リベルサス錠は糖尿病治療薬ですが、吸収に食事の影響を受けやすいため、起きてすぐの空腹時服用が推奨されている薬です。
ビスホスホネート製剤(BP製剤)も非常に吸収されにくく、食べ物により吸収が妨げられるため、空腹時に服用する必要があります。
この2つの薬はどちらも朝起きてすぐの空腹時服用が推奨されているのですが、両方処方された場合はどのような飲み方をすればよいのでしょうか?
- リベルサス錠とビスホスホネート製剤の吸収に関して
- リベルサス錠とビスホスホネート製剤が両方処方された場合はどうすればいいか
- リベルサス錠とビスホスホネート製剤の代替案は?
リベルサス錠とは?なぜ空腹時服用?
簡単にですが、リベルサス錠の特徴を説明します。
リベルサス錠の概略
リベルサス錠の最大の特徴は、GLP-1受容体作動薬の中で唯一の経口薬であり、注射の必要がなく点です。
GLP-1は食事の摂取後に腸から分泌され、インスリンの分泌を促進し血糖値を下げる役割を果たします。
また、胃の動きを緩やかにして食事の摂取量を減少させ、満腹感を長時間持続させる効果もあります。
リベルサス錠には吸収促進剤SNAC(サルカプロザートナトリウム)が含まれており、これにより胃での分解を防ぎ、腸での吸収を促進する役割を担っています。
正しい服用方法を守ることで、この吸収促進剤が最も効果的に機能し、リベルサス錠の効果を最大限に引き出すことができます。
リベルサス錠は食事の影響を受けやすい
服用後少なくとも30分間は飲食や他の薬の服用を避けることが重要です。
データ上は2時間程度あけるのがベストなようです。
なぜリベルサス錠は食事の影響を受けやすいのでしょうか?
ペプチドを基本骨格とするセマグルチドは、分子量が大きいことから消化管での上皮細胞透過性が低く、また、胃の分解酵素により分解されてしまうため、経口投与は適していなかった。しかし、吸収促進剤であるSNAC(サルカプロザートナトリウム)300mgを含有することで、胃でのタンパク質分解からセマグルチドを保護し、吸収を促進して、経口投与が実現した。
リベルサス錠 作用機序|MSD
上記にも記載のあるように、もともとリベルサス錠の主成分であるセマグルチドは胃で分解されやすく、経口薬には適していませんでした。
しかしこの新しい技術をもってしても、1%程度しか経口では吸収されないと報告されています。
そのため、これだけ空腹時にこだわり、水の量にも注意する必要があるのです。
食後に飲んだ場合のデータや、服用時の水分量の影響などをもっと詳しく知りたい方はこちら
ビスホスホネート製剤(BP製剤)とは?なぜ空腹時服用?
ビスホスホネート製剤(BP製剤)とはどのような薬でしょうか?
ビスホスホネート製剤(BP製剤)の概略と商品名、飲み方に注意する理由などを解説していきます。
ビスホスホネート製剤(BP製剤)の概略と商品名
ビスホスホネート製剤(BP製剤)は、骨粗しょう症の治療薬として使われる薬で、内服、注射、点滴など様々な投与方法があります。
リベルサス錠と服用時間が重複する経口薬(成分名、先発品名)のみ、以下にまとめました。
※ジェネリック医薬品の場合は、成分名に会社名がついた名称になっています。
成分名 | 先発品名 |
アレンドロン酸ナトリウム水和物 | フォサマック錠、ボナロン錠 |
エチドロン酸二ナトリウム | ダイドロネル錠 |
ミノドロン酸水和物 | ボノテオ錠、リカルボン錠 |
リセドロン酸ナトリウム水和物 | ベネット錠、アクトネル錠 |
イバンドロン酸ナトリウム水和物 | ボンビバ錠 |
ビスホスホネート製剤(BP製剤)はキレートを形成する
ビスホスホネート製剤は食事の影響を受けやすく、食道に長く留まると食道潰瘍や食道炎を生じる可能性があるため、飲み方に注意の必要な薬です。
飲み方の注意点を以下にまとめました。
- 起床時服用
- 十分量の水で服用
- 服用後30分の飲食制限
- 服用後30分横にならない
それではなぜ、ビスホスホネート製剤はこのように食事等の影響を受けやすいのでしょうか?
ビスホスホネート製剤(BP製剤)は、極性が高く負に帯電した分子であるため、マグネシウムイオンやカルシウムイオンなどの多価陽イオンとキレートを形成することが分かっている。
このキレートは胃腸粘膜から吸収されにくいため、キレートを形成すると生物学的利用率(バイオアベイラビリティー)が低下し、十分な治療効果を得られなくなる。
そのため、最も空腹な状態である起床時に、水約180mLとともに服用するよう添付文書に書かれている。
BP製剤服用から朝食までの時間|日経DIクイズ2023年 5月号
簡単にまとめると、食事や硬水、薬に含まれるマグネシウムやカルシウムと薬がくっついて胃粘膜から吸収されにくくなってしまうということです。
リベルサス錠同様、できれば2時間、食事との間隔をあけることが望ましいようです。
結論!どうする?リベルサス錠とビスホスホネート製剤の併用
上記のリベルサス錠とビスホスホネート製剤の特徴をふまえた上で、リベルサス錠のメーカーであるノボノルディスクファーマに確認した情報も併せて考察し、まとめました。
ビスホスホネート製剤を優先して服用する
リベルサス錠は連日服用なのに対し、ビスホスホネート製剤は週に1回から月に1回服用が多い薬です(商品によります)
リベルサス錠の臨床試験では、2日に1回の服用の試験もおこなっており、連日服用と大きく血中濃度は変わらなかったという結果も出ているようです(メーカーMR談で、公表データは発見できず)
体内吸収率が日によって変わる可能性があること、コンプライアンスのことを考慮し、連日服用になっているとのことでした。
以上のことをふまえ、基本はビスホスホネート製剤を優先させて飲んだほうがよいでしょう。
リベルサス錠のメーカーMR(ノボノルディスクファーマ)もビスホスホネート製剤を優先するべきと言っていました。
リベルサス錠はスキップが推奨!ゆとりがあれば服用する
上記でも述べたように、リベルサス錠をスキップが推奨されますが、ビスホスホネート製剤を飲んだ後でも、30分以上(できれば2時間)間隔があけられる余裕があるようであれば、飲んでも問題はありません。
ただし、リベルサス錠はちょっとした影響でも吸収が落ちる可能性があり、高価な薬なので、勿体ないかもしれないです。
効果が出ないだけで、副作用などの害はありません。
リベルサス錠の飲み忘れ時の対応やどのくらい吸収が落ちてしまうか、もっと詳しく知りたい方はこちら
プラリア皮下注やオゼンピック注などの別の代替薬も検討
骨粗鬆症の薬も、GLP-1受容体作動薬も、注射薬があります。
そのため、どちらかの薬を注射薬に変えてしまうのも提案のひとつです。
トレーシングレポートの書き方に関してはこちら
まとめ
私の勤めている病院では、幸いビスホスホネート製剤とリベルサス錠の併用例はありません。
ビスホスホネート製剤はやせ型の高齢者に処方されることが多く、リベルサス錠は体重がしっかりあり、認知機能が確かな若い方に処方されることが多いため、たまたまターゲットがずれていたためです。
しかしほかの医療機関ではこの2つが処方される例がパラパラあるようなので、まとめてみました。
参考になれば幸いです。
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