アウィクリ注が新発売!世界初の週1回持続型インスリン注射薬の特徴、トレシーバ注、ランタス注との違いは?

2025年1月30日、週1回持続型溶解インスリンアナログ注射薬 アウィクリ注フレックスタッチが新発売になりました!

かばこ

糖尿病の治療がまた大きく変わっていきそうな予感がしますね!

アウィクリ注はさまざまな製剤的、デバイス的な特徴があります。

先日勉強会があっため、アウィクリ注に関する最新の情報を薬剤師目線でまとめました。

今後も勉強会が行われる予定のため、その都度必要と思われる情報は追記・更新していく予定です。

この記事でわかること
  • アウィクリ注の成分や製剤としての特徴
  • アウィクリ注のデバイスとしての特徴
  • アウィクリ注の副作用、低血糖に関して
  • アウィクリ注トレシーバ注との違いや切り替え方法
  • アウィクリ注のその他の注意点
  • アウィクリ注のターゲット層
目次

アウィクリ注の成分・製剤の特徴とは?

薬剤師として抑えておきたい、アウィクリ注の成分・製剤的な特徴に関してまとめました。

アウィクリ注は週に1回の投与の基礎インスリン製剤

商品名アウィクリ注フレックスタッチ
一般名インスリン イコデク
適応症インスリン療法が適応となる糖尿病
半減期約7日間
用法用量週1回 毎週同じ曜日に皮下投与
薬価2081円(300単位1キット)
発売日2025年01月30日

発売したばかりのため、2026年1月までは14日処方制限がかかります。

かばこ

発売から1年は1本、多くても2本程度までしか処方できません。

アウィクリ注はアルブミンと結合することで週に1回の投与を可能にした製剤

アウィクリ注の主成分であるインスリンイコデクは、ヒトインスリンのアミノ酸配列のB鎖30番目のトレオニン残基を除去、3カ所のアミノ酸を置換し、B鎖29番目のリジン残基に脂肪酸を含む側鎖を結合させた修飾ペプチドです。

脂肪酸を含む側鎖が血漿中アルブミンと可逆的に結合し、さらにアミノ酸の置換によりインスリン受容体に対する結合親和性が低下することで半減期が延長、血糖降下作用が長時間持続する週1回投与の持効型溶解インスリンアナログ注射液となっています。

注射回数が減ることで治療負担が軽減、患者のアドヒアランスが向上し、結果として臨床的転帰の改善が期待されています。

持効型溶解インスリン製剤、初の「週1回投与」日経メディカルより抜粋

簡単にまとめると、ヒトインスリン分子を修飾し、アルブミンと可逆的な結合とインスリン受容体との結合親和性の低下の実現により、半減期の延長、効果の持続を可能にした基礎インスリン製剤です。

低アルブミン状態でもアウィクリ注は安全に使用できる?

勉強会中にでた質問に対しての回答なのですが、臨床試験段階でもそのような懸念はあり、検討を行った結果、メーカー側では「低アルブミン状態でも問題なく安全に使用できる」との結論が出ているとのことでした。

かばこ

詳細を知りたい方はMRさんに確認したほうがよいかと思います。

1度にたくさん投与しなければならなくて辛い?

1週間に1回の投与だと、大量に液体を一度に注入しなければならないのではないかと不安になりますよね?

アウィクリ注はその点もよく考えらえています。

アウィクリ注は1週間分のインスリンを1回で注射するため、毎日投与の基礎インスリン製剤よりも高い濃度で作られています。

濃縮されているため、投与する液体量は増えない

1回あたりに投与する液量は毎日投与の基礎インスリン製剤と変わりません。

アウィクリ注の濃度700単位/mlに対して、基礎インスリンの濃度100単位/mlと、1/7に濃縮されています。

投与開始方法の注意点

インスリン未治療か、他のインスリン基礎製剤からの切り替えかで投与開始方法が異なります。

インスリン未治療の場合は、70単位以下を開始単位目安としています。

トレシーバ注やランタス注などの基礎インスリン製剤からの切り替えの場合は、開始方法が異なります。

・インスリン依存性が高い2型糖尿病や1型糖尿病の場合は、初回のみ従来型基礎インスリンの7倍の1.5倍量、2周目以降は従来型基礎インスリンの7倍量を投与します。

・そのほかのインスリン分泌のある2型糖尿病の場合は初回から従来型基礎インスリンの7倍量が推奨されています。

投与量調節方法は医師の判断にもよりますが、4週程度をあけて、10単位から20単位を目安にゆっくりと増減することが勉強会では推奨されていました。※1週間あければ添付文書上は増減して問題ありません。

打ち忘れた時はどうすればよい?

オゼンピック注トルリシティ皮下注などのGLP-1製剤と打ち忘れた場合の注意点が異なります。

かばこ

GLP-1製剤は次に注射する日までの期間が2日間以上であれば、注射し、その後はあらかじめ定めた曜日に注射するんだったよね。

ハム吉

GLP-1製剤は打ち忘れてもずっと同じ曜日だけど、アウィクリ注は打ち忘れるとどんどん曜日がずれてきちゃうね。

気が付いた時点で直ちに注射し、次の注射は4日以上の間隔をあける

注射を忘れた場合は、気が付いた時点で直ちに注射してください。

その次の注射は4日以上の間隔をあけてから行い、そのあとは新たな開始日と同じ曜日に注射してください。

アウィクリ注 患者向け資材より抜粋

参考資料

アウィクリ注の成分的な特徴とトレシーバ注、インスリングラルギン製剤との違いとは?

基礎インスリンからの切り替えは多いと考えられるため、アウィクリ注基礎インスリンであるトレシーバ注、インスリングラルギン、ランタス注の違いや切り替え方法に関してまとめました。

インスリングラルギンBSランタス注の後発品です。

アウィクリ注とトレシーバ注、インスリングラルギン製剤との違いは?

アウィクリ注(300単位1キット)トレシーバ注(300単位1キット)インスリングラルギンBS(300単位1キット)※後発品ランタス注(300単位1キット)
成分名インスリン イコデクインスリン デグルデクインスリン グラルギンインスリン グラルギン
用法用量週1回1日1回1日1回1日1回から2回
薬価2081円フレックスタッチ:1976円
ペンフィル:1438円
カート:715円
キット:1095円
ミリオペン:1095円
カート:961円
ソロスター:1189円

アウィクリ注はゆっくり長期間にわたって作用するため、週に1回の投与で持続した効果が期待されています。

かばこ

値段的にそれほど変わらないのは有難いですね。

アウィクリ注の効き方のイメージとしては以下の通りです。※定常状態に達した場合のイメージです。

アウィクリ注 患者向け資材より抜粋

従来型の基礎インスリン製剤のイメージが以下の通りです。

アウィクリ注 患者向け資材より抜粋

上図を見てもらえればわかるように、アウィクリ注の血中濃度は定常状態であっても一定にならず、なだらかな曲線を描いており、2~4日目に血中濃度の山が見られます。

そのため、臨床試験では2~4日目に低血糖が見られやすかったとの報告があがっています。

  • 1日目や6.7日目の血糖値でインスリン単位数が設定されている場合、2~4日目に血糖値が下がりすぎる場合があるようです。
  • また、低血糖を不安視するあまり、2~4日目に食事を摂りすぎ、高血糖になった例なども勉強会で報告されていました。

トレシーバ注からの切り替え時方法とは?

トレシーバ注から切り替える場合の単位数は、トレシーバ注の単位数の7倍量(7日分)が適応量となっています。

しかし、血糖値が最大量になるのが2~4日後で、定常状態になるのに2~3週かかるとされているため、切り替え時は糖尿病の状態によって切り替え方が異なってきます。

かばこ

アウィクリ注の特徴のところでも説明しましたが、再度簡単に説明します。

1型糖尿病か2型糖尿病かで対応が分かれる

ここは医師による判断になるところなので詳細は割愛いたしますが、インスリン依存状態の2型糖尿病や1型糖尿病の場合は、1週目は1.5倍量を投与し、2周目以降は適応量を投与することが提案されています。

これは、アウィクリ注が定常状態になるのに2~3週ほど時間がかかるため、それに合わせるためです。

しかしインスリン分泌のある2型糖尿病などでは適応量で開始が推奨されています。

アウィクリ注 医療従事者向け資材より抜粋
かばこ

糖尿病の型によっては、必ずトレシーバの7倍量の単位数での切り替えではないところに注意ですね。
また、2周目以降は1.5倍量を投与していないかどうかチェックしたほうがよさそうです。

ハム吉

切り替え方法に関してもっと詳しく知りたい方は、メーカーの動画や医療従事者向け資料をご覧ください。

ほかの基礎インスリン製剤からの切り替えもトレシーバ注と同様?

基礎インスリン製剤としては、ランタス注(インスリングラルギン)、レベミル注などもあります。

さらにランタス注にはXR製剤もあります。

基本的にはトレシーバ注と同様の7倍量でよいようです。

かばこ

7倍量を基準として、患者さんの病状をみながら量を増減させて考えていくのがいいみたいです。(メーカーMR談)

アウィクリ注からトレシーバ注などの従来型基礎インスリンに戻す場合は?

メーカー資料にも添付文書にもどこにも載っていませんが、勉強会で質問した方がいたため、メーカーの見解を掲載しておきます。

アウィクリ注を投与して一週間後の次の日だけ通常量(アウィクリ注の1/7)を半量にして投与し、それ以後は通常量で投与が推奨されるとのことです。

参考資料

  • アウィクリ注 患者向け資材
  • アウィクリ注 医療従事者向け資材
  • アウィクリ注 医療従事者向け動画|ノボノルディスクファーマ

アウィクリ注の低血糖に関する注意点

糖尿病に罹患している患者さんには、高齢者や認知機能が落ちている患者さんが多くいます。

そのため、低血糖のリスクや万が一倍量を誤って打ってしまった場合の対応や低血糖リスクに関して気になる方も多いと思います。

アウィクリ注を連日投与、倍量投与してしまった場合はどうしたらよいでしょうか?

アウィクリ注の低血糖リスクはどのくらい?

まずはアウィクリ注インスリングラルギン(商品名:ランタス等)と低血糖リスクを52週比較したデータを紹介します。

アウィクリ注群インスリングラルギンU100群
臨床上問題となる低血糖(レベル29.8%10.0%
重大な低血糖(レベル3)0.2%0.6%
重大または臨床的に問題となる低血糖(レベル2+レベル3)9.8%10.6%
アウィクリ注医療従事者向け資材を基に作成

従来型の基礎インスリン製剤と比較しても、正しく使用すれば、アウィクリ注の低血糖リスクは高くないことがわかります。

アウィクリ注の低血糖は遷延する?重篤なものはない?対処方法とは?

アウィクリ注の患者向け資材にも注意喚起があるように、ウィクリ注の低血糖はトレシーバのような従来型の基礎インスリン製剤よりも遷延する可能性があります。

倍量を投与しまった、連日投与してしまったなどの誤った使用方法を行った場合は、まずは医療機関に相談し、対応を相談したほうがよいでしょう。

血糖測定の回数や食事量の変更が指示される可能性があります。

しかし、アウィクリ注の製剤的な特性(ゆっくり効果が出る)から考え、倍量を打ってしまったからと言って、直ちに重篤な低血糖をおこす可能性は低いようです(メーカーMR談)

トレシーバ注を倍量打ってしまった場合と同程度の低血糖リスクと考えてよさそうです。

参考資料

  • アウィクリ注 患者向け資材
  • アウィクリ注 医療従事者向け資材

アウィクリ注のデバイスとしての特徴

アウィクリ注トレシーバ注と同じフレックスタッチがデバイスとして採用されています。

そのため、手の不自由な方でも押しやすいデバイスになっています。

デバイスはフレックスタッチ!満タンには入っていないので注意!

アウィクリ注フレックスタッチのデバイスは実は700単位用であることに注意が必要です。

発売から1年の間は14日分しか処方できないため、700単位用のデバイスに、300単位の注射液が入っています。

つまり、カートリッジの途中までしか薬液が充填されていないことに注意が必要です。

かばこ

患者さんには最初に説明しないと、絶対に質問来ます…。

ハム吉

1年経過したら700単位で発売予定のため、苦肉の策です。

新発売の商品のため、14日処方制限がかかる

上記でも何度か触れていますが、発売から1年経過した2026年1月までは、14日分しか処方できません。

そのため、アウィクリ注は1本か2本しか一度に処方できないことに注意が必要です。

かばこ

14日以上処方されていたら疑義照会が必要です。

メモリは10単位ごと

アウィクリ注フレックスタッチの1メモリは10単位です。

アウィクリ注 患者向け資材より抜粋

空うちは毎回10単位

アウィクリ注の空うちは10単位です。

毎回必ず行ってください。

かばこ

少しもったいなく感じますが、万が一きちんと液体が出ていないと大変なことになるので、必ず行ってください。

ハム吉

1週間分の基礎インスリンが身体に入らなかった場合は命の危険があります。

参考資料

  • アウィクリ注 患者向け資材

アウィクリ注は血糖測定の保険適応は従来通り?

インスリン製剤を打っている患者さんは、血糖測定(SMBG等)が保険適応になります。

血糖測定の保険適応条件は、インスリン依存性の糖尿病であるかどうかだけでなく投与回数にも依存します。

従来通りの保険適応になる可能性が高い

例えばリブレのような間歇スキャン型の血糖測定器は「インスリン製剤の自己注射を1日1回以上行っていること」などが保険の算定要件になっています。

しかしアウィクリ注が開始されると、週に1回の投与になってしまい、算定要件に該当しなくなってしまいます。

厚生労働省とそのあたりに関してはかなり話し合いが進んでいるようで、おそらく従来通り、保険適応になる可能性が高いと勉強会では報告されていました。

かばこ

詳細はメーカーに確認したほうがよいでしょう。

FreeStyleリブレ2に関する記事はこちら

アウィクリ注はどんな人がはじめのターゲット層?

アウィクリ注はどのような患者さんがターゲット層として考えられるでしょうか?

先日の勉強会の情報から見えてきたことに関してまとめました。

コンプライアンスが不良や注射に抵抗のある患者さんに

メーカー側としては、コンプライアンス不良の患者さんや注射に対して抵抗がある患者さんへの使用を特に推奨しているようです。

ただ、定常状態に至っても1週間の間になだらかなインスリン作用の波があるため、ある程度この製剤の処方に関する医師側の慣れが必要であること、認知機能が落ちた高齢者がきちんと理解して使用できるのかどうかなどの懸念点があります。

まずは経口薬で十分な効果がなかったインスリン未治療群から開始されるのでは?

アウィクリ注の臨床試験であるONWARDS1の対象患者が、もっとも安全にアウィクリ注を開始できるターゲット層ではないかと勉強会では言われていました。

そのため、今後はまずは「経口薬を用いてもHbA1c7.0未満を達成できなかった18歳以上の2型糖尿病」の患者さんへの使用が想定されそうです。

まとめ

この記事の要点を以下にまとめました。

  • アウィクリ注の成分や製剤としての特徴

週に1回の基礎インスリン製剤で、低血糖リスクは従来の基礎インスリン製剤と同等、投与液体量も変わらないため、患者負担の軽減が期待されています。

  • アウィクリ注のデバイスとしての特徴

フレックスタッチのため、手の不自由な人でも利用しやすいです。14日処方制限のため、700単位のデバイスに300単位が収納されているため、満タンに入っていない点には注意が必要です。また、1メモリは10単位です。

  • アウィクリ注と基礎インスリン製剤との違いや切り替え方法

基礎インスリン製剤の7倍量を投与します。糖尿病の状態によってはその1.5倍量を初回に投与が必要です。

アウィクリ注で糖尿病患者さんの生活がどのように変わっていくのか、とても楽しみですね!

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