小児の風邪でよく処方されるホクナリンテープ(ツロブテロール)は咳止めなのでしょうか?
小児科を受診し、風邪症状がある場合にあまりにも頻繁に処方されるため、風邪薬だと思っている人も多いでしょう。
最近は咳止めとして知られるメジコンやフスコデや痰切りが出荷調整の影響で手に入りにくくなっています。
そのため、大人の風邪による咳に対してもホクナリンテープ(ツロブテロール)が処方されることが増えてきています。
この記事ではホクナリンテープ(ツロブテロール)が風邪による咳に効果があるのかどうかに関して調べました。
使用方法に関してもまとめました!
- ホクナリンテープ(ツロブテロール)はどういう薬か
- ホクナリンテープ(ツロブテロール)の効果・効能とは?
- ホクナリンテープ(ツロブテロール)の使用方法とは?
- 咳の種類とは?
- ホクナリンテープ(ツロブテロール)は風邪の咳にも効果がある?
ホクナリンテープ(ツロブテロール)とはどういう薬?
ホクナリンテープ(ツロブテロール)とはどういう作用で使い方にはどのような注意が必要な薬なのでしょうか?
交感神経のβ2受容体を刺激することで、収縮した平滑筋の緊張をゆるめ、せまくなっている気管支を広げます。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)は、皮膚から有効成分が少しずつ身体に吸収され、血液中の濃度がゆっくり上がるようにつくられているため、8~12時間後に濃度がいちばん高くなります。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)の適応症、効果・効能とは?
気管支喘息、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫の気道閉塞性障害に基づく呼吸困難など諸症状の緩解が効果となっています。
さらに、気管支喘息に関しては、以下のようにはっきりと記載されています。
吸入ステロイド剤等により症状の改善が得られない場合、あるいは患者の重症度から吸入ステロイド剤等との併用による治療が適切と判断された場合にのみ、本剤と吸入ステロイド剤等を併用して使用すること。
ホクナリンテープ添付文書
詳しくは後述しますが、この適応からもわかるように、単なる風邪による咳を抑える薬ではありません。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)の用法用量は?
1日1回、胸部、背部又は上腕部のいずれかに以下の用量のテープを貼ります。
年齢 | 用量 |
成人 | 2mg |
小児(0.5~3才未満) | 0.5mg |
小児(3~9才未満) | 1mg |
小児(9才以上) | 2mg |
ホクナリンテープ(ツロブテロール)で動悸が出る?副作用とは?
ホクナリンテープ(ツロブテロール)でおきる頻度が高い副作用として、動悸、頭痛、震え、ふらつきなどが報告されています。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)は前述したように、交感神経のβ2受容体を刺激することで気管支を広げる薬ですが、完全に気管支のみに効かせるのは難しく、他の部位に効いてしまうと副作用として症状が現れてしまいます。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)の使用方法の注意点!
ホクナリンテープ(ツロブテロール)は、有効成分であるツロブテロールが「結晶レジボアシステム」と呼ばれるメカニズムによってテープから皮膚へ少しずつ放出されることで、24時間ゆっくりと効果が持続します。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)がはがれた!新しいのを貼ってもいい?
ホクナリンテープ(ツロブテロール)が剝がれてしまった場合は、もう一度同じものを貼ることはできません。
少し剥がれただけであれば、絆創膏で補強しても問題ありません。
一度剥がれると、角質などの付着により粘着力が低下するためであるとメーカーによる患者向け説明書にも記載があります。
では新しいものを貼る必要があるのでしょうか?
貼付してから12時間後に剥がれた場合は?
貼付してから12時間後に剥がれた場合は、通常、再び貼り直す必要はありません。
理由は以下の資料を参考にしています↓
ホクナリンテープを貼付した12時間後には、約74%の薬物が皮膚へ移行していることが報告されている。健常成人に24時間貼付した場合の薬物の皮膚移行率が82~90%であることからすれば、貼付12時間後の皮膚移行は24時間貼付時の約85%に相当すると考えられる。
ホクナリンテープが剥がれた場合の対処法|DIクイズ
それでは、12時間未満に剥がれてしまった場合は?
仮に3、6、9時間後に貼り直しても、血中濃度が上がり過ぎることはなく、副作用が顕著に増加するとは考えにくいです。再度貼り直しても差し支えないでしょう。
理由は以下の資料を参考にしています。↓
ホクナリンテープ2mgを、貼付してから3、6、9、12時間後に新しい物を再貼付した場合の血清中濃度シミュレーション結果(成人)では、再貼付後の血中濃度はいずれの場合も、最高でも再貼付しない場合の1.3倍以下で、ホクナリン錠を経口投与した場合の最高血中濃度の2/3以下にとどまった。
また、小児にホクナリンドライシロップ0.02mg/kgを単回経口投与した場合の最高血中濃度は4.5ng/mLであるのに対し、ホクナリンテープ1mgを貼付した場合の最高血中濃度は1.3ng/mLである。
ホクナリンテープが剥がれた場合の対処法|DIクイズ
ホクナリンテープ(ツロブテロール)はどこに貼る?背中?毎回同じ場所はだめ?
胸・背中・上腕のいずれかに使用します。
同じところにつづけて貼ると、かゆくなったり、かぶれたりすることがあるため、新しいテープに貼りかえるときは、同じところを避けて貼ってください。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)をしたままお風呂やプールに入ってもいいの?
お風呂やプールに入る時にテープをはがす必要はありません。
あらかじめ刺激の少ない絆創膏等で固定していただくとはがれにくくなります。
咳(咳嗽:がいそう)にも色々ある!咳の種類とは?
咳は外からの異物に対する防御反応です。
肺や気管などの呼吸器を守るために、外から入ってきたほこり、煙、風邪のウイルスなどの異物を気道から取り除こうとする生体防御反応が咳(咳嗽:がいそう)です。
咳にはまた、気道にたまった痰を外に排出する役割もあります。
咳(咳嗽:がいそう)は、風邪によるものから、アレルギー性のもの、肺がんなど重い病気があるものまでさまざまです。
原因となる病気にかかってから3週間以内に収まる咳(せき)を急性咳嗽と呼び、3週間以上続くものを遷延性咳嗽、そして8週間以上を慢性咳嗽と呼んでいます。
咳(咳嗽:がいそう)の種類は「3週間」が分類の目安
以下に咳(咳嗽:がいそう)の種類をまとめました。
期間 | 原因 | |
急性咳嗽 | 3週間未満 | 風邪、インフルエンザ、急性気管支炎など |
遷延性咳嗽 | 3週間以上 | 喘息、COPD、咳喘息、アトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群、胃食道逆流症、慢性気管支炎など |
ホクナリンテープ(ツロブテロール)は咳止め?風邪の咳にも使用できる?
上記で説明したように、風邪の咳は3週間以内におさまる咳のことを言います。
結論から言いますと、のどの炎症や、単なる生体防御反応の咳には効果がないと考えられます。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)は喘息、咳喘息、気管支炎の咳には効果あり
もともと気管支炎になりやすかったり、咳喘息や気管支喘息などを過去に診断されている、気管支の炎症が原因でおこる咳の場合には、ホクナリンテープ(ツロブテロール)を用いて、気管支を広げることで効果を発揮する可能性が高いです。
気管支の炎症が原因で痰がでている場合も、効果があるでしょう。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)を「咳止め」と表現しない!
医療機関や薬局で、「咳を止めるお薬です」と説明されていることも多く、そのような誤解が生じているようです。
しかし前述したように、ホクナリンテープ(ツロブテロール)は気管支を広げる薬であり、鼻水がのどに入ることによる咳や、のどの炎症からくる咳、単なる生体防御反応の咳には効果がない可能性が高いでしょう。
尚且つ、効果発現までに4時間程度かかります。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)は「咳止め」ではない!クリニックからも注意喚起が出ている
気管支拡張薬は風邪薬ではないとはっきりコメントされているクリニックのHPを以下にいくつか集めてみました。
クリニックHP 参考URL
これらのクリニックのHP記載内容に、咳止めとして気管支拡張剤が効くかどうか調べた論文を読まれた方の記載がありました。
原著論文は発見できませんでしたが、それらの論文では咳止めとして気管支拡張剤を処方すると咳止め効果は認められず、薬の副作用が認められたとのことです。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)に関するそのほかの疑問に答えます!
患者さんによく聞かれる質問、自分自身でも疑問に思い調べたことがある質問をまとめました!
ホクナリンテープ(ツロブテロール)0.5mg2枚で1mgと同じ?
ホクナリンテープ(ツロブテロール)0.5mgを2枚と1mg1枚は同等と考えて問題ありません。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)1mgを2枚と2㎎1枚も同等です。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)を切ってもいい?
メーカーは推奨していませんが、半分に切断してもよいと考えている薬剤師や薬剤部が多いです。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)の構造はマトリックス型といわれる構造で、マトリックス層の面積と薬剤放出量が比例するため、理論上は切断して使用できる場合が多いです。
しかし切断すると剥がれやすくなることが多く、適切な使用のためには患者に安易に勧めることは控えたほうがよいでしょう。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)は市販で購入可能?
市販では2024.3現在、ドラッグスストア等では販売されていません。
医師の処方が必要な医療用医薬品になります。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)で頭痛、吐き気が出ることはある?
副作用のところでもふれましたが、動悸、頭痛、震え、ふらつき、吐き気などが報告されています。
ホクナリンテープの作用が気管支だけでなく、他の部位に効いてしまうと副作用として症状が現れてしまいます。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)でかぶれた場合のおすすめの塗り薬は?
軽度のかぶれの場合は、場所をずらし、保湿剤をぬっておけば問題ないでしょう。
しかしかぶれがひどい場合は、主治医に相談、もしくはステロイドの塗り薬を市販で購入して使用してもよいでしょう。
ステロイドには強さのランクがあります。心配な場合は、弱いステロイドから使用して様子をみたほうがよいでしょう。
少しだけ以下にステロイド軟こうを紹介しました。
2週間をこえても改善しない場合は、漫然と薬を使用せず、主治医に相談しましょう。
弱めのステロイド軟こう
518円(税込み)2024.3現在
少し強めのステロイド軟こう
980円(税込み)2024.3現在
強めのステロイド軟こう
1100円(税込み)2024.3現在
ホクナリンテープ(ツロブテロール)は赤ちゃんから大人まで使える?
適応症のところでも記載しましたが、6カ月から高齢者まで使用することが可能です。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)を貼ったまま運動してもいい?
ホクナリンテープ(ツロブテロール)を貼ったまま運動しても問題ありません。
ホクナリンテープ(ツロブテロール)とメプチンエアーとの違いは?
メプチンエアーとホクナリンテープ(ツロブテロール)はともに交感神経興奮薬であり、気管支を広げる作用があります。
両者は作用時間に大きな違いがあります。
メプチンエアー | 速やかに効果が期待できるが、持続性に乏しい |
ホクナリンテープ(ツロブテロール) | 十分な効果がでるまでに時間がかかるが、効果は長い時間持続する |
まとめ
ホクナリンテープもメプチンエアー同様に、咳止めの出荷調整の影響や、以前からの慣習で風邪の咳に処方されるケースが多々あります。
しかし調べてみても、やはり単なる風邪の咳止めには効果がないと考えられます。
安易に連続して処方されている場合は、本当に喘息などの気管支に関する病気をもっているのかどうか確認してみたほうがよいかもしれません。
慢性咳嗽の治療薬であるリフヌアに関する記事はこちら↓
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