エンシュアリキッドはどういう薬か

栄養が不足しているが腸をまだ使うことができる状態の方に処方される、 経腸栄養剤という種類の医療用の栄養剤です。 半消化態栄養剤で食事量で足りない分を補います。
1日に1,500~2,250 mL(1,500~2,250 kcal)を大体補給します。

食事がとれている場合はこれよりも量を減らします。
エンシュアリキッドのみで栄養を補給する場合は、全体的にNaが不足する傾向にある為、定期的に確認することが必要です。

血液検査を定期的に行っていれば、心配しなくても大丈夫です。
どういった会社が作っているか。3つ種類があります。
アボット社が作っています。エンシュア以外では診断薬などの開発を行っている会社で、エンシュアに関しては30年以上の実績があります。
エンシュアは経口、経鼻、経腸など様々な経路での投与が可能です。
アボット社の経腸栄養剤には3種類あります。
今まで長いこと2種類(エンシュアリキッドとエンシュアH)だったのですが、ここ最近より現代人の体に合った栄養を補給できるエネーボが追加になりました。
3種類の違いとしてはカロリーや栄養構成、粘度などが異なります。
カロリーや栄養分の違いは?味の種類は?
エンシュア・リキッド
カロリー:1kcal/1ml 250Kcal/本
味:バニラ、コーヒー、ストロベリー
構成比:炭水化物:たんぱく:脂質=34.3g : 8.8g: 8.8g
塩分量:0.51g/1本(250ml)
添付文書上、唯一腎不全末期に対して禁忌になっていません。
エンシュア・H
カロリー:1.5kcal/1ml 375Kcal/本
味:バニラ、コーヒー、ストロベリー、バナナ、黒糖、メロン、抹茶
構成比:炭水化物:たんぱく:脂質= 51.5g: 13.2g: 13.2g
塩分量:0.76g/1本(250ml)
エンシュア・リキッドのカロリー1.5倍バージョン。
カロリーだけでなく、ビタミンや微量元素等も全て1.5倍。
エネーボ
カロリー:1.2kcal/1ml 300Kcal/本
味:バニラ
構成比:炭水化物:たんぱく:脂質=53 : 18 : 29
塩分量:0.586g/1本(250ml)
エンシュアに含まれていなかったカルニチン、モリブデン、セレン、クロムを含有しています。
これらはエンシュア時代に欠乏症がみられたものです。その他微量元素やビタミンも増減があり、厚生労働省策定 2010年度版 日本人の食事摂取基準をもとに設計されおり、エンシュアより今の時代にあっていると考えられます。
特に高齢者で骨粗鬆症や骨折が多くみられていることから、ビタミンDを増量していています。
欠点は、粘度が高く、エンシュアと比べるとややライン詰まりが多いことです。
※添付文書、インタビューフォームをもとに作成
人気の味は?
コーヒー、バニラが人気です。
特にバニラは別のものに混ぜて使用することができる為、人気があります。
次にストロベリー、黒糖、バナナが人気がある印象です。メロンと抹茶は数回しか調剤したことがありません。
保管方法は?
開封してなければ、消費期限まで室温保存で問題ありません。
開封後は冷所に保存し、1日以内に飲み切りましょう。
市販で販売されているか
エンシュアリキッドは医療用医薬品になるため、市販では販売されていません。
類似商品は市販でも販売しており、こちらの方が味のバリエーションも豊富です。
保険適応にはなりませんが、気になる場合はドラッグストアや調剤薬局で聞いてみてください。

最後にもより詳しく紹介しましたが、メイバランスが一番有名な商品になります。
子供が飲んでも問題ないか
最近は子供に処方されることが増えてきました。食事で不足した栄養を補うもので、医薬品の扱いにはなりますが、食品に含まれる栄養成分がほとんどです。
特別な化学物質が入っているわけではないので、問題なく子供でも飲むことが出来ます。
禁忌はあるか
他の薬との禁忌はありませんが、牛乳アレルギーがある場合はカゼインが含まれるため禁忌になっています。
そのほかエンシュアリキッド以外のHやエネーボは腎機能が著しく落ちている人への投与には注意喚起が出ています。
妊娠初期(3カ月以内)の人はビタミンAをとりすぎると胎児に影響が出る可能性がある為、6缶以上(5000IU/日)服用する場合は注意が必要です。
飲みにくいという声が多い薬です

エレンタール(医療用医薬品)という成分栄養剤(たんぱく質は含まれず、窒素源としてアミノ酸のみを使用した栄養剤)よりは飲みやすいようですが、通常の食事になれた人であれば、甘く、飲みにくいと感じる事は多いと思います。
どんな味か?
かなり工夫はされているが、それでも甘ったるいです。
バニラはバニラアイスを溶かしたような味がします。甘いのが苦手な人はそのままではかなり服用がきついようです。
経鼻の場合でも、味の種類によっては上がってきて気になる場合も
経鼻などの場合は入れるときは問題ないのですが、胃から一部上がってくるため、その際に吐き気を催すことがあるという報告を受けたことがあります。
その場合はバニラよりコーヒーのがマシだという感想を伺いました。よろしければ参考にしてください。
こんな工夫で少し飲みやすくなります
病院で一番採用されている工夫
一番病院等でも取られている方法は冷やすことです。冷やすとかなり飲みやすくなるようです。
メーカー推奨の方法と注意事項
たんぱく質が含まれている為、凍らせたり、高温で加熱することはできません。(たんぱく質が変性するため)
40℃を超えるとたんぱく質が変性して効果が落ちる可能性があるので注意が必要です!
本来はそのまま飲むことが望ましいですが、難しい場合はアボット社のHPに飲み方の工夫が記載されています。コーヒー、紅茶、ココア、スープに混ぜる方法などが推奨されています


飲めなくて中断するよりは遥かにいいので、多少効果が落ちたとしても、工夫してみる価値はあると思います。
どうしても飲めなかった場合は、市販の栄養剤を検討してみては?

エンシュアリキッドは医薬品のため、どうしても味に関しては、食品ほどの工夫はされていません。
市販品がかならずしも医薬品に劣るというわけではないので、市販いかがでしょうか?いかがでしょうか?
お勧めの市販の類似の栄養剤は?
メイバランスミニ
カロリー:1.6kcal/1ml 200Kcal/本
味:フルーツ・オレ味、抹茶味、コーンスープ味、バナナ味、ヨーグルト味、ストロベリー味、コーヒー味、マスカットヨーグルト味、ブルーベリーヨーグルト味、いちごヨーグルト味、白桃ヨーグルト味
構成比:炭水化物:たんぱく:脂質=7.5g : 5.6g: 31.7~31.8g
塩分量:0.11~0.18g/1本(125ml)
定価(税込み)235円程度 賞味期限は1年程度

医薬部外品の為、保険が効かず、病院、調剤薬局の店頭やドラッグストアなどで購入になります。
普通のジュースよりは甘味があり気になりますが、エンシュアよりは飲みやすい印象です。
医療用医薬品ではないので、規制が厳しくなく、比較的頻繁に改良され、より今の日本人に必要な栄養分が補給されています。(医薬品は規制や手順が難しく、費用がかかるため、昔のまま内容は改善されにくい傾向にあります)
味の種類が沢山あり、気に入って続けている方もいます。
ゼリータイプやアイスクリームタイプもあり、経鼻や経腸でも使用実績があります。
使用方法は日本流動食協会のHP参照してください。
どうしても飲めず、体重が減少や体力低下をきたす場合は…
上記のようなOTCを試してみる方法もありますが、どうしても胃が受け付けない、チャレンジする気がわかないこともあると思います。
水が取れない状態は危険なので、飲めないことを恥ずかしいと思わず、早めに医師に相談しましょう。

緊急時は、点滴で栄養を補う方法もあります。
医師・薬剤師及び医療従事者向けにNST(栄養療法)を勉強するための書籍
治療に活かす!栄養療法 はじめの一歩
- なぜ治療において経口にこだわるのか
- 腸を使うことにこだわるのか
- 半消化態栄養・消化態栄養剤・成分栄養剤の違い
- 結局どの栄養成分がどのように重要で、どうしてこのような配分で入っているのか
などに疑問を感じたことがある方にお勧めです。
著者は医療従事者、特に医師向けに書籍を書いてはいますが、医療従事者でなくても半分くらいの内容は理解できると思います。家族の介護などをしていて栄養に関して勉強している人にもお勧めです。
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