「不眠」で悩んでいる方はたくさんいるでしょう。
「不眠」で疲労がたまるだけでなく、血糖値が乱れることもあり、糖尿病のひとは困ってしまいますよね。
- 「不眠」の基礎知識
- 糖尿病と「不眠」の関係
- 「不眠」の改善方法
- 眠剤の種類と違い
- 「不眠」に効果のある漢方
不眠とはどういう状態?原因とは?
「不眠」とは睡眠障害ともよばれます。
「不眠」のタイプによって主に4つに分類されます。
- 入眠困難
- 熟眠障害
- 中途覚醒
- 早期覚醒
夜眠れなくても、日中に何の問題も生じない場合は、「不眠」とは言いません。
ただ睡眠時間が短いだけです。
夜眠れないことで、日中に眠気に襲われたり、集中力が低下したり、疲れが出てしまうようなら、「不眠」です。
不眠と糖尿病の関係は?血糖が乱れる?
「不眠」だと何となく体によくなさそうだな…とは直感的に思いますよね?
では実際に「不眠」は糖尿病に悪影響を与えるのでしょうか?
見ていきましょう!
糖尿病とはどういう状態?原因は?
糖尿病はインスリンの作用不足によって起きる、慢性的な高血糖状態を起こす代謝疾患です。
成因によって1型糖尿病と2型糖尿病の大きく2つに分けられます。
1型糖尿病とは?
膵臓でインスリンを作る細胞が壊れてしまうため、インスリンが膵臓からほとんど出なくなり、血糖値が高くなります。原因として以下の2つが考えられています。急激に進行するものもあれば、ゆっくりと進行するものもあります。
- 自己免疫性(免疫系が自分のからだの成分を攻撃する)
- 特発性(原因不明)
2型糖尿病とは?
インスリンの分泌が低下したり、効きにくくなることで血糖値が高くなります。
遺伝的な影響や、食べ過ぎ、運動不足、肥満などの環境的な影響があるといわれており、糖尿病全体の割合の中で90-95%が2型糖尿病です。
糖尿病の代表的な症状は?
高血糖によって起きる代表的な症状としては、口喝、多飲、多尿です。
糖尿病だと不眠になりやすくなる?
糖尿病により、高血糖状態が持続すると、夜間の頻尿や喉の渇きが生じ、眠りを妨げることがあります。
また、糖尿病に伴う神経障害(神経症状)は、足のしびれや痛みを引き起こし、就寝時の快適さや眠りの質に悪影響を及ぼすことがあります。
さらに、糖尿病患者さんは血糖コントロールのためにインスリンや薬物を使用することがありますが、これらの治療は低血糖(低血糖症)を引き起こす可能性があります。
薬の効きすぎによる低血糖症は夜間に起こる場合があり、悪夢や夜間覚醒を引き起こすことがあります。
不眠だと血糖値があげたり、太る原因になる?
「不眠」は糖尿病にさまざまな影響を及ぼします。
睡眠不足になると交感神経が刺激され、血糖値をあげるホルモンが増え、インスリン抵抗性が高まると報告されています。
また、「不眠」により、食欲を抑制するホルモンであるレプチンが減少し、食欲を刺激するホルモンであるグレリンが増加することで、食欲が増進するという研究結果もあります。
糖尿病は不眠を起こしやすいし、不眠はさらに糖尿病を悪化させてしまう。避けたいループですね…。
不眠の改善に、まずは生活を見直そう!改善策を教えます!
「不眠」になるとすぐに睡眠薬…と思ってしまう方も多いとは思いますが、まずは薬に頼るのではなく、生活上の改善を図ることが大切です。
以下に改善策を上げてみました。
- 寝る4時間前からお茶やコーヒーなどのカフェイン接種を避ける
- 覚醒作用があるタバコは、寝る前に吸わない
- 寝る前にお酒を飲まない。アルコールは寝つきを良くはしても、睡眠の質を下げ中途覚醒を招く
- 朝や日中に運動する
- 寝る2時間前までにぬるめのお湯で入浴する
- 午前中に光を浴びる、散歩、庭いじりなどがおすすめだが、外に出ずともカーテンを開け窓辺で日光を浴びるだけでも効果がある
- 昼寝は30分までとする。昼寝の直前にカフェインをとっておくと、短時間で目覚めやすい。
- 夜更かしをしないで生活のリズムを保つ
- 早起きより「早寝早起き」を目指し、30~60分早く起きることから始める
- 寝る前は、テレビやスマホのブルーライトを避ける。時間をスマホで確認しないで済むように枕元に時計をおく
- ベッドは寝るためだけに使い、入床後の睡眠の動機付けを高める。眠たくなったらベッドへ行き、眠れないときはベッドから出る。
不眠に処方される西洋薬とは?依存性はない?
「不眠」といったら眠剤のイメージがあると思います。
ただ、一般の方が眠剤と思っているものも実は何種類かに分かれていることをご存じですか?
これからその特徴に関してご説明したいと思います!
ベンゾジアゼピン系の眠剤
一番古くからある薬で、眠剤と言われてイメージするものに一番近いお薬です。
30日の処方日数制限のあるものが多いです。※一部例外あり
作用時間の長さによって、4つの型に分けられます。
- 「超短時間型」
- 「短時間作用型」
- 「中間作用型」
- 「長時間作用型」
つい10年ほど前まではどの科の医師でも処方することができ、長時間型と短時間型の両方を処方したりと濫用されていました。
短時間型で比較的安全性の高い眠剤であっても、医師は以前に比べて慎重に処方し、長期にわたって漫然と使用しないように注意喚起を行うようになっています。
医師によっては、どんなに頼んでも処方してくれません。
体内リズムを整える薬
ラメルテオン(商品名:ロゼレム)は、2010年に発売された、メラトニン受容体作動薬に分類される新しい睡眠薬になります。
新しいと言っても、13年も発売から経っています。
先ほど説明したベンゾジアゼピン系の眠剤が「疲れきって眠ってしまうとき」に近い状態を作り出し、強引さのある薬であるのに対し、ラメルテオン(商品名:ロゼレム)は、本来の眠気を強める形ですので、効果が人によっても異なります。
覚醒を抑える薬
「スボレキサント(商品名:ベルソムラ)」と「レンボレキサント(商品名:デエビゴ)」のどちらも オレキシン受容体拮抗薬と言われる薬です。
「スボレキサント(商品名:ベルソムラ)」、「レンボレキサント(商品名:デエビゴ)」の作用メカニズムには、”オレキシン”という覚醒に関係する物質が大きく関係しています。
しかしオレキシン神経活動が高く維持されすぎると、覚醒システムが過剰に働き、「不眠」を引き起こしやすくなると考えられています。
「スボレキサント(商品名:ベルソムラ)」、「レンボレキサント(商品名:デエビゴ)」 はこのオレキシンの受容体に働き、オレキシンの働きをブロックし、覚醒物質を抑え、睡眠状態にスイッチさせることで睡眠作用をもたらします。
毎日服用することで効果が出ます。
ベンゾジアゼピン系の眠剤とベルソムラやデエビゴの違いをもっと知りたい方はこちら↓
不眠に効果がある漢方とは
「不眠」に効果がある漢方はあるのでしょうか?
見ていきましょう!
※価格は変動することがあるため参考程度にご覧ください。
酸棗仁湯(サンソウニントウ)
体力が低下して、心身が疲労している人の「不眠」の改善によく用いられるます。
「不眠」のタイプとしては、特に覚醒と睡眠のリズムが乱れて、夜間目が冴えて眠れない、夢見が多い、熟睡感がないといった症状があるような場合に適します。
現代でも、慢性疲労や「不眠」、高齢者のせん妄にも効果があったことが報告されています。
あまり一般では販売されていないようで、発見できたのはこちらだけでした。
3800円(税込み)※2024.3時点になります。
加味帰脾湯(カミキヒトウ)
「加味帰脾湯」は、体力が低下して眠りが浅い、高齢化によって眠りが浅くなったなど、明け方に目が覚める、熟眠感が得られない方にお勧めの漢方です。
「加味帰脾湯」は、胃腸機能を高めて栄養の吸収をよくする生薬を中心とした14種の生薬で構成され、疲れやすい方の「不眠」を改善します。
2898円(税込み)※2024.3時点です。
抑肝散(ヨクカンサン)
1996円(税込み)※2024.3時点です。
参考資料
参考にした書籍、文献、サイトなどをご紹介します。
おすすめ度は5段階評価で★~★★★★★までで表現しています。
参考書籍
参考にした書籍をご紹介します。
教養としての精神医学
おすすめ度 ★★★★★
精神病の理解を深めるために筑波大学の松崎朝樹先生が書かれた書籍です。
とても視点が優しく、精神疾患の患者さんの特徴が描写されており、わかっていたつもりでいた医療従事者の私でも、新しい視点と知識を与えてもらいました。
Youtubeでもご活躍されているので、気になった方はぜひ調べてみてください。
薬剤師のための精神科の薬
おすすめ度★★★★★
精神科の薬は難しいイメージがあり、どの病気にどれを使っているのか、医師の処方意図がわからずに困っていました。
Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬
おすすめ度 ★★★★★
生薬の効果・効能まで分解して、漢方の作用をわかりやすく説明しています。
NHKきょうの健康 漢方薬事典 改訂版
おすすめ度 ★★★★
ツムラのHPで公式に引用されたりしている書籍です。
症状別と漢方別に薬効が解説されており、わかりやすいです。
糖尿病治療ガイド
おすすめ度 ★★★
糖尿病の基本的なことを学ぶことができます。
専門医以外の医師やコメディカル向けの書籍です。
参考文献
まとめ
今回は「不眠」、糖尿病、漢方に焦点をあてて調べてみました。
「不眠」を改善して、健康な生活を送りましょう!
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