問題ないですが、長期(14日以上)で服用しているようであれば、医療機関を受診して、抗コリン作用の少ない薬を処方してもらったほうがよいでしょう。
軽いアレルギー症状であれば、第2世代の抗アレルギー薬で十分です。
市販薬でも販売されているフェキソフェナジン、その他医療用医薬品にも第2世代の抗アレルギー薬がたくさん存在します。
症状が続く場合は市販薬を漫然と続けず、医療機関を早めに受診した方がいいでしょう。
塗り薬、点眼薬などはほとんど問題にならないので安心して使用してください
塗り薬や点眼薬は局所的なものがほとんどなので、このような副作用を起こすことは稀です。
用法用量を守って使用していれば問題ないでしょう。
その胃薬(ヒスタミンH₂受容体拮抗薬)は本当に必要?
【高齢者の安全な薬物ガイドライン2015】には高齢者において認知機能の低下、せん妄を引き起こすリスクがあるため、可能な限り控えることが望ましいと書かれています。
具体的にどんな成分がヒスタミンH₂受容体拮抗薬に該当する?
市販薬でも医療用医薬品でも該当薬がたくさんあり、すべてを掲載はできませんが、有名なものを一部以下に紹介しました。
- シメチジン(医療用医薬品:タガメット等)
- ラニチジン(医療用医薬品:ザンタック、市販薬:アバロンZ、三井Z胃腸薬等)
- ファモチジン(医療用医薬品:ガスター、市販薬:ガスター10等)
- ニザチジン(医療用医薬品:アシノン、市販薬:アシノンZ等)
- ロキサチジン(市販薬:アルタット)
- ラフチジン(医療用医薬品:プロテカジン等)
胃薬は漫然と継続しているケースが多い
過去に胃潰瘍になったことがある、ロキソニンのようなNSAIDsやバイアスピリンを服用しているなど、胃薬を併用したほうがよい場合もありますが、一度処方をだしてから意味もなく継続になっているケースもあります。
胃薬をやめない方がいいケースもある!そういう場合は別の薬に変更も可能
前述したように、過去に胃潰瘍になったことがある、ロキソニンのようなNSAIDsやバイアスピリンを服用している場合は、胃薬を併用したほうがよいでしょう。
しかし、 ヒスタミンH₂受容体拮抗薬 (H₂ブロッカー)ではなくプロトンポンプ阻害薬(PPI)という選択肢もあるため、そちらに変更可能かどうか医師に相談してみてもいいと思います。
プロトンポンプ阻害薬(PPI)とは?
胃内において胃酸分泌の最終段階にプロトンポンプというものがあります。
本剤は胃内のプロトンポンプを阻害することで胃酸を抑える作用をあらわす薬です。
有名なものでは、タケプロン、ネキシウム、タケキャブなどがあります。
現時点(2024年4月)ではOTC薬は販売されていないため、医師に処方してもらう必要があります。
その眠剤は本当に必要なの?眠剤がないと眠れない?
【高齢者の安全な薬物ガイドライン2015】には 、ベンゾジアゼピン系(Bz系)の睡眠薬・抗不安薬は、認知機能の低下、転倒、骨折、日中の倦怠感などのリスクがある為、可能な限り使用を控える事とされています。
非ベンゾジアゼピン系薬(Z-Drug)もBz系ほどではないにせよ、同様に注意喚起されています。
どんな成分がベンゾジアゼピン系(Bz系)薬 、 非ベンゾジアゼピン系(Z-Drug) 薬に該当する?
眠剤はとても種類が多い為、すべてを記載することはできませんが、一部代表的なものを以下に掲載しました。
これらは市販薬では手に入らず、専門医以外もやたらと処方が出せないように注意喚起されています。
ベンゾジアゼピン系(Bz系)薬
- フルラゼパム(ダルメート他)
- ジアゼパム(セルシン、ホリゾン他)
- トリアゾラム(ハルシオン他)
- エチゾラム(デパス他)
非ベンゾジアゼピン系(Z-Drug) 薬
- ゾピクロン(アモバン他)
- ゾルピデム(マイスリー他)
- エスゾピクロン(ルネスタ他)
眠剤に頼るまえに生活を改善してみよう!
眠剤以外の眠れるようになる方法として、以下の方法を紹介します!参考にしてみてください。
- 定時の起床
- 朝方の日光浴
- 午睡時間の制限
- 就寝前の過剰な水分摂取を控える
- アルコール、ニコチンの制限
- 静かな就寝環境
- 寝る前のテレビや携帯電話などによるブルーライトの制限
もっと詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください↓
認知機能が落ちてきて、薬の飲み忘れが増えてきた時の対処法
薬を全部まとめてパックする方法(一包化)があります。
これでも飲み忘れる事はありますが、だいぶ減りますし、誤飲を防ぐことができるため、ご本人もご家族にとっても安心だと思います。
薬局で頼めばおこなってくれますので、ぜひご検討ください。
まとめ
胃薬や抗アレルギー薬、眠剤は漫然と使用を続けている人が多いなというのが私が日々薬局で仕事をしていて感じている事です。
本当に必要な場合は継続するべきなのですが、実はやめてみても何の問題もなかったケースもあり、主治医と処方薬に関して相談してみても良いのでは?と感じています。
高齢者は市販薬を購入する前に、医師や薬剤師に相談してみましょう!
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