高脂血症治療薬レグビオとレパーサ、どちらを選ぶべき?使用できる条件とは?

勤め先の病院でレグビオレパーサを両方採用することとなり、違いや使用できる条件を勉強する必要ができました。

かばこ

似ているようで、細かいところが色々違ったり、適応条件があるようなので、勉強してまとめました。

この記事では、薬剤師目線で、高脂血症治療薬であるレグビオレパーサの違いと使用条件、監査時のチェックポイントなどをまとめました。

この記事でわかること
  • レグビオレパーサの違い(作用機序、値段、保管方法)
  • レグビオレパーサの適応条件
目次

レグビオとレパーサの基本情報

そもそもレグビオレパーサってどんな高脂血症治療薬?

スタチン系などの高脂血症治療薬と何がちがうの?という人のために、簡単に情報をまとめました。

レグビオの概要と特徴

レグビオ|ノバルティス プレスリリースより抜粋

レグビオ(一般名:インクリシランナトリウム)は、siRNA(低分子干渉RNA)技術を活用した持続型LDLコレステロール低下製剤です。

レグビオは2023年9月25日に日本で承認され、11月24日には販売開始しました。

この薬剤はPCSK9を生成するmRNAを標的として、PCSK9の量を減少させることでLDL受容体の数を増加させ、結果としてLDLコレステロール値を低下させる仕組みです。

レグビオの適応疾患

適応疾患には家族性高コレステロール血症および高コレステロール血症が含まれ、特に心血管イベントリスクが高い患者で、スタチン系薬剤の効果が不十分な場合、もしくはスタチン治療が適さない場合に使用されます。

家族性高コレステロール血症とは?

LDL-C が血液中で高くなり、若いときから動脈硬化が進んで、血管が細くなったり詰まったりする病気で、特に心臓の血管(冠動脈)に影響が大きく、心筋梗塞や狭心症を引き起こします。一般人口の300人に1人程度と比較的高頻度の遺伝性疾患です。

ホモ接合体性と呼ばれる重症のケースは36~100万人に1人以上の頻度と言われており、ホモ接合体性の場合には指定難病となります。
ノバルティス メディアリリースより抜粋

かばこ

残念ながら、レグビオの現在ホモ型の家族性コレステロールに対する十分な効果は認められていません。

レグビオの投与間隔

3ヶ月ごとの初期投与後、6ヶ月ごとに1回の投与により治療が可能で、患者の通院負担を軽減する利点があります。

かばこ

現在はシリンジのみなので、自己注射型ではなく、医療機関での投与になります。

レパーサの概要と特徴

レパーサを処方された患者さんとそのご家族の方へ|アステラス アムジェン より抜粋

レパーサ(一般名:エボロクマブ)は、ヒト抗PCSK9モノクローナル抗体製剤として分類される薬剤です。

2016年7月から販売が開始された、レグビオよりも歴史の長い薬です。

この薬剤はPCSK9とLDL受容体の結合を阻害することで、LDL受容体の分解を抑制し、LDLコレステロール値を低下させる作用があります。

レパーサの適応疾患

適応疾患として、家族性高コレステロール血症高コレステロール血症(心血管イベントのリスクが高い場合)が挙げられます。

家族性高コレステロール血症とは?

LDL-C が血液中で高くなり、若いときから動脈硬化が進んで、血管が細くなったり詰まったりする病気で、特に心臓の血管(冠動脈)に影響が大きく、心筋梗塞や狭心症を引き起こします。一般人口の300人に1人程度と比較的高頻度の遺伝性疾患です。

ホモ接合体性と呼ばれる重症のケースは36~100万人に1人以上の頻度と言われており、ホモ接合体性の場合には指定難病となります。
ノバルティス メディアリリースより抜粋

かばこ

レパーサはホモ型の家族性コレステロール血症にも適応が認められています。

レパーサの投与間隔

レパーサを処方された患者さんとそのご家族の方へ|アステラス アムジェン より抜粋

用法には140mgを2週間に1回、または420mgを4週間に1回の投与方法(ホモ型は420mgを4週間に1回皮下投与する。効果不十分な場合には420mgを2週間に1回皮下投与)があり、患者の状態に応じて適切なスケジュールで使用されます。

かばこ

自己注射型です。そのため、自分で注射を打つのが苦手な方は抵抗を感じる場合があります。

両者が対象とする疾患と適応状況(まとめ)

レグビオレパーサはどちらも、主に家族性高コレステロール血症や高コレステロール血症を治療対象としています。

かばこ

ホモ型の家族性コレステロール血症治療薬はレパーサのみが適応です。

ハム吉

但し、LDL受容体が完全に欠損したホモ型家族性コレステロール血症にはどちらも効果がないため、別の薬剤を検討する必要があります。

特に、心血管イベントリスクの高い患者を重要な治療対象としており、スタチン等通常の治療が効果不十分、または患者に適さない場合の選択肢として使用されます。

主成分・作用機序の比較(まとめ)

レグビオは持続効果を持つsiRNA医薬であり、PCSK9を生成するmRNAを直接ターゲットにすることで、PCSK9の産出を抑制します。この作用により、LDL受容体の数が増加し、LDLコレステロール値の低下がもたらされます。

なお、siRNA医薬としては希少疾患以外への適応が認められている初の製剤として注目されています。

一方で、レパーサはPCSK9とLDL受容体の直接的な結合を阻害するモノクローナル抗体医薬です。

これにより、LDL受容体の分解が抑制されるため、同様にLDLコレステロール値の低下が実現します。

作用機序は異なりますが、いずれも治療効果を得るための重要なポイントとしてPCSK9が標的になっています。

それぞれの治療に対する評価

レグビオは、投与頻度が少ない点や、siRNA技術に基づく精度の高い作用機序が評価されています。

特に、半年に1回の投与で済む利便性の高さは、患者の生活スタイルとの両立において優れた特長とされています。ただし、適応を満たす条件が限定される場合があるため、注意が必要です。

一方、レパーサはLDLコレステロール低下効果において非常に強力と評される薬剤です。特に重症の患者にとって重要な選択肢となっています。

しかし、比較的頻繁な投与スケジュールや治療コストが課題として挙げられることもあります。

参考資料

薬剤師必見!監査時や保管時の注意点

レグビオレパーサの監査時の注意点、保管上の違いに関してまとめました。

スタチン系は併用しているか?

レパーサレグビオも、添付文書上に以下のような記載があります。

7.1 HMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない場合を除き、HMG-CoA還元酵素阻害剤と併用すること。

そのため、スタチン系の薬剤に対する副作用等の不耐性がない場合以外は、基本的にスタチン系と併用しなければなりません。

かばこ

スタチン系を併用しているか、スタチン不耐などのコメントがあるか、確認しなければなりません。

スタチン系は最大用量を服用する

『PCSK9 阻害薬適正使⽤に関する指針 2024 改訂版』には、スタチン最大耐用量と場合によってはエゼチミブ等を併用したうえで、PCSK9 阻害薬を使用することとの記載があります。

メーカーにも確認しましたが、やはり最大用量(場合によっては副作用の出ない最大耐用量)でのスタチン系の併用は必須のようです。

かばこ

ひとつのスタチン系がダメでも、最大3剤まで変更検討を行いながら、基本はスタチン系を併用することが推奨されています。

ハム吉

どうしても難しい場合はコメントが必要です。
高い薬なので、安易には処方できないようになっているようです。

投与間隔は適切か?

レパーサは2週、もしくは4週ごとの投与です。レグビオも初回は3カ月後、その後は6カ月後となどの投与間隔があります。

ここを見逃すことはほとんどないとは思いますが、忘れずに確認しましょう!

保存は冷所?

意外ですが、レグビオは室温保存です。

レパーサは冷所保存の薬です。

どちらも高額な薬のため、取り置けるスペースや返却できるかどうかなども考慮しながら発注をかけましょう!

効果と安全性の比較

レグビオレパーサの効果と安全性に関してまとめました。

LDLコレステロール低下効果

レグビオレパーサは、どちらも高いLDLコレステロール低下効果を持つ薬剤ですが、その作用機序と効果の出方に違いがあります。

レグビオはsiRNA医薬としてPCSK9を生成するmRNAを分解することでLDL受容体を増加させ、LDLコレステロールを効果的に低下させます。

一方、レパーサはPCSK9とLDL受容体の結合を阻害することでLDL受容体の分解を抑制し、同じくLDLコレステロール値を下げます。

家族性コレステロールのホモ型の場合は現時点ではレパーサのみしか効果が認められていない点も注目ポイントです。

主要な臨床試験の結果

グビオではORION試験が主要な試験として知られています。

この試験では、3回の投与後にも持続的にLDLコレステロールが50%以上減少する結果が示されました。

レパーサではFOURIER試験が実施され、LDLコレステロールの平均低下率が中央値で59%に達し、さらに心血管イベントのリスクも有意に低下させる結果が得られています。

これらの試験結果から、どちらの薬剤も脂質異常症に対して非常に高い治療効果を発揮すると評価されています。

それぞれにみられる副作用

レグビオの主な副作用として5%程度、注射部位反応(痛みや腫れ)が報告されています。5%未満の一部の患者では、肝機能低下や軽度な感染症状や疲労感がみられる場合もあります。

レパーサでは、0.5%程度に注射部位反応のほかに頭痛、インフルエンザ症状、倦怠感が認められることがあります。

両薬剤とも重篤な副作用は稀ですが、いずれも安全性に関しては長期間のデータが求められます。

服用中に何らかの体調変化を感じた際は、医師に相談することが重要です。

リスク管理と注意点

レグビオは半年に1回の投与で済むため、患者の負担が少ないものの、投与間隔が長い分、治療開始後早期の効果確認が重要です。

一方、レパーサの場合は頻回の投与が必要なため、継続的な管理が求められます。

いずれの治療でも、高リスク患者では定期的なLDLコレステロールの測定や心血管イベントリスクの評価が推奨されます。

また、基本はスタチン療法と併用する薬剤のため、併用による副作用のリスクにも注意が必要です。

安全性の観点からの選択ポイント

レグビオの特徴は、投与回数の少なさによる治療継続のしやすさにあります。また、siRNA医薬としての新しい作用機序は、安全性とともに高い効果を発揮しています。

一方、レパーサは長い使用実績があり、多くの臨床データが揃っている点が安全性の面で安心材料と言えます。

費用対効果と経済性を検討する

レグビオレパーサの費用を比較してみましょう!

投薬費用の概算比較

レグビオレパーサの費用を比較すると、投与回数の違いによる差が顕著です。

レグビオは1回あたりの薬価が約44万円と高額ですが、年間の投与回数が少なく、初年度は計2回、その後は半年に1回の投与です。

一方、レパーサは140mgで約2万4,000円、420mgで約4万7,000円と1回あたりの薬価は低いですが、2週間から4週間に1回の頻回な投与が必要となります。

そのため、総投与費用は個々の患者の治療プランや必要な投与回数に大きく影響を受けるといえます。

かばこ

レパーサ140mgを月2本で考えると、半年で28万8000円です。
レグビオ44万円のほうが高額になりますが、高額療養費制度の対象になることを考えると、どちらが高くなるかは微妙なところですね…。

ハム吉

医療負担割合によっても違ってくるよね…。

長期治療となる際の経済的負担

脂質異常症は慢性的な疾患であるため、治療は長期にわたることが一般的です。

レグビオの場合、半年に1回の投与で済むため、通院頻度は少なく、通院コストを含めた総合的な負担が軽減される可能性があります。

一方、レパーサは頻回な投与と通院を必要とするため、薬剤以外の医療費用も長期的には重なる点に注意しましょう。

患者支援プログラムや助成制度

高額な薬剤であるため、患者支援プログラムや公的な助成制度を活用することが経済的負担を軽減する手段となります。

レグビオレパーサについては、製薬会社が提供する支援プログラムや自治体・医療機関が提供する助成制度の対象となることがあります。

例えば、高額療養費制度を活用することで、自己負担額を軽減できる可能性があります。

治療選択時には、これらの制度についても事前に確認し、利用可能な場合には積極的に活用することが推奨されます。

参考資料

どちらを選ぶべきか?状況別の選択指針

最終的には医師と患者さん本人との相談となると思われますが、あらかじめ考えるべき基準として以下にまとめました。

家族性高コレステロール血症(FH)の場合

家族性高コレステロール血症(FH)の患者においては、両剤とも適応がありますが、治療方針は個々の病態や生活スタイルに依存します。

レグビオは半年に1回の投与で管理が可能なため、負担を軽減したい患者に適しています。

一方、レパーサは投与頻度が高いものの、急速なLDLコレステロール値の低下が期待できるため、迅速な効果が必要な場合に有用です。

特に重症例やホモ接合体患者の場合は、レパーサの420mgを2週間ごとに使用する治療計画が考慮されます。

ライフスタイルを重視する場合

生活スタイルや投与スケジュールが治療選択において重要な要因となる患者には、レグビオが優れています。

半年に1回という投与方法は、日常生活への影響を最小限に抑えつつ、LDLコレステロールの管理を可能にします。

一方、レパーサは2週間または4週間ごとの投与が必要、頻回な通院が必要なため、自己注射が可能な環境を維持することが求められます。

超多忙な生活を送る患者や遠隔勤務などでスケジュールの柔軟性を求める人にとっては、レグビオの利便性が際立ちます。

医療施設へのアクセス状況で選ぶ

投与のために医療機関への訪問が必要となる患者の場合、そのアクセスのしやすさは重要な考慮ポイントです。

レグビオは半年に1回の投与で済むため、医療施設に頻繁に通院する必要がありません。

特に地方部や交通アクセスが制限されるエリアに住む患者にとっては大きな利点となります。

一方、レパーサは自己注射ですが、初回指導時や定期的な経過観察が必要な場合には、医療機関への訪問が必要となることがあります。

費用に敏感な患者の場合

レグビオレパーサの費用は、投与頻度や患者が必要とする年間のトータルコストに基づいて比較されます。

具体的には、レグビオは1回あたりの費用が高めですが、投与頻度が半年に1回と少ないため、年間コストは一定に抑えられる可能性があります。

対してレパーサは1回あたりの費用が比較的低めですが、長期間にわたり2~4週間ごとに投与する必要があるため、累積的な費用が気になる場合があります。

経済的に敏感な患者は、医療機関や保険制度を活用した詳細な費用比較が必要です。

医師からの推奨をもとにした選択

状況別の最適な選択を行うには、患者自身の希望に加えて、医師の推奨を重視することも重要です。レグビオはsiRNA医薬としての新しいアプローチを提供していますが、その長期安全性や効果についてはまだ完全に確立されていない面があります。

一方、レパーサはヒト抗PCSK9モノクローナル抗体製剤として広く使用されており、これまでの実績や多数の臨床試験結果に基づいた信頼性があります。

患者の体質や病状、過去の治療履歴を総合的に判断した上で、医師の経験と知見を活用することが望ましいでしょう。

まとめ

レグビオレパーサを比較すると、以下のようになります。

薬剤名値段投与頻度適応保管方法
レグビオ300mgシリンジ443,548円/1筒初回3カ月、その後は半年高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症室温
レパーサ140mgペン24,302円/140mg本2週間から4週間ごと高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症(ホモ型も適応※完全欠損方には効果なし)冷所

適応となる高脂血症の型や、価格、通院頻度などに違いがあります。

主治医と治療方針を相談する際の参考になれば幸いです。

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