あなたの胃薬はずっと飲んでも安全?腸内細菌への影響を解説します!

胃薬の一種であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)ボノプラザン(タケキャブ)などのP-CABは腸内細菌への影響が報告されています。

この記事では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)P-CABとはどんな薬?というところから、胃薬を含めたさまざまな薬の腸内フローラへの影響を調べてまとめました。

この記事でわかること
  • 胃薬とは何か
  • プロトンポンプ阻害薬(PPI)とは?
  • P-CABとは?
  • プロトンポンプ阻害薬(PPI)P-CABの腸内細菌への影響とは?
  • さまざまな薬剤と腸内フローラへの影響
  • 腸内フローラを整える食生活や生活習慣
目次

胃薬とは?腸内細菌とは?

胃薬は、胃の酸を中和したり、胃の粘膜を保護したりする薬です。

一般的には、胃痛や胃もたれ、逆流性食道炎、胃潰瘍などの症状を緩和するために使用されます。

これらの薬にはさまざまな種類があり、それぞれ異なるメカニズムで効果を発揮します。

腸内細菌の基本

腸内細菌は、我々の腸に住んでいる微生物のことで、腸内フローラとも呼ばれます。

これらの微生物は数百種類以上存在しており、食物の消化、栄養の吸収、免疫機能のサポートなど多くの重要な役割を果たしています。

特に乳酸菌のような善玉菌は、腸内環境を整えるのに大きく貢献しています。

しかし、胃酸分泌抑制薬、アルコール、食事、下剤、細菌自体に影響を与える物質(抗菌薬)や微生物(腸管感染症)などによって腸内環境のバランスが崩れる可能性が示唆されています

その均衡が崩れることは多くの疾患と関連することが知られています。

胃薬の種類とその作用

胃薬にはいくつかの種類があり、主に以下のようなものがあります

  • プロトンポンプ阻害薬(PPI): 胃酸の分泌を強力に抑え、胃潰瘍や逆流性食道炎の治療に使用されます。
  • カリウムイオン競合型酸ブロッカー(P-CAB):胃酸の分泌をもっとも強力に抑え、胃潰瘍や逆流性食道炎の治療に使用されます。
  • 制酸薬: 胃酸を中和して胃の不快感を軽減します。一般的に市販されている薬で、即効性があります。
  • H2ブロッカー: 胃酸の分泌を抑えることで、胃痛や胃もたれを緩和します。
  • 健胃薬と整腸薬: 胃の働きを助け、腸内細菌のバランスを整える効果があります。

プロトンポンプ阻害薬(PPI)と腸内細菌

それでは腸内細菌とプロトンポンプ阻害薬(PPI)カリウムイオン競合型酸ブロッカー(P-CAB)との関係を見ていきましょう!

プロトンポンプ阻害薬(PPI)の作用機序

プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、胃酸の分泌を抑えるために使用される胃薬です。

具体的には、胃の壁細胞に存在するプロトンポンプという酵素の働きを抑制します。

この酵素は胃酸を分泌する役割を持っており、その活動を抑えることで胃酸の分泌量を劇的に減少させます。

これにより、逆流性食道炎や胃腸炎の症状を効果的に緩和します。

カリウムイオン競合型酸ブロッカー(P-CAB

日本において発売されている商品としては、ボノプラザン(タケキャブ)があります。

プロトンポンプ阻害薬(PPI)と異なる機序でプロトンポンプを抑え、より強力に酸分泌を抑制します。

カリウムイオン競合型酸ブロッカー(P-CAB)はプロトンポンプ阻害薬(PPI)と比較して短時間で効果が出ます。またPPIは薬の種類によっては代謝速度が異なり、有効時間の個人差が見られましたが、P-CABは全員に著効を示します。

さらにPPIが抑制しきれない夜間の酸分泌抑制効果もあると報告されています。

プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型酸ブロッカー(P-CAB)が腸内細菌に及ぼす影響

プロトンポンプ阻害薬(PPI)カリウムイオン競合型酸ブロッカー(P-CAB)は胃酸を抑えることで胃のpH値を上昇させますが、これが腸内細菌に影響を及ぼすことが知られています。

胃酸は本来、食物中の細菌やウイルスなどを殺菌する役割も持っています。そのため、胃酸が少なくなるとこれらの微生物が殺菌されずに腸内にまで届きやすくなってしまいます。

特に乳酸菌をはじめとする有用な腸内細菌にとっては、生育環境の変化がストレスとなり、腸内フローラのバランスが乱れる可能性が示唆されています。

臨床研究と統計データ

多くの臨床研究により、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型酸ブロッカー(P-CAB)が腸内細菌のバランスに影響を与えることが明らかになっています。

薬剤による腸内細菌の変化が有害事象を直接引き起こすかはまだ十分明らかではありませんが、多くの疾患と腸内細菌が関連していることが報告されており、影響は無視できないと考えられています。

例えば、PPIやP-CABを長期間使用することで、腸内細菌のバランスが崩れ、腸内の有害細菌が増加し、腸管感染症、肝性脳症、NSAIDs起因性小腸障害のリスクが上昇する可能性も示唆されています。

また、PPIやP-CAB投与により、薬剤耐性腸内細菌感染リスクが増える可能性を報告している論文もあります。

一方で、PPIやP-CABなどの腸内細菌に影響を及ぼす薬の中止により、腸内細菌バランスは回復するとされています。

また、腸内環境を整えることを目的とした整腸薬との併用により、PPIの負の影響を軽減することも検討されています。

参考資料

薬剤と腸内細菌の関係

それではPPIやP-CAB以外のほかの薬剤の腸内細菌への影響がどうなのでしょうか?

薬剤の腸内細菌への影響はどの程度なのでしょうか?

どの薬剤が腸内フローラにもっとも影響を与えるのでしょうか?

日本人約4,200例を対象に、世界初の大規模マイクロバイオームデータベースを活用し、国立国際医療研究センターで2022年7月におこなわれた研究結果を紹介します!

日本人の腸内細菌叢に影響を与える要因をランキング

日本人の腸内フローラを対象にしたこの研究により、日本人の腸内細菌叢に影響を与える要因としては、薬剤の影響が最も強く、次いで疾患、身体測定因子(年齢・性別・BMI)、食習慣、生活習慣、運動習慣の順であることが明らかになりました。

薬剤が及ぼす影響は食習慣、生活習慣、運動より3倍以上も強く、この影響度の強さは、腸内フローラを属、種、遺伝子機能等のさまざまなレベルで解析しても同様な結果であったことが報告されています。

腸内フローラに影響を与える薬剤の種類をランキング

薬剤の中でどのような疾患治療薬が腸内フローラに強い影響を及ぼすのかを検証した結果も報告されています。

その結果、消化器疾患治療薬、糖尿病薬、抗生物質、抗血栓薬、循環器疾患薬、脳神経疾患薬、抗がん剤、筋骨格系疾患薬、泌尿器・生殖器疾患薬、その他(呼吸器系疾患薬や漢方薬)の順で影響が強いことが分かりました。

また、消化器系疾患薬の中では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)ボノプラザン(タケキャブ)などのP-CABとよばれる胃酸分抑制薬、Osmotic acting laxative(浸透圧性下剤)、アミノ酸製剤、胆汁酸促進剤の影響が強く、糖尿病薬の中ではαグルコシダーゼ阻害薬が最も強く影響することが判明しました。

かばこ

H2ブロッカーなどの他の胃薬に関しては、腸内フローラに明らかな影響を与えるとした論文は発見できませんでした。

にゃーこ

現段階では、PPIP-CABほどの腸内フローラへの影響はないと考えられます。

薬剤の多剤併用(ポリファーマシー)が及ぼす腸内フローラの変化

薬剤投与数が増えるにつれて腸内に常在している日和見感染症を引き起こす病原菌が増えることが報告されています。

腸内細菌を増やす食事と生活習慣

腸内環境に影響を及ぼす薬を治療上継続しなければならない場合もあるでしょう。

そのような場合、食生活、生活習慣を整えることで、ある程度腸内環境への影響を和らげられると考えられます。

腸内フローラを整える食材

腸内の善玉菌を増やすには、善玉菌が好むエサを含む食材を毎日の食事で摂ることがポイントです。

具体的には、善玉菌のエサとなる食物繊維をたっぷり摂ることが大切です。

食物繊維は、水に溶ける「水溶性食物繊維」と水に溶けない「不溶性食物繊維」に大きく分けられます。

善玉菌のエサになりやすいのは水溶性食物繊維なので、果物や海藻類、大麦など、水溶性食物繊維を多く含む食品を積極的に摂るようにしましょう。

水溶性食物繊維を多く含む食材
  • 大麦
  • 玉ねぎ、大根、ごぼう、にんにく、らっきょう、エシャロットなどの野菜類
  • キウイフルーツ、パパイヤなどの果物類
  • わかめ、こんぶなどの海藻類

特に、水溶性食物繊維の中でも発酵性の高いペクチンオリゴ糖という糖質を含む食品がおすすめです。

ペクチンを含む食材りんご、レモン、オレンジ、キウイ、バナナなどの果物やオクラなど
オリゴ糖を含む食材たまねぎやバナナ、とうもろこし、はちみつ、大豆、ごぼう、アスパラガス、にんにくなど

しかし、食品からとれるオリゴ糖の量は非常に微量です。

体にとってよりプラスの作用を期待してオリゴ糖を摂取するときは、食品素材として販売されているオリゴ糖食品(オリゴ糖素材)を使用するのもひとつの方法かもしれません。

善玉菌が多く含まれている食材を、善玉菌の餌となる食材と一緒にとるとより効果的です。

善玉菌が多く含まれる食材

味噌、醤油、ヨーグルト、チーズ、漬物、日本酒、納豆、キムチ など

食事からとることが難しい場合は、市販薬などを利用もおすすめです!

かばこ

食品添加物、砂糖、人工甘味料、アルコールは悪玉菌を増やし、腸内フローラを悪化させるため、摂りすぎに注意が必要です。

腸内フローラを整える食事方法

腸内フローラを整える食材をどのように取り入れたらよいのでしょうか?

食事方法の例を紹介します!

食事方法
  • ごはんを炊く際に、水溶性食物繊維が豊富な大麦を加える。
  • 漬物やキムチなど、保存のきく発酵食品を冷蔵庫に常備する。
  • 熱に強い納豆菌の特性を活かし、納豆は炒めものなどの料理にアレンジする。
  • ヨーグルトにリンゴや柑橘類のジャム、はちみつ、バナナ、キウイフルーツなどを加える。
  • 味噌汁に海藻や野菜を加える

腸内フローラを整える生活習慣

悪玉菌を増殖させる原因の1つが便秘ですが、運動には便秘を予防・改善する効果があります。

適度な運動で蠕動運動を促す

ウォーキングとともに、腸のぜん動運動を促すヨガやストレッチを習慣として行うのがおすすめです。

睡眠をとる

腸の働きを司る自律神経のバランスが乱れると、腸の動きも乱れがちになります。

自律神経には心身を活動に導く交感神経と、リラックスに導く副交感神経があり、両者がバランスをとりながら心身のリズムを司っています。

副交感神経を優位にするために、まずはぐっすりと眠ることが大切です。

ハム吉

不規則な生活や睡眠不足、ストレスは悪玉菌を増やすと言われています。

まとめと対策

近年、腸内フローラのバランスが崩れることは、多くの疾患と関連することが知られています。

そのため、腸内フローラのバランスを壊さない、改善することに注目が集まっています。

この記事では、胃薬の一種であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)ボノプラザン(タケキャブ)などのP-CABは腸内細菌への影響を中心に、薬の腸内フローラへの影響をまとめました。

また、たとえ薬の影響があったとしても、食生活や生活習慣の見直しで、これらの影響を抑えることができるのではないかと考え、腸内フローラによい食材、生活習慣に関しての情報も加えました。

この記事が誰かの役に立てば幸いです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

目次