薬局で薬をもらうときに「グレープフルーツジュースを飲まないでください」と言われたことはありませんか?
なぜダメなのか?どのくらいなら食べても問題ないか?などに関してわかりやすく説明したいと思います。
グレープフルーツジュース(GFJ)の何の成分が薬に影響しているのか

問題となるのは、ベルガモチンやジヒドロキシベルガモチンなどのフラノクマリン類であると言われています。
特にグレープフルーツジュース(GFJ)の中に多く含まれていると言われているため、重点的にグレープフルーツジュースに関して注意喚起を行っています。
生のグレープフルーツだったらいい?どこの場所が危ない?
フマノクマリン類の含量は果皮>果肉>種の順になっていることが報告されています 。
そのため、果皮で作ったマーマレードなどでも注意が必要という意見もあるようです。
他の柑橘系は食べても問題ないか?
グレープフルーツ以外の柑橘類、例えば、ぶんたん (ポメロ) 、オロブランコ、ダイダイ (サワーオレンジ)、スィーティー 、夏みかん 、ポンカン 、いよかん 、絹皮 、金柑 、八朔にも含まれています。
しかし果物や柑橘類の中で、バレンシアオレンジ 、レモン 、カボス、マンダリンオレンジ、温州ミカン(日本のスーパーで一番売られているみかん)、オレンジ、りんご、ぶどうにはフラノクマリン類は検出されていません
つまり、日本で普通に暮らしている場合はグレープフルーツとぶんたん、ダイダイ、いよかん、八朔くらいまで食べ過ぎないように気をつけておけば問題ないでしょう(金柑はそんなに多くの量を取らないと思うので…)。
さらに詳しい情報を知りたい方はこちらサイトを参考にしてください。専門的な知識が多く含まれますが、とても詳しく載っています。→国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報
どういった相互作用を起こしているか。大体どのくらいの影響が出ているのか。

グレープフルーツの影響は、CYP3A4で代謝を受ける薬物で認められています。
その他P-gp阻害、OATPs阻害、MRP2阻害も関与していると言われているそうですが、その相互作用の程度は今だはっきりとした研究結果は報告されていないため、今回はあまり影響が高くないと考え、割愛したいと思います。

P-gp、OATPs、MRP2は身体の中に薬を運ぶたんぱく質のことです。
ちょっと難しいので、あまり気にしなくて大丈夫です。
CYP3A4とは何か。 グレープフルーツジュース(GFJ) とどういう関係があるか。
シトクロムP450 3A4 (CYP3A4) はシトクロムP450 (CYP) の分子種の一種であり、人体に存在する生体異物を代謝する酵素の主要なものの1つである。CYPによる酸化反応では寄与する範囲が最も広い。また、肝臓に存在するCYPのうちの大部分を占める。
Wikipedia
簡単に言うと、 CYP3A4とは、体の中に入った医薬品を体で無毒化する際に関与する、とても代表的な酵素です。
この酵素が グレープフルーツジュース(GFJ) によって阻害されてしまうと、薬の無毒化がうまくいかず、時間がかかり、血中濃度が上がり、効きすぎてしまいます。
どのくらいの相互作用、影響があるのか。
中等度~強い阻害作用と言われています。

因みに実はクラリスロマイシン(抗生剤の一種)などもCYP3A4阻害作用が強く、GFJよりも実は注意が必要です。(あまり知らない先生が多く、別の医療機関で出ている事があるので注意が必要です)
CYP3A4の阻害作用を強く受ける薬と受けない薬がある為、一概に2倍効果が強くなります、3倍強くなりますと言い切れないのが難しい所です。
またグレープフルーツジュースは薬と違い、飲んだジュースにどのくらいフマノクマリンが含まれているのかわからない、同じジュースによっても含まれている量が違うなどの問題もあるので、一概にこのくらい影響がありますと言えない難しさもあります。
例えばどんな薬と相互作用を起こしやすいか。

代表的な薬をピックアップして調べてまとめてみました。
特に注意が必要な薬
- タクロリムス(プログラフ):血中濃度3倍に上昇、頭痛、下痢
- スタチン系の高脂血症治療薬:シンバスタチン(リポバス)で血中濃度10倍、アトルバスタチン(リピトール)では血中濃度2.5倍
個人的にはこの2つはかなり注意が必要と考えていますが、禁忌には該当していないため、注意が漏れていることもあると思います。(なぜ禁忌に入れないのか不思議なくらいですが…)
まあまあ注意が必要な薬
- Ca拮抗薬(特にジヒドロピリジン系)の高血圧治療薬 :ニフェジピン(アダラート)、二ソルジピン(バイミカード)、フェロジピン(ムノバール)、ニトレンジピン(バイロテンシン)、ニカルジピン(ペルジピン)、アゼルニジピン(カルブロック)などでは血中濃度が34%上昇
- トルバブタン(サムスカ):血中濃度1.6倍、最高血中濃度1.9倍上昇
- トリアゾラム(ハルシオン):血中濃度1.5倍、最高血中濃度1.3倍上昇
どの程度の影響か定かではないが控えた方がいい薬
- イマチニブ(グリベック)、ナルフラフィン(レミッチ)、シクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)、ボセンタン(トラクリア)、シナカルセト(レグパラ)、ゲフィチニブ(イレッサ)、ロラタジン(クラリチン)、エレトリプタン(レルパックス)、クエチアピン(セロクエル)、ペロスピロン(ルーラン)、シロスタゾール(プレタール)、エルゴタミン製剤、スボレキサント(ベルソムラ)等
参考書籍:薬の相互作用としくみ
とても分厚い書籍で、様々な相互作用に関するデータが細かく載っています。辞書のような存在です。
これ以外にも把握できていない薬があると思うので、薬局で必ずよく見てもらってください。
この記事で全ては把握しきれていないため、気になる場合は必ず薬剤師に相談してください。
添付文書や、わからなければメーカーに問い合わせて調べてくれると思います。
CYP3A4はかなりの薬に関係する酵素なので、全く影響のない薬も少ないと思います。
全く影響をなくそうとするのは難しく、グレープフルーツジュース以外でもCYP3A4阻害作用のある薬は沢山あります。 グレープフルーツジュース のみを警戒しても仕方がないかなと思います。
薬剤師や医師から特に注意が必要とは言われなかった場合は、そこまで神経質になる必要はないでしょう。
1種類の薬では問題ない場合でも、何種類かこれらの薬が組み3A4 と想像以上に血中濃度が上がってしまうこともある。
大体の相互作用のデータは2剤で行っているため、3剤以上になるとどのような影響が出るのかまでは正確に把握できていません。
複数の薬を飲んでいる方は、出来ればグレープフルーツジュースを控えた方が無難でしょう。
どのくらいの時間を空ければいいか

相互作用を起こす薬とは時間を置けば大丈夫なんでしょう?という声を患者さんからよく頂くのですが…
グレープフルーツの影響は、一般的に摂取後24時間程度に及ぶといわれています。グレープフルーツと服用する薬が相互作用の影響を受ける時間はそれぞれの薬によって異なります。長いものでは2~4日程度持続するものもあります。
したがって、グレープフルーツと飲み合わせの悪い薬を服用している間はグレープフルーツの摂取は避けましょう。
2.グレープフルーツの摂取量が少量なら大丈夫?
グレープフルーツの摂取量が多いほど、グレープフルーツとの飲み合わせのよくない薬の作用は強まります。しかし、薬に影響を与えるCYP3A4の力をおさえる成分の含有量は、グレープフルーツの銘柄間でかなりの変動があると考えられており、グレープフルーツの産地・収穫時期の違いなどで、大きく相違する可能性があるといわれています。
グレープフルーツを摂取する時点で、薬に影響を与えるCYP3A4の力をおさえる成分の含有量を推測するのはとても困難なのです。したがってグレープフルーツ摂取量にかかわらず、グレープフルーツと飲み合わせの悪い薬を服用している間はグレープフルーツの摂取は避けましょう。
土屋総合病院のHP
残念なことに時間を空けたら大丈夫というデータはない
グレープフルーツジュースや グレープフルーツ好きの方には大変申し上げにくいのですが、いつなら大丈夫というデータはありません。

出来れば控えていただきたいというのが本音です。
うっかり知らなくて飲んでしまった。問題ないか心配…

数回程度、少量飲んでしまった分には問題ないと思います。阻害作用は摂取量に影響されるからです。
完全に個人的な見解になりますが…
少量くらいであればさほど問題にはならないと思います。
薬のように毎日飲んでいる、食べているという状態であれば止めた方がいいでしょう。
また、免疫抑制剤、抗がん剤など元々の作用が強いものは、作用が強くなると副作用が出る危険性があるので、注意が必要だと思います。
高齢者は、もともと薬が通常よりも強く効いている可能性が高い(腎機能の低下や脂肪が多くなる為)ので、なるべくグレープフルーツジュースは控えた方がいいでしょう。
今のところグレープフルーツジュースのせいで具合が悪くなった人には会ったことはない
私自身の狭い経験になってしまいますが、グレープフルーツジュースのせいで薬が効きすぎて調子が悪くなった方には会ったことはありません。
「グレープフルーツジュースを飲んではいけないことを知らなくて好きで結構飲んでいた」と後からショックを受けていた患者さんもいましたが、特に検査値の数値は問題ありませんでした。
控えた方が無難だけれど、薬のように朝、昼、晩毎日大量にとる人も少ないと思うので、たまにだったらいいのかな?というのが私の見解です。
補足)薬をもっと効かせたい!グレープフルーツジュースを飲んだらいい?
以前勉強会で、この実験をしようとした医師がいるという話を聞いたことがありますが、止めておいた方がいいと思います。
何故ならグレープフルーツは一つずつフマノクマリンの含有量が違い、種類によっても含有量が異なるからです。
グレープフルーツジュースも同様です。
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