大建中湯とアカルボースなどのαーグルコシダーゼ阻害薬でガスが増える?

大建中湯はおなかが張って苦しいときに用いられる漢方薬です。

おなかが張って苦しいときに飲む漢方なのにも関わらず、アカルボースなどのαーグルコシダーゼ阻害薬と一緒にのむことでさらにガスが増えておなかが張る可能性があることをご存じでしょうか?

この記事では、大建中湯アカルボースの併用でなぜこのようなことが起きてしまうかを解説します。

かばこ

αーグルコシダーゼ阻害薬でお腹の調子が悪い人には、大建中湯は控えることをおすすめします!

この記事でわかること
  • 大建中湯とは?どのような作用でお腹に作用している?
  • アカルボースの副作用である腹部膨満感に関して
  • アカルボース大建中湯の併用で何が起きるか
目次

大建中湯はどんな薬?便秘を改善する?

大建中湯は腹痛などの腹部に不調のある方に処方される漢方です。

かばこ

便秘症状を訴える人にもよく処方されている印象です。

日本でもっとも使用されている漢方のひとつです。

しかし、大建中湯には大黄(ダイオウ)芒硝(ボウショウ)のような下剤作用のある生薬は含まれていません。

ではどのような作用で大建中湯は腹部の不調に効果が出ているのでしょうか?

まずは大建中湯の作用に関して解説していきます!

大建中湯に含まれる生薬

大建中湯に含まれる生薬を以下にまとめました。

成分分量効果主成分
乾姜(カンキョウ)5.0g胃腸や肺、四肢をよく温めて機能を高め、体内の冷えた不要な水分を温め除くジンゲロール
人参(ニンジン)3.0g消化力をたかめ、食欲不振などの胃腸虚弱の改善に用いられるジンセノシド
山椒(サンショウ)2.0g腹部をよく温め動かし、痛みをとめる。サンショオール
膠飴(コウイ)10.0g甘みがある。体力、気力を回復させるマルトース
ツムラ 大建中湯添付文書を参考に作成

体力虚弱で、腹が冷えて痛むものの次の諸症:下腹部痛、腹部膨満感に効果があるとされています。

おなかが冷えて弱ると、胃腸の動きが悪くなり、ガスが腸内にたまりやすくなり、ひどくなると腹痛があらわれることもあります。大建中湯は、血流を良くしておなかを温めることで、胃腸の働きを整え、おなかのハリや腹痛を改善します。

ツムラ 大建中湯エキス顆粒 一般向け製品サイトより引用

かばこ

下剤作用ではなく、腹部全体の血行を改善して腹痛を改善する漢方なんですね!

ハム吉

山椒(サンショウ)が腸を動かすため、どちらかというと便秘型の腹部症状に効果があります。

市販の大建中湯は膠飴(コウイ)が含まれていない!?

メーカーにもよりますが、ツムラの一般用の大建中湯には膠飴(コウイ)が含まれていません。

代わりに乳糖が含まれています。

大建中湯のもっとも効果的な飲み方は?

以下に大建中湯の薬物動態を掲載しました。

ツムラ大建中湯 添付文書

上記の情報からわかるように、大建中湯は服用して15分程度で効果が現れるということです。

しかし持続時間は短く、1日3回ではなく、できるだけ頻回に服用した方がよいことがわかります。

生活スタイルによってなかなか難しい場合もありますが、もっともおすすめな方法は、1日分の6包を500ml程度のお湯に溶かし、お茶の代わりに1日かけて頻回にのむことです。

大建中湯は炎症性腸疾患にも効果が期待されている

大建中湯は、大腸がん手術後の腸閉塞の予防・改善のための薬としても広く用いられています。

2022年の論文で、その科学的なメカニズムが明らかになりました。

大建中湯が大腸において特定の腸内フローラ(腸内細菌叢)の増加を促し、そのフローラにより産生される代謝物プロピオン酸が大腸上皮を介して免疫細胞の一つである3型自然リンパ球に作用することで大腸を健全に保ち、炎症から腸管を保護するメカニズムを明らかにしました。

炎症性腸疾患における漢方「大建中湯」の作用機構を解明|理化学研究所より引用

科学的に解明されたことで、より一層大建中湯の活用が広がっていくものと思われます。

参考書籍はこちら

ガスが増える?アカルボース大建中湯の併用で何が起きた?

前述した、大建中湯の成分のところをもう一度見てください。↓

成分分量効果主成分
乾姜(カンキョウ)5.0g胃腸や肺、四肢をよく温めて機能を高め、体内の冷えた不要な水分を温め除くジンゲロール
人参(ニンジン)3.0g消化力をたかめ、食欲不振などの胃腸虚弱の改善に用いられるジンセノシド
山椒(サンショウ)2.0g腹部をよく温め動かし、痛みをとめる。サンショオール
膠飴(コウイ)10.0g甘みがある。体力、気力を回復させるマルトース
ツムラ 大建中湯添付文書を参考に作成

膠飴(コウイ)つまり水飴は、マルトースやデキストリンなどの二糖類を多く含むため、アカルボースなどのαーグルコシダーゼ阻害薬との相性が悪いのです。

詳しく理由に関して解説していきます!

アカルボースなどのαーグルコシダーゼ阻害薬の作用と副作用

アカルボースなどのαーグルコシダーゼ阻害薬の作用はⅡ型糖尿病の治療薬です。

小腸粘膜上皮細胞に存在する二糖類分解酵素(αーグルコシダーゼ)の作用を競合的に阻害し、小腸で二糖類から単糖への分解を抑制することで、食後の血糖値の急上昇を防ぎ、体への負担を減らしてくれる薬です。

このアカルボースの主な副作用として、未消化の二糖類から腸内細菌によって酢酸、酪酸、乳酸などの有機酸が生成されます。

つまり、単鎖脂肪酸や水素ガス、メタンガスなどが生成されることにより、アカルボースは副作用として腹部膨満感、便通異常がおこります。

継続しているうちに慣れてくることが多い副作用ではありますが、おなかがパンパンに張って四六時中ガスがでるため、不快に感じる方もいるようです。

大建中湯との併用でガスが増える!?

先述したように、膠飴(コウイ)つまり水飴は、マルトースやデキストリンなどの二糖類を多く含みます。

そのため、アカルボースなどのαーグルコシダーゼ阻害薬と併用することで、さらに腸管内の糖質が増え、ガスの産生量が増えます。

結果として、アカルボースの副作用をさらに悪化させる可能性があります。

かばこ

もしも腹部症状で大建中湯が新しく処方された場合は注意しましょう!

おわりに

大建中湯は腹部症状に頻繁にみかける処方ではあるものの、下剤作用のある生薬は含まれておらず、以前からどのような作用で腹部症状に効果が出ているのか気になっていました。

アカルボースとの相性があまりよくないという記事をたまたま見かけたため、理由に関してまとめました。

参考になれば幸いです。

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