骨粗鬆症の薬の中に、歯科治療に注意が必要な薬があるという話を、聞いたことがある人もいると思います。
全部が注意が必要なのか?飲み薬だけ?注射薬は?どのくらい前に止めて、再開はどのくらい?など気になる事をまとめました。
骨粗鬆症の薬の中で注意が必要な薬とは?

骨粗しょう症のお薬で、すべてに注意が必要なのではありません。
一部の薬のみ気をつければ大丈夫です。では見ていきましょう!
飲み薬
ビスフォスフォネート製剤(BP剤)
破骨細胞に作用しこの細胞の働きを抑えることにより、骨吸収を抑え骨密度と骨強度を高める作用をあらわす薬です。骨粗鬆症のとてもスタンダードな治療薬になります。
連日服用から週1回、月1回など様々な製剤があります。腎機能の状態や骨の状態によって薬を使い分けます。
エチドロン酸二ナトリウム(ダイドロネル)
アレンドロン酸ナトリウム(ボナロン、フォッサマック)
リセドロン酸ナトリウム(アクトネル、ベネット)
ミノドロン酸(ボノテオ、リカルボン)
イバンドロン酸 (ボンビバ)
注射薬
ビスフォスフォネート製剤(BP剤)
イバンドロン酸 (ボンビバ) ボンビバ注
ゾレドロン酸水和物(リクラスト) 2017年に販売開始。年に1回の注射で効果が得られます。注射後発熱が出ることがある為注意が必要です。
ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤
破骨細胞を活性化するRANKLを阻害することで骨吸収を抑制し、骨量の増加・密度の増強をします。5年を超えた長期にわたる骨密度上昇効果より骨折抑制効果の持続が特徴です。
ビスホスホネート製剤と同様に骨吸収抑制剤のため、同様に歯科治療には注意が必要です。
デノスマブ(プラリア、ランマーク): 6カ月に1度が基本ですが、場合によっては3か月に1度に変更します。 Ca低下の副作用が報告されているため、デノタスチュアブル等の併用が推奨されています。
抗スクレロスチン抗体製剤
骨を壊さずに古い骨の上に骨を作っていきます(モデリング作用)。古い骨を壊さないため、ビスホスホネート製剤(BP製)同様のリスクがあると言われています。
ロモソズマブ(イベニティ):月1回12か月皮下注射します。Ca値低下することがあります。
なぜこれらの薬は歯科治療前に休薬しないといけないのか。
骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(BRONJ)が起きる危険性があるため、事前に休薬が必要と言われています。
骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(BRONJ)とは
骨粗鬆症のお薬によって、あごの骨が細菌感染して腐ってしまう病気です。口内に骨が露出し、強い痛みが出たり、歯が抜け落ちるなどの症状が現れます。あごのしびれや歯の動揺、軟組織の腫脹などをみとめることもあります。
インプラントや抜歯などの外科処置は歯ぐきに傷を与えるため、そこから細菌が感染する可能性があります。
どのくらいの頻度で起きる病気なのか
日本における発生頻度は、ビスフォスフォネート製剤(BP剤)の経口薬において0.01%~0.02%、注射薬では1~2%と報告されています。

発生頻度は高くありません。
骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(BRONJ) を防ぐためには
危険因子をできるだけ取り除き、口腔衛生状態を良好に保つことが重要です。定期的な歯科検診を受けた方がいいでしょう。

逆に、口腔衛生状況が良ければ、それほど心配はいらないと言われています。
これらの薬を飲んでいる人全員が休薬が必要?

骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(BRONJ) の危険因子
骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(BRONJ) を起こすリスクが上がる因子とは…
- ビスホスホネート製剤(BP製剤)服用中
- 抜歯やインプラントなどの侵襲的歯科治療、口腔衛生状態の不良
- 全身的要因(癌、腎透析、糖尿病、肥満など)
- 先天的要因(特定の遺伝子多型)
- その他(ステロイドなどの特定の薬剤の使用、喫煙、飲酒)
ビスホスホネート製剤(BP製剤)投与3年未満で危険因子がない場合は休薬しなくていい
ビスホスホネート製剤を服用していても、3年未満の服用、歯科で抜歯などでない虫歯の治療や、クリーニングなどの場合、上記に挙げたような危険因子がない場合は原則として薬を休薬しなくていいと言われています。
ビスホスホネート製剤(BP製剤)を休薬しない方がいいこともある
悪性腫瘍患者(癌患者)における注射用BP製剤の投与に関しては、原則として継続し、出来る限り侵襲的歯科治療を避ける事とされています。
歯科治療のどのくらい前に休薬し、再開はどのくらい後?
歯科治療前少なくとも3カ月間中止し、治療後からBP製剤再開までは術創部が再生粘膜上皮で完全に覆われる2週間前後か、可能であれば十分な骨性治療が期待できる2ヵ月前後空ける事が望ましいとされています。
歯科治療に影響のない骨粗鬆症の薬もある?

沢山ありますので、簡単に作用等と合わせて紹介します。
どの薬を選ぶかは医師によって判断が異なりますので、歯科治療を検討していてBP製剤に不安がある場合は個別に主治医に相談してください。
ビタミンD₃製剤
骨吸収の抑制効果だけでなく、骨芽細胞刺激による骨形成促進作用も有しています。
骨量増加はわずかですが、脊椎骨折予防効果があり、BP製剤の効果を増幅します。
副作用としてCa上昇があげられるため、定期的な血液検査が推奨されています。
サプリメントでCaを取っている方は控えるようにしましょう。
アルファカルシドール(ワンアルファ、アルファロール内用液)
エルデカルシトール(エディロール)
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)
骨密度改善効果はBP製剤より弱めですが、骨質改善による骨折抑制効果があり、乳がんのリスク低下、脂質代謝改善作用もあるので、閉経後比較的早期の女性には適しています。
しかしながら、乳がん治療中の方や75歳以上には推奨されないという欠点があります。
ラロキシフェン(エビスタ)
バセドキシフェン(ビビアント)
骨代謝刺激薬
古い骨を壊してリモデリング を行うことにより、骨の質改善を期待できます。
BP製剤を上回る効果が期待されていますが、長期で骨腫瘍が発生するリスクが否定できず、米国でも長期使用の許可が下りていないため、国内でも投与日数制限(一生のうち2年間まで)があります。
骨転移がある悪性腫瘍の人には使えません。
歯科治療中にも問題なく継続できる薬です。海外ではむしろ外傷性骨折、骸骨壊死の治療に用いられています。
フォルテオ皮下注
テリボン皮下注
ビタミンK₂製剤
カルシウムの骨への定着に関与するたんぱく質を活性化し、骨形成促進作用を発揮するとともに、破骨細胞の分化阻害などによる骨吸収抑制作用もあります。
骨量増加の面では有効性が高いと言われています。
メナテトレノン(グラケー、ケイツー):ワーファリンの作用を減弱するため併用禁忌です。必ず食後に服用します。
カルシウム製剤
Caが上がりすぎてしまうことがあるので、ビタミンD製剤との併用に注意します。
乳酸カルシウム
アスパラCA
歯科医師によって考えが違うので、一応骨粗鬆症の薬を飲んでいることは早めに報告を
ビスホスホネート製剤の休薬の是非、休薬期間などは歯科医師により考えが異なる可能性があります。
念のため注意の必要な薬を飲んでいる場合は早めに歯科医師に相談しておいた方が無難でしょう。
参考資料
「ビスホスホネート関連骸骨壊死に対するポジションペーパー」(ビスフォスフォネート関連顎骨壊死検討委員会)
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