片頭痛予防薬エムガルディ(ガルカネズマブ)とは?頭痛のない暮らしがおくれる?

エムガルディ(ガルカネズマブ)は2021年4月に発売された片頭痛の予防薬です。

先日エムガルディ(ガルカネズマブ)のメーカーによる勉強会を受け、実際に使っている医師の話を聞いたため、情報をまとめておきたいと思います。

この記事がおすすめな人
  • エムガルディ(ガルカネズマブ)がどんな薬か知りたい人
  • 片頭痛に悩んでいる人
目次

片頭痛とはどのような頭痛?効果や副作用とは?

片頭痛は、一次性頭痛です。典型的な症状としては以下のものがあります。

  • 片側性で拍動性の中等度から重度の頭痛発作が繰り返し生じる
  • 4~72時間にわたり発作が持続する
  • 頭痛に加えて悪心、嘔吐
  • 光過敏及び音過敏等を伴う
  • 日常動作で頭痛が増悪するため生活に大きな支障をきたす

本日勉強会演者の医師によると、緊張性頭痛との誤診が多いようです。

上記すべての条件でなく、いくつかか該当している場合も片頭痛である場合が多く、実際の診療では、一次性頭痛の8割くらいの患者さんが片頭痛なのではないかと思ったと言っていました。

なかなか治療がうまくいかない場合は専門の医師のいる頭痛外来に早めにかかることが大切だと思います。

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出典:日本頭痛学会 HP

片頭痛治療薬エムガルディ(ガルカネズマブ)の作用機序、効果、副作用、特徴

出典:第一三共 HP

CGRPを抑制する作用機序は国内初で、片頭痛薬としても20年ぶりとなります。

非常に今後に期待されている薬です。

シリンジ型とオートインジェクター型があり、長期処方が可能になった際には最初の数回病院で練習した後、オートインジェクター型を薬局で3か月程度分くらいまとめて処方されてくるかもしれませんね。

エムガルディ(ガルカネズマブ)の作用とは?

エムガルディ(ガルカネズマブ)は片頭痛の起こった時に使用する薬ではなく、片頭痛の発作を抑える予防薬です。

CGRP」とは、カルシトニン遺伝子関連ペプチドの略で、頭の硬膜、三叉神経にあり、片頭痛の発作時の血管拡張や炎症反応の直接原因になっています。

片頭痛患者ではこの物質が上昇していることが多いと考えられています。

エムガルディ(ガルカネズマブ)は「CGRP」のはたらきを抑える「抗体医薬」というタイプの新しいお薬です。

CGRP」は、片頭痛を引き起こす主な原因物質の1つであり、これを抑えることで、片頭痛発作を起こりにくくする効果が期待されます。

出展:エムガルディ HP

片頭痛予防薬にはほかにミグシス(ロメリジン)、インデラル(プロプラノロール)、デパケンR・セレニカR(バルプロ酸)、トピナ(トピラマート)、トリプタノール、呉茱萸湯などがあります。

エムガルディ(ガルカネズマブ)の副作用とは?

メーカーの添付文書や説明でもほとんど発症の割合が1%以下だったため、かなり頻度は低いと思われます。

注射をした部位(お腹、太もも、腕、お尻)に痛み(10.1%)、発赤、かゆみ、内出血や腫れ(14.9%)などが生じることがあるようです。

しかし多くの場合、注射した日に出現し、数日以内に消失するようです。

そのほかの副作用として、皮膚のかゆみ、じんま疹、発疹などが報告されています。

エムガルディ(ガルカネズマブ)の効果と特徴

エムガルディ(ガルカネズマブ)には以下の画期的な特徴があります。

  • 片頭痛日数が減る
  • 急性期治療薬を使う日数が減る
  • 発作時の痛みを軽減してくれる

メーカーデータによると、月に8.6日あった片頭痛が3.6日減ることが示され、また片頭痛の頻度が50%以上減った患者さんの割合は、49.8%、75%以上減った患者さんは25.5%、100%減った(頭痛がなくなった)患者さんは9.0%にも上るようです。

<勉強会の医師のコメント>

最初にずどんと効果が出て、大体2~3カ月で十分な効果が出ます

中断した後もリバウンドはなく、2~3カ月すると徐々に効果が切れてくるような感じです。

 個人差はあるものの、全く効果のなかった患者さんはいなかったこと、人によっては全く頭痛のない生活を送れるようになったという人もいました。

疼痛時の頓服薬が効きやすくなった、効果が出やすくなった、頻度が減った等の報告を受けており、ほかの予防薬と比べても、非常に効果が高い薬と言っていいでしょう。

かばこ

個人情報や特許の関係で勉強会で提示されたデータまではお伝え出来ませんが、まとめると上記のようなことを言っていました。

しかしどんな人にも投与できるというわけではなく、以下のような条件があります。

使用条件
  • 医師に片頭痛と診断されていること。
  • 片頭痛が過去3か月の間で、平均して1か月に4日以上。
  • 従来の片頭痛予防薬の効果が不十分、または内服の継続が困難な場合。
  • 妊娠中・授乳中は、十分検討した上での「慎重投与」可。
  • 18歳未満の小児は「使用不可」
  • 処方できる医師、施設も条件あり。

処方してもらえるかどうかは事前に確認した方がいいかもしれません。

医師側の要件

医師免許取得後 2 年の初期研修を修了した後に、頭痛を呈する疾患の診療に 5 年以上の臨床経験を有していること

頭痛を呈する疾患の診療に関連する以下の専門医の認定を有していること。(日本神経学会、日本頭痛学会、日本内科学会(総合内科専門医)、日本脳神経外科学会)

施設側の要件

二次性頭痛との鑑別のためにMRI等による検査が必要と判断した場合、当該施 設又は近隣医療機関の専門性を有する医師と連携し、必要時に適切な対応がで きる体制が整っていること。

エムガルディ(ガルカネズマブ)の投与方法

出典:エムガルディHP

エムガルディ(ガルカネズマブ)は初回に2本、2カ月目以降は1か月間隔で1本注射する薬です。

エムガルディ(ガルカネズマブ)使用上の注意点

投与30分前に冷蔵庫から取り出し直射日光を避け、室温に戻しておく必要があります。

かばこ

冷たいと注射時に痛みを感じます。

エムガルディ(ガルカネズマブ)のデメリットとは?

生物製剤はどれも値段が高いのである程度は覚悟していましたが、値段がとても高いです!

初回は2本の為、3割負担で27000円、その後は13500円/月となります。

長期となると迷ってしまうところかもしれないですね…。

エムガルディ(ガルカネズマブ)の類似薬とは?

この記事を書いた当初は、抗CGRP抗体治療薬はエムガルディ(ガルカネズマブ)のみだったのですが、その後類似薬が開発されています。

製品名(一般名)エムガルディ(ガルカネズマブ)アジョビ(フレネズマブ)アイモビーグ(エレヌマブ)
作用機序抗CGRP抗体抗CGRP抗体抗CGRP受容体抗体
用法初回2本 そのあと1本1カ月おき1本4週おき
3本12週おき
1本4週おき

簡単な特徴を以下にまとめました。

アジョビ(フレネズマブ)について

片頭痛の原因に関与しているとされるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)に結合することで、三叉神経系の活性化を抑制すると考えられています。
2018年にアメリカ、2019年ヨーロッパで認可され、2021年6月に本邦でも承認されました。

  • ライフスタイルに合わせた2つの投与方法(4週間ごとに1本あるいは12週間ごとに3本皮下注射)が選択できます。
  • 片頭痛予防薬内服の有無にかかわらず、片頭痛の日数が減少します。
  • 反復性片頭痛、慢性片頭痛ともに、片頭痛日数が初回投与1週目から減少します。

アイモビーグ(エレヌマブ)について

アイモビーグはCGRPを必要な分だけ取り込む受け皿(受容体)に蓋をすることで、片頭痛発作を抑えることができます。

CGRPに結合してCGRPが作用しないように抑えるエムガルディとは少し作用機序が異なります。

  • 片頭痛患者様における64週後の片頭痛日数50%減少率は64.8%
  • 海外で先行発売されており、5年の長期投与試験により安全性が確認されている
  • 抗体製剤の中でも、アレルギー反応や効果減弱が少ないとされる「完全ヒト化」製剤
  • 初回から1本の注射でOK

補足:OTC薬(ドラッグストアで手に入る薬)で片頭痛はおさまる?

軽度から中程度の片頭痛で月に1回、2回くらいまでならOTC薬のNSAIDs(ロキソニン、イブプロフェン等)で対処することもできるようです。

ただし、それ以上の頻度、月に3回以上の場合は我慢せず早めに受診することが大切です。

頭痛を我慢し続けた結果、薬剤乱用頭痛を引き起こしているケースが相次いでいるようです。

カフェインは片頭痛を悪化させます。

かばこ

カフェインを飲むと一瞬良くなった気がするため、飲み過ぎでかえって片頭痛を悪化させている場合があります。

特にカフェイン、無水カフェインはコーヒー、紅茶、緑茶のみならず、さまざまなOTCや栄養ドリンクにも入っていおり、注意が必要です。

ハム吉

今日の勉強会でも、カフェインによって片頭痛が悪化している人がたくさん外来にきていると言っていました。

おわりに

今回の記事では、片頭痛治療薬エムガルディ(ガルカネズマブ)に関して、勉強会で教えていただいた知識に、補足を加えてまとめました。

参考になれば幸いです。

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