アフターピルをOTC化する議論が長く取りざたされていますが、いまだに産婦人科学会からの強い反対にあい、実現されていません。欧米諸国では当たり前にドラッグストアで手に入ります。
今すぐにでも欲しいけれど、オンラインは心配だし、信頼できるか不安…。

メルカリ等で、海外から医薬品を手に入れる闇ルートが横行していて、問題になっているようです。
そんな人のために現在対面ですぐに、国内正規品のアフターピルが手に入れられる方法をお伝えします。
緊急避妊(Emergency Contraception:EC)とは
- 避妊せずに行われた性交
- 避妊したものの避妊手段が適切か十分でなかった性交
の後に緊急避難的に用いるものです。
具体的には…
- コンドームの破損 31.8%
- 避妊せず 23.1%
- コンドーム脱落 15.7%
- 膣外射精 15.3%
- コンドームの膣内残留 6.6%
- レイプや性的暴行 3.9%
- その他の避妊具の不適切な装着、破損、脱落など 3.7%
(日本家族計画協会クリニック 2005年4月から2013年3月)より抜粋
アフターピルの種類
アフターピルはモーニングピル、EC、エマージェンシーピル、ノルレボ、プランBともいわれています。
国内で承認されているアフターピル(緊急避妊薬)は成分名はレボノルゲストレル、商品名「ノルレボ錠1.5㎎」とその後発品である「レボノルゲストレル錠1.5㎎「F」の2種類になっています。
レボノルゲストレルは黄体ホルモンの一種であり、高用量の黄体ホルモンの単剤です。
性行為から72時間以内に服用する必要があります。それ以上時間が経ってしまった場合は効果が落ちてしまうため注意が必要です。

値段は?
原価は 「ノルレボ錠1.5㎎」 :4500円/T 「レボノルゲストレル錠1.5㎎「F」 :3500円/Tとなっていますが、自費薬のため、自由に値段を設定できるため、実際の値段には差があります。
大体4000円から8000円くらいまでの幅があるようです。
沢山、一度に購入は出来るか
緊急避妊薬は本当に臨時の時にのみ使用し、普段は別の避妊方法をとることが推奨されているため、1回につき1Tまでとなっています。
効果、副作用、禁忌等の注意点
効果
作用機序は基本的に解明されていませんが、排卵を抑制したり、遅らせたりする効果があります。
着床への影響はほとんどなし、もしくは全くないと言われています。
そのため、排卵前に作用することが重要となっており、服用が遅れて受精してしまった場合はこの薬の効果が出なくなってしまいます。
副作用
悪心(2.25%)はありますが、嘔吐は少なめになります。

服用後2時間以内に嘔吐した場合は直ちに1錠追加して服用する必要があります。
嘔吐が持続する場合は銅付加子宮内避妊具CuーIUD(120時間以内)を使用の方が確実だと思われるため、産婦人科を受診してください
禁忌
妊婦には禁忌になっています。
しかし間違って妊娠している女性に投与されても催奇形性などはなく、有害ではないとされています。重篤な肝障害のある患者も禁忌になっています。

この薬を飲んでも流産することはありません(中絶薬としては使用できません)。また、たくさん飲んでもそのような効果はありません。
薬物相互作用
CYP3A4で代謝される為、リファンピシン、抗てんかん薬、サプリメントのセント・ジョーン・ズワートを服用していると、効果が落ちる可能性があります。
その他注意点
- 100%妊娠を回避できるわけではありません。阻止率は90.8%程度と言われています。
- 授乳中の人は、この薬は乳汁中に移行するので、24時間は授乳を避けてください。
- 避妊効果がBMI30以上の人では低くなると言われています。(安全性には問題ありません)
無事に避妊できた場合はいつ頃わかるか
95%が次回予定月経後7日以内に月経があります。
月経が7日以上遅れたり、通常より軽い場合には妊娠検査を受けたり、産婦人科を受診することが推奨されます。
日本では未承認のアフターピル( ウリプリスタル酢酸 )
ウリプリスタル酢酸は緊急避妊薬として海外では一般的に手に入る薬です。
30㎎を内服し、性交後120時間まで有効とされていますが、アフターピルとしての適応が日本では通っていないため、この薬で副作用等が起きた際には薬害による救済制度が使えない可能性があるので注意が必要です。

インターネットで売っている薬剤は海外製なので、日本人では試験が行われていません。
添加剤等も日本で認可されていないものが使われている可能性もあります。
医薬品副作用被害救済制度
医薬品副作用救済制度は通常の適応が通っている薬を、正しい用法用量で医師の指示通り飲んでいた場合に生じた副作用に関して保障してくれる制度です。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の救済制度相談窓口で相談することが出来ます。

正規のアフターピルはどこで入手できるか
産婦人科のある病院が近隣にある場合(方法①)
産婦人科であれば、受診後高い確率ですぐに処方してもらえます。確実で一番安全な方法だと思います。
近隣のどの病院でアフターピルを処方してもらえるか、在庫があるのかは「緊急避妊にかかる対面診療が可能な産婦人科医療機関等の一覧」で確認することが出来ます。東京都の例ですが、このように全国の医療機関がリスト化されており、緊急避妊薬の有無も記載してあります。↓


産婦人科、婦人科であれば扱っている可能性が高いので、迷っている時間がもったいないので、とりあえずすぐに問い合わせてみてください。

恥ずかしいと思う必要はありません。医師も慣れていますし、守秘義務があるので、誰かにバレる心配もありません。

性教育が不十分な、この国の責任でもあると思います。
まずは自分の身体の安全を、最優先に考えてください。
遠方等で医療機関が受診できない等、何らかの理由で医療機関を受診できない場合
オンライン診療で診察を受けた後、指定の近隣薬局で調剤してもらう(方法②)
オンライン診療を行っている医療機関で処方箋を書いてもらい、Faxで処方箋を薬局に送ってもらう
↓
研修を受けた薬剤師がいる近隣の薬局で調剤を受ける
この方法でも即日で薬が手に入る可能性があります。
ただ、必ず本人(身分証明書が必要)が薬局を訪れ、対面で説明を受けてその場で薬を飲むところを見せる必要がある為、多少手間がかかります。
オンライン診療は産婦人科医もしくは所定の研修を終えた医師であれば処方可能です。
通いなれた病院でなくても、アフターピルに関しては、例外的に初回からオンライン診療可能のため、どちらの医療機関を受診しても構いません。
「オンライン診療の適切な実施に関する指針」参照
オンライン診療で、緊急避妊薬を処方してくれる医師を、どうやって探すか
オンライン診療可能な医療機関リストは厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について」で確認することが出来ます。
産婦人科医であれば確実に診てもらえると思います。産婦人科でなくても、所定の研修を受けている医師であれば、処方してもらえます。

総合病院の医師は、研修を受けている人が多い印象でした。
総合病院は、オンライン診療も行っている可能性が高いので、問い合わせる価値はあると思います。
また、✖がついていても、アフターピルに関しては例外的に厚生労働省の許可が出ているため、初回から診察してもらえる可能性があります。
確認してみてください。下記は東京都の例です↓

研修を受けた薬局リストは、どこで探すか

基本的に、医療機関が探してくれるので、患者さんが個人で探す必要はありません。
研修を受けた薬剤師がいる薬局リストは、厚生労働省の「オンライン診療に伴う緊急避妊薬の調剤について」に載っています。
医療機関がこちらのリストを見て調剤可能か問い合わせてくれますが、あまりにも近隣に調剤できる薬局がない場合は調剤してもらえない可能性があるので、事前にオンライン処方を行ってもらう際に確認してもらった方がいいでしょう。

アフターピル服用後の注意点
緊急避妊ピルを飲んだら性交渉を行っても妊娠しない?
緊急避妊ピルは避妊薬ではないため、妊娠する可能性があります。
また、排卵が遅延している可能性があり、次回月経までに性交渉が行われると、そのために妊娠する危険性が高まります。
どうしても次の月経まで性交が待てない場合は、緊急避妊ピルを内服した翌日から経口避妊薬(OC)を21日間、妊娠を早めに否定したい場合は14日間内服する、もしくはコンドーム等の避妊具を必ず装着するようにしてください。
アフターピル服用以外の避妊方法
銅付加子宮内避妊具(Cu-IUD)を120時間以内に挿入する方法があります。
- 精子の運動能力の抑制をすることにより受精阻害
- 子宮内膜の異物反応により着床阻害
この方法であれば受精してしまった後でも妊娠を防ぐことが出来るので、アフターピルが間に合わなかった場合や、嘔吐してしまった場合などは産婦人科でこのような処置を受ける事を検討してみてください。
メリット
- 避妊効果99%
- 避妊継続を続けたい場合は3~5年程度継続できる(途中で抜去可能)
デメリット
- 性感染症を悪化させることがある
- 妊娠経験のない人には挿入が困難な事も
もし性犯罪に巻き込まれてしまったら、こんな制度やこんな相談場所があります
- 平成18年度から、警察庁において、緊急避妊などに要する経費を公費で負担することによる、犯罪被害者等の精神的・経済的負担の軽減を図っています。
- 「内閣府からのワンストップ支援センター交付金」(平成29年) ワンストップ支援センター及びその提携病院に対して、内閣府と都道府県からの予算で、警察への通報がなくても診療費の支援を行う事業が発足しています
- 警察を介さない診療や性感染症検査などの診察費、カウンセリングにも公費が負担されることもあります(自治体により異なる為、自治体に問い合わせを)
- 性犯罪・性暴力被害者の為のワンストップ支援センターが性犯罪・性暴力被害者に対する被害直後からの総合的な支援を目的に設置されており、平成30年10月にはすべての都道府県に設置されました。

正しい避妊方法の知識を持ちましょう
日本は他の先進国に比べても、避妊に対する知識がなさすぎる避妊後進国です。

産婦人科の先生が本当に悔しそうに言っていました。
文部科学省があまりにもその分野に力を入れておらず、今もカリキュラムに十分に含めていないようなので、子どもがいる場合は家庭での教育が必要だと思われます。(産婦人科医では教育の管轄は文部科学省なのでどうすることもできないようです)
避妊法
- コンドームを使用する:避妊失敗率 13% コンビニ等で購入できる(~1000円/ダース)破損、脱落、漏れ、装着ミスが起きることあり
- 低用量ピル(OC)を服用する:避妊失敗率 7%(飲み忘れ等を含む) (~5000円/月)処方箋が必要。35歳以上のヘビースモーカーは禁忌
より確実な避妊法
- 男性不妊手術(パイプカット):避妊失敗率0.15% 1度のみで日帰り手術OK(~20万円程度)不可逆性(今後妊娠を希望しない場合)
- 女性不妊手術(卵管を結ぶ):避妊失敗率0.5% 1度のみ 自然分娩や帝王切開時に行える 入院手術(~20万円程度)不可逆性(今後妊娠を希望しない場合)
- IUS(黄体ホルモン放出)、銅付加IUD;CuーIUD(銅イオン放出):避妊失敗率0.2~0.8% 1回の装着で2~5年効果持続 産婦人科で子宮内装着/除去 1回(~5万)(出産経験者向け)
これらは避妊法ではありません
- 性交中断法
- リズム法(オギノ法)
若い女性に望まれる避妊法は低用量ピル(OC)
メリット
- 簡便で避妊効果が高い
- 再び妊娠できます
- 女性が主体的に行えます
- 避妊以外の副効果もあります↓
対象年齢
初経から閉経まで処方してもらえます。WHOの医学的適応基準では、
- 骨の成長への影響が報告されているため、14歳未満での投与、初経前の投与は基本的に行いません
- 40歳以上を慎重投与とし、閉経以降あるいは50歳以降は投与しない
とされています。
禁忌
- 乳がん患者
- 血栓症関係
- 35歳以上のヘビースモーカー
- 重症高血圧
- 非代償性肝硬変
- 前兆を伴う片頭痛
- 血管病変合併の糖尿病
- 3週間以内の全ての産褥婦や6週間以内の授乳婦
- 妊娠中のヘルペスの既往
- 思春期前の女性、妊婦
副作用
悪心(1.2~29.2%)、乳房痛(0.1~20%)、頭痛・片頭痛(3.4%~15.7%)、下腹部痛(0.1~6.9%)

使用日数や周期が進むと多くは消失します。そのため、2周期ほどはひどくなければ様子を見て、それでも副作用が気になる場合は医師に相談してください。
飲み方
- 基本的には毎日同時刻に服用します
- 服薬遅れ、胃腸障害で低用量ピル(OC)の吸収が悪い時は、効果が減弱し、不正出血が出やすくなります
- 消退出血がないこともありえますが、2カ月消退出血がない場合は妊娠の可能性に注意してください。
飲み忘れへの対処
- 1錠忘れて24時間以内に気づいた場合は速やかに1錠服用して、残りはいつもと同じ時刻に服用してください
- 2錠以上の服用を忘れた場合はなるべく早く1錠服用し、残りの錠剤は予定通りに服用し、かつ7日以上連続して服用するまでコンドームを使用するか、性交渉を避けてください。また、第1週(排卵前で最も危険)に服薬忘れがあり、かつ休薬期間か第1週に性交渉を持った場合には緊急避妊薬を検討してください。第3週に飲み忘れた場合は休薬期間を設けず、次のシートを始めてください。
子宮頸がんのリスクや乳がんのリスクはあるか
長期間使用するとリスクがある可能性があるが、有意差がない(関係ない)とする論文も沢山出ており、あまり関係ないと考えてよさそうです。
妊娠したらすぐに中止し、産後も半年は使用を控える事
非常にまれな副作用ではありますが、静脈血栓症が起きることがあります。その頻度がエストロゲンが多い程上がる為、妊娠中や産後直ぐはエストロゲン値が高い為、控えた方がいいでしょう。
コロナ(COVID-19)の疑いがかかった時は
コロナは血栓を形成する可能性があるため、疑わしい場合は低用量ピル(OC)は一時中止して他の避妊方法を検討してください。
あとがき
本日「オンライン診療に伴う緊急避妊薬の調剤に関する研究会」があり、講習を5時間にわかって受けました。
薬局に来る場合は色々面倒な手順があるので、正直医療機関に直接行くのが一番早く手間が少ないです。

産婦人科の方が、在庫も確実にあると思うので、個人的にもおすすめです。
実際のところ薬局に来るケースはほとんどないのではないかと思いましたが、産婦人科の先生に詳しく講演していただき、大変勉強になりました。
そのうちの一部、先生が講演会で、薬局で患者さんが来た時には伝えてほしいと言われたことを自分自身でも色々調べて補足を加えながら、記事にまとめました。
望まない妊娠、中絶を一人でも減らすために、病院受診を迷っている人の情報源になれたら幸いです。
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