ミグリトール(セイブル)って食事に混ざって効果がでてるの?
販売を開始してから18年以上たち、それほど新しい薬ではないのですが、上記質問を同僚からされて即答できなかったため、今回色々調べてみました。
質問される前は、吸収されて血液に入ってから効果が出るんじゃないの?としか思ってませんでした。すみません。
- ミグリトール(セイブル)の作用機序
- ミグリトールの吸収、代謝、排泄、バイオアベイラビリティ
- どのように効果を発揮しているか
ミグリトール(セイブル)の作用機序
メーカー資料を基に、改めてミグリトール(セイブル)の作用機序をおさらいしたいと思います。
メーカー資料から読み解く、ミグリトールの作用機序
メーカー資料によると、以下のように記載されています。
①ミグリトールは、糖の消化・吸収が盛んな小腸上部でαーグルコシダーゼを阻害するため、食後の急峻な血糖上昇を抑制し、血糖のピークを低下させます。同時にミグリトール自体は小腸上部から吸収されます。
②小腸下部では、ミグリトールの薬物濃度が低下するためαーグルコシダーゼ阻害活性が減弱し、糖質の消化が進み、糖の吸収が起こります。その結果、血糖のピークが後ろにずれ、なだらかな血糖推移を示します。
③吸収されなかった未消化の糖質が大腸に到達した場合、腹部膨満・鼓腸・下痢といったαーグルコシダーゼ阻害剤に特徴的な消化器症状の原因になることがあります。
上記①にも記載があるように、確かにミグリトールは吸収されます。
しかし、αーグルコシダーゼとミグリトールが結合し、αーグルコシダーゼの作用を阻害しているのは、①にも記載があるように、小腸粘膜上皮細胞であり、薬が吸収される前の段階です。
②の図を見てもわかるように、一度吸収されたミグリトールが再び小腸下部で小腸上皮細胞に出てきてαーグルコシダーゼを阻害している様子はありません。実際に、ミグリトールの効果が薄れ、糖の吸収がすすむとの記載があります。
あれ?血液に入って効果が出る薬じゃないのか??
ミグリトール(セイブル)の吸収、代謝、排泄、バイオアベイラビリティ
ミグリトール(セイブル)の作用に関して知らない薬剤師、医療関係者はいないと思うため、効果、副作用等の基礎知識は今回省かせていただきました。
以下にインタビュフォームや添付文書から読み取った吸収、代謝、排泄、バイオアベイラビリティに関してのデータをまとめました。
ミグリトール(セイブル)の吸収、代謝、排泄、バイオアベイラビリティ
以下にミグリトール(セイブル)のインタビューフォームから抜粋したものを掲載しました。
ミグリトールはほとんど代謝を受けず尿中に排泄されることから、尿中排泄率は吸収率を反映しているものと考えられる。
<参考:外国人データ> 健康成人男性(6例)に3H-ミグリトール100mgを単回静脈内投与及び単回経口投与した結果、絶対的バイオアベイラビリティは約60%であると推定された
セイブルのインタビュフォームより抜粋
腎排泄型と聞いていたため、水溶性が高く、あまり吸収されない薬かと思っていましたが、吸収はしっかりされているようです。
参考資料
- セイブル添付文書
- セイブル インタビュフォーム
- 薬の相互作用としくみ 第2版|杉山正康
ミグリトール(セイブル)が食直前服用なのは、深い意味があった
ミグリトール(セイブル)が食直前服用(5~10分前)なのは、先に血中に薬が入っていないとαーグルコシダーゼを阻害する効果が十分に出ないためだと思っていました。
ミグリトール(セイブル)はタイミングが非常に大事!食事の量や勢いにも注意が必要かも?
しかし、今回調べたことから、ミグリトール(セイブル)は食事の残渣が小腸に残っていたり、服用してから5分よりも前に食事を食べてしまった場合、食べる勢いが強すぎたり、量が多すぎる場合は、小腸上皮細胞にあるαーグルコシダーゼと十分に結合できず、効果が出ない可能性があるのではないかと思いました。
また、10分より経過すると、今度は薬が吸収されてしまって、効果が出なくなる可能性もあるのではないかと感じました。
色々な資料を探してみましたが、食事の量や勢い、薬を服用後すぐに食事を食べたケースに関するデータは発見できませんでした。
おわりに
ミグリトール(セイブル)はよく知られた薬で、勉強するのもいまさら感もありましたが、調べてみると意外に奥が深いことがわかりました。
この記事が誰かの役に立てば幸いです。
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