フォシーガは主成分名がダパグリフロジンプロピレングリコール水和物という、選択的SGLT2阻害剤です。
10年程度の歴史があり、糖尿病のみならず、慢性腎不全、慢性心不全などに対して適応が通っています。
恥ずかしながら、病名によって開始用量が異なることについ先日気が付いたため、念のためまとめて記事に残すことにしました。

言い訳ですが、病名による開始用量の違いは非常に見落としやすいです…。
- フォシーガとはどんな薬か?
- フォシーガの病名による開始用量の違い
フォシーガとはどんな薬?


フォシーガは有名な薬だから知っているよ!という方は読み飛ばしていただければと思いますが、念のため、簡単に薬理作用とどんな病気に適応が通っているかをまとめました。
フォシーガの歴史
日本では2014年に2型糖尿病、19年に1型糖尿病の適応で承認されました。
一方、開発の過程では心臓や腎臓に対する効果もあることが示唆されたことから、それらに対する臨床開発も行われ、20年に慢性心不全の適応を取得しています。
2021年、慢性腎不全(CKD)への適応拡大の承認を得るに至りました。
フォシーガの薬理作用と効果
フォシーガは、腎臓の近位尿細管付近でグルコースやナトリウムの再吸収に関わるSGLT2(ナトリウム-グルコース共輸送体2)を阻害する薬剤です。
服用すると、血液中へ再吸収される糖が減少するため、血糖値が低下します。
同時に、血液中へ再吸収されるナトリウム量も減少するため、腎臓への負担が軽減されます。
効果をまとめると以下の通りです。
- 腎臓の近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑え、尿から糖を排出することで血糖値を下げる
- 体重減少効果がある
- 単独での使用は低血糖を来す可能性が低い
- 心血管イベントの発症リスクの高い患者において、心血管イベント(心不全)の発症を優位に抑制する事がわかっている
- 腎臓への糖の負担を減らし、腎機能の低下を防ぐ効果が期待できる
フォシーガはどんな病気に適応が入っているか
フォシーガは以下の病気に適応が通っています。
- 1型糖尿病・2型糖尿病
- 慢性心不全 ※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
- 慢性腎臓病 ※ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。
どんな副作用に注意が必要か?
SGLT2阻害薬の副作用としては、尿中の糖が増えるため、主に膀胱炎等の尿路感染症、膣カンジダ症等の性器感染症が懸念されています。



女性の方は特に注意は必要です。
また、利尿作用による脱水や尿量増加による頻尿にも注意が必要です。
フォシーガの開始用量をチェック!病名とあっている?


病名と用量、使用方法、服用方法などが異なっていると、何が問題なのでしょうか?
適応が通っていないということは、十分な臨床実験が行われていないため、副作用のリスクがあります。
また、保険適応外使用となるため、病院側としては保険請求ができない可能性があります。
糖尿病とその他の病気で開始用量が異なる
添付文書では以下のような記載があります。↓
<2型糖尿病>
通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg1日1回に増量することができる。
<1型糖尿病>
インスリン製剤との併用において、通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg1日1回に増量することができる。
<慢性心不全、慢性腎臓病>
通常、成人にはダパグリフロジンとして10mgを1日1回経口投与する。
フォシーガ添付文書より抜粋
この記載からわかるように、初回で10mgが処方された場合は注意が必要です。
ほかに糖尿病の薬を飲んでいる、腎機能低下や心不全の薬を飲んでいない場合は、開始用量を誤っている可能性があるため、念のため確認した方がよいでしょう。



保険で切られるかどうかは保険者の考えによります。
フォシーガは適応条件にも注意が必要!
また、適応条件にも注意が必要です。↓
- 1型糖尿病・2型糖尿病
- 慢性心不全 ※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
- 慢性腎臓病 ※ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。
慢性心不全で診断が出ており、処方が出ている場合であっても、慢性心不全の標準的な治療が行われていない場合は適応外になる可能性があります。
まとめ


この記事では、フォシーガの適応条件、開始用量に関してまとめました。
以下の2点に関して注意しましょう!↓
- フォシーガ10mgが開始用量の場合は病名を確認する。(糖尿病の場合は5㎎から開始)
- フォシーガのみ単剤で処方されている場合は、病名などを念のため確認する
添付文書は情報量が多いため、開始用量や細かい適応条件までは見逃しがちなところではありますが、医師もそれは同じであり、薬剤師が監査で指摘、ブロックできると感謝される部分でもあります。
フォシーガは低血糖の起きにくい比較的安全な薬ですが、1型糖尿病や食事がとれていないときに服用すると、正常血糖値でありながらケトアシドーシスをおこすリスクがある薬でもあり、実は注意がいろいろと必要な薬です。
体調などと併せて、投薬時に確認できるといいなと思います。
これらの情報がほかの方にとって少しでも役に立てれば幸いです。
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