ケレンディア錠は2型糖尿病を合併した慢性腎臓病に適応が通っている、2022年6月に販売開始された比較的新しい薬です。
ケレンディア錠を初めて処方であたって添付文書で見た時、ミネブロ錠やスピロノラクトン錠(アルダクトンA)、エプレレノン錠(セララ)と似ているなと思わなかったでしょうか?
具体的にそれぞれ何がどう違うのか説明できるでしょうか?
私は完全に混同していました。そして職場の医師も混同していました。
この記事ではそれぞれの薬の違いに関してまとめました!
- ケレンディア錠とはどういう薬か
- 類似薬〈ミネブロ錠、ミネブロ錠、スピロノラクトン(アルダクトンA)、エプレレノン(セララ)〉との違い
ケレンディア錠とはどういう薬?
ケレンディア錠とはどういう薬なのかを解説していきます!
まず始めに注意しなければならないのは、この薬はARBやACE阻害剤に上乗せして使用することが基本となっていることです。
添付文書上でも以下のように記載があります。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬による治療が適さない場合を除き、これらの薬剤が投与されている患者に投与すること。
ケレンディア添付文書より引用
レセプト記載のコメント例としては、「忍容性がないため」「K値上昇が懸念されるため」などです。
ケレンディア錠の適応症とは?
冒頭で説明したように、ケレンディア錠は、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病にのみ適応が通っている薬です。※末期腎不全、透析施行中の患者を除く
ケレンディア錠の効果・効能とは?
ケレンディア錠の主成分はフィネレノンです。
フィネレノンは非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬〈MRA〉であり、アンドロゲン、プロゲステロン、エストロゲン及びグルココルチコイドの各受容体には結合しません。
アルドステロンによる細胞内MRの活性化により電解質の貯留・排泄が調節されていますが、MRが過剰活性化すると、腎臓や心血管系において、炎症、線維化、ナトリウム貯留や臓器肥大が生じます。
フィネレノンはMRに結合することで、MRの過剰活性化を抑制する作用があります。
ケレンディア錠はなぜARBやACE阻害剤と併用が基本なの?
2型糖尿病を有する患者において、心血管・腎イベントの発現リスクが上昇する要因の一つに、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の亢進が関与することが知られています。
そのため、ケレンディア錠を上乗せすることで、RAASの最下流にあり、ACE阻害剤やARBで抑制しきれなかったアルドステロン、あるいはアルドステロン非依存的な機序によるMRの過剰活性化を抑制することで、心血管・腎イベントの発症抑制に貢献することが期待されています。
エンレストのようなARNIとの併用でも問題ないようです(メーカー談)
もしも途中でARBやACE阻害剤の併用を中止したら?ケレンディアも中止?
メーカーに確認したところ、「アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンII受容体拮抗薬による治療が適さない」などのレセプトコメントがあれば、ケレンディア単独でも処方可能なようです。
ケレンディア錠の副作用とは?
8.8%の高頻度でおきる可能性が高い副作用は高カリウム血症です。
そのほか頻度の高い副作用として、低血圧、低ナトリウム血症、高尿酸血症、糸球体濾過量の低下、クレアチニン値上昇などが報告されています。
ケレンディア錠の特徴・注意すべきことは?
ケレンディア錠の特徴や副作用に関してまとめました!
併用禁忌薬や疾患は?
CTP3A4で代謝されるため、CYP3A4阻害作用が強い薬とは併用禁忌となっています。
抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗がん剤を服用中の場合は要注意です!
血清カリウム値が高い患者には注意を!
また、ケレンディア錠自体が血清カリウム値を上昇させる副作用があるため、開始時に血清カリウム値が5.5mEq/Lを超えている患者には禁忌となっています。
血清カリウム値が4.8(mEq/L)以上から用量調節が必要な場合があります
肝機能が著しく落ちている患者やアジソン病をもっている患者も禁忌となっています。
腎機能に応じた用量調節が必要!
ケレンディア錠は、腎機能に応じた用量調節が必要です。
腎機能の評価(eGFR) | ケレンディア錠の用量 |
60mL/min/1.73m2以上 | 20mg |
60mL/min/1.73m2未満 | 10mgから投与を開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量する。 |
10mgを2錠で用いてはならない!
また、10mgを2錠と20mgを1錠では生物学的同等性が認められていません。
参考資料
ケレンディア錠との類似薬〈ミネブロ錠、スピロノラクトン錠(アルダクトンA)、エプレレノン錠(セララ)〉との違いを解説!
ケレンディア錠と類似薬〈ミネブロ錠、スピロノラクトン(アルダクトンA)、エプレレノン(セララ)〉との違いに関してまとめました!
ミネラルコルチコイドとは?アルドステロンと何が違うの?
ミネラルコルチコイドは、腎尿細管において体液中の電解質のうちナトリウムの再吸収を促進し、カリウムの排泄を増加させる働きがあります。電解質のバランスを調節するため、電解質コルチコイドとも呼ばれています。
副腎(腎臓の上にある小さな臓器)から分泌されるホルモンで、水分や塩分の調整を行う働きがありますが、過剰になると高血圧を引き起こします。
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)とは?
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、上記で説明した、アルドステロンの働きを阻害する薬です。
MRAは、尿細管などにおけるアルドステロンの働きを阻害し、血圧を下げる作用をもちます。
また、心臓の肥大、腎機能の低下などに関わるアルドステロンの働きを抑えるため、高血圧症以外にも、慢性心不全、糖尿病性腎症の治療に使われています。
すべてに共通する注意点、副作用とは?
高カリウム血症になりやすいため、注意が必要です。
カリウム値の観点からも、避けた方がよいでしょう。
類似薬の比較表を作成!適応症、作用機序、効果、特徴の違いを比べてみた
以下にそれぞれの骨格、適応症、特徴をまとめました。
世代 | 骨格 | 薬剤名 | 適応症 | 特徴 |
第一世代 | ステロイド骨格 | スピロノラクトン(アルダクトンA) | ・高血圧症 ・さまざまな浮腫 ・原発性アルドステロン症の診断および症状の改善 | ・ミネラルコルチコイド選択性が低く、用量依存的に内分泌系の副作用(女性化乳房や薬剤性ED)のリスクがある ・腎機能障害にも投与可能 ・利尿作用あり ・消失半減期12時間 |
第2世代 | ステロイド骨格 | エプレレノン(セララ) | ・高血圧症 ・慢性心不全 | ・ミネラルコルチコイド選択性が高く、内分泌系の副作用が少ない ・糖尿病性腎症、中等度腎機能障害に禁忌 ・利尿作用あり ・消失半減期3~5時間 |
第3世代 | 非ステロイド骨格 | エキセメスタン(ミネブロ) | ・高血圧症 | ・ミネラルコルチコイド選択性が高く、内分泌系の副作用が少ない ・高度腎障害にも投与可能(慎重投与) ・利尿作用ほぼなし ・消失半減期約19時間 |
第3世代 | 非ステロイド骨格 | フィネレノン(ケレンディア) | ・2型糖尿病を伴う慢性腎臓病 | ・ミネラルコルチコイド選択性が高く、内分泌系の副作用が少ない ・降圧作用、利尿作用はほぼない ・高度腎障害に投与可能(慎重投与) ・消失半減期約2時間 |
比べてみると、それぞれ一長一短があることがわかりますね。
ケレンディア錠の類似薬の使い分け!どのような時にどの薬が使われる?
比較表をみて気づいた人もいるかと思いますが、治療の目的と持っている疾患によって使える薬剤が変わってきます。
治療目的 | 使用できる薬 | 更なる条件 |
高血圧 | スピロノラクトン(アルダクトンA)、エプレレノン(セララ)、エキセメスタン(ミネブロ) | ・糖尿病性腎症がある場合、腎障害がある場合はエプレレノン(セララ)は不可 ・内分泌系の副作用が気になる場合はスピロノラクトン(アルダクトンA)は不可 |
心不全 | スピロノラクトン(アルダクトンA)、エプレレノン(セララ) | ・糖尿病性腎症がある場合、腎障害がある場合はエプレレノン(セララ)は不可 ・内分泌系の副作用が気になる場合はスピロノラクトン(アルダクトンA)は不可 |
糖尿病性腎症 | フィネレノン(ケレンディア) |
通常用量で比べた価格は、先発品のみしかないケレンディアとミネブロが高価となっています。
※後発品があるものは後発品の価格を掲載しました。
- スピロノラクトンは内分泌系のある人には使いにくく、エプレレノンは糖尿病性腎症や中等度以上の腎障害がある人には使いにくいようです。
- ミネブロは利尿作用がほぼなく(メーカーによると100倍量を用いれば出るらしいですが…)、心不全には使用できません。
- ケレンディアにはほとんど利尿作用、降圧作用はないため、早期糖尿病で予後が長く、腎障害になるリスクが高い糖尿病性腎症の人に使用されていくのではないかと思われます。
おわりに
今回はミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)に関してかなり深堀して調べてみました。
似ているけど何が違うのか、調べてすっきりしました。
ほかの人にも参考になれば幸いです。
薬の違い、比較、使い分けなどをもっと知りたい方にはこちらの書籍がおすすめです↓
4180円(税込み)※2024.2現在
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