デノタスチュアブルは骨粗鬆症治療薬であるプラリア皮下注の副作用防止のために処方される薬です。
デノタスチュアブルはアルミ包装に入っている薬で、当然一包化はできないものだと思っていました。
しかし先日デノタスチュアブルのバラ錠があることを発見し、戸惑いました。
併せて、以前デノタスチュアブルに関してメーカーに確認したこともまとめました。
- デノタスチュアブルとは
- デノタスチュアブルは一包化できるのか
- デノタスチュアブルのバラ錠はなぜあるのか、どのように使用するのか
- デノタスチュアブルは単独でも処方できるのか
- プラリア皮下注にはデノタスチュアブルの処方は必須なのか
デノタスチュアブルはどんな薬?
プラリア皮下注の処方が増加傾向のため、デノタスチュアブルを調剤する機会も増えつつあります。
デノタスチュアブルはどのような薬なのでしょうか?
デノタスチュアブルの飲み方
通常、1日1回2錠を経口投与する薬です。
かみ砕いて服用します。
デノタスチュアブル発売の経緯
ヒト型抗 RANKL モノクローナル抗体であるデノスマブを有効成分とするランマ-ク皮下注120mgの市販後、重篤な低カルシウム血症の副作用(死亡例を含む)が報告されたことから、重篤な低カルシウム血症の発現を軽減するため、カルシウム及びビタミン D の経口補充の必要性について注意喚起がなされました。
その中で、ビタミン D については、高カルシウム血症に陥る危険性を低減する観点から、ビタミンD活性化が障害されている腎機能障害患者を除き、天然型ビタミンDを使用すること推奨され、デノタスチュアブルが開発されることとなりました。
デノタスチュアブルの名前の由来ですが、RANKL阻害剤デノスマブ(商品名:ランマーク皮下注、プラリア皮下注)に足して服用することから、デノタス(DENOTAS)としたようです。
ランマークとプラリアは同じデノスマブを有効成分としていますが、適応症、使用用量、用法に違いがあります。
◎プラリアの効能又は効果
・骨粗鬆症
・関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制
用法および用量
〈骨粗鬆症〉
通常、成人にはデノスマブ(遺伝子組換え)として60mgを6ヵ月に1回、皮下投与する。
〈関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制〉
通常、成人にはデノスマブ(遺伝子組換え)として60mgを6ヵ月に1回、皮下投与する。なお、6ヵ月に1回の投与においても、骨びらんの進行が認められる場合には、3ヵ月に1回、皮下投与することができる。
◎ランマークの効能又は効果
・多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変
・骨巨細胞腫
用法及び用量
〈多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変〉
通常、成人にはデノスマブ(遺伝子組換え)として120mgを4週間に1回、皮下投与する。
〈骨巨細胞腫〉
通常、デノスマブ(遺伝子組換え)として120mgを第1日、第8日、第15日、第29日、その後は4週間に1回、皮下投与する。
デノタスチュアブルの特徴とは?
デノタスチュアブル配合錠は、以下の成分を含有しています。
- 沈降炭酸カルシウム
- コレカルシフェロール(天然型ビタミンD)
- 炭酸マグネシウム
カルシウムの吸収を促進する天然型ビタミンD3に加え、カルシウムの代謝に関与するマグネシウムを配合しており、 デノスマブ投与時の低カルシウム血症の発現抑制効果が確認されました。
製剤学的特性としては、ヨーグルト風味のチュアブル錠で、水なしでそのまま服用できます。
デノタスチュアブルはプラリア、ランマークとセットでのみ処方できる
添付文書に記載のあるように、デノタスチュアブルの処方は、デノスマブ(プラリア、ランマーク)との併用が必須をなっています。
4. 効能または効果
RANKL阻害剤(デノスマブ(遺伝子組換え)等)投与に伴う低カルシウム血症の治療及び予防
デノタスチュアブル 添付文書
デノタスチュアブル単体では保険で切られる可能性がある
以前プラリアからイベニティに処方変更になった方がいたのですが、そのままデノタスチュアブルの処方が数か月にわたって継続されていました。
Q デノタスはデノスマブ(ランマーク、プラリア)投与時以外にも使用できますか?
デノタスの効能又は効果は「RANKL阻害剤(デノスマブ(遺伝子組換え)等)投与に伴う低カルシウム血症の治療及び予防」のため、デノスマブ(ランマーク、プラリア)を投与していない場合は使用できません。
第一三共/よくある質問
デノタスチュアブルは一包化できる?
私たち薬剤師がみかけるデノタスチュアブルはアルミ包装に入った、上記のようなものです。
デノタスチュアブルが一包化できるのかどうかの結論を先に述べてしまうと、一包化はできません。
理由や資料、バラ錠などに関してもまとめましたので、見ていきましょう!
デノタスチュアブル錠は吸湿性があり、光に弱い
以下はインタビューフォームから抜粋したデータです。
アルミ包装、瓶包装に入った状態では半年以上、安定性は問題ありません。
しかしシャーレ解放状態では、湿度、光の影響で短期間の間に硬度や含量低下を認めています。
添付文書でも確認しましたが、以下のような記載があります。
14.1.2 吸湿及び光により品質低下が認められているので、分包しないこと。
デノタスチュアブル 添付文書より引用
デノタスチュアブルには瓶包装がある!もしかして一包化できる?
前述したように、デノタスチュアブルはデータ上も添付文書上も、どう考えても一包化できません。
しかし下記のような瓶包装(56錠、100錠)があります。↓
このようなバラ錠が存在するということは、何らかの条件(遮光、乾燥剤)で一包化できるのでしょうか?
それとも瓶のまま処方する薬なのでしょうか?
気になったのでメーカーに確認してみました。
バラ錠が存在するということは、何らかの条件で一包化できるのでしょうか?
一包化はできません。
じつは瓶包装のほうが先に発売されており、その後、ご要望によりアルミ包装が発売されました。
先に瓶包装が発売していたのですね!いままで知りませんでした。
56錠、100錠包装ともに、そのまま瓶で処方いただき、患者さんにそこから服用時に取り出してもらう商品です。
大きな病院でもだいたい処方日数90日までなのに、100錠包装とか需要があるのだろうか?
疑問は色々残りますが、もしかしたら海外で発売していた包装のまま日本で発売したため、このような形になったのかもしれません。
参考資料
- デノタスチュアブル添付文書
- デノタスチュアブル インタビューフォーム
プラリア皮下注は、デノタスチュアブルを必ず処方しないといけない?
プラリア皮下注とまるでセットかのようにデノタスチュアブルの処方をだす医療機関があります。
そのため、プラリア皮下注が処方された場合、かならずセットでデノタスチュアブルを処方しないといけないと思っている人もいるかもしれません。
しかしプラリア皮下注単体の処方でも問題ないですし、エディロールのような活性型ビタミンDを代わりに用いても問題ありません。
ただし、前述したようにプラリア皮下注はカルシウム値が下がりやすいため、定期的にカルシウム値を確認したほうがよいでしょう。
腎機能が低下している人は活性型ビタミンDの方がよい場合も
デノタスチュアブルの添付文書にも記載があるように、腎機能が低下している場合は、デノタスチュアブルでは十分な効果が出ない場合があります。
9.2 腎機能障害患者
ビタミンD3の活性化が障害されているため、本剤の必要性を慎重に判断すること。
腎機能障害の程度に応じ、本剤の投与を中止し活性型ビタミンD3及びカルシウム等の他の薬剤に切り替えるなど、適切な処置を行うこと。
デノタスチュアブル 添付文書
しかし腎機能が低下している場合はエディロールなどの活性型ビタミンDによる高Ca血症のリスクもあがるため注意が必要です。
- 参考資料
- デノタスチュアブル添付文書
- デノタスチュアブル インタビューフォーム
- エディロール 腎機能患者への投与|中外製薬
おわりに
先日デノタスチュアブルが一包化指示で処方されました。
当然デノタスチュアブルは一包化できないと思い、疑義紹介をかけようと思ったところ、デノタスチュアブルのバラ錠の写真を発見し、不安になってしまいました。
疑問をそのままにしておいてもよいことはありません。
メーカーにバラ錠の存在理由とデノタスチュアブルが一包化できるかどうかを確認したため、記事にまとめました。
参考になれば幸いです。
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