【医療news】「計91%が緊急避妊薬の薬局販売に反対→実際は42%だった。」というニュースに関して薬剤師が思ったこと。

薬剤師向け情報

 

緊急避妊薬の薬局での販売に関して、産婦人科医に対して行ったアンケートの結果を、産婦人科医会が改竄して報告していたというニュースです。

2021年の10月5日にBuzzFeedNewsに掲載されていたニュースを今更見て、ショックを受けると同時に少しほっとしたので、その理由に関して書いてみました。 ひとりの薬剤師の意見として流し読みしていただければ幸いです。

元ネタのニュース記事はこちらです↓

出典: BuzzFeedNews

ほとんど賛成と同義であるにもかかわらず反対にしていた

提出された資料では、薬局販売に「賛成(条件付き賛成を含む)」と回答した上で、性教育や性暴力被害者のためのワンストップセンターの充実などの「設けた方が良いと思う要件または必要と思われる取り組み」を選択肢から選んで回答した層が、賛成派ではなく、「現状のままでは反対」の反対派として集計されていた。 

出典:BuzzFeedNews 

賛成とほとんど同義であるにも関わらず、実際はこの条件のところに何かしらの記載をした回答は、反対のカテゴリーに入れられてしまっていたようです。

記事にもあるように、条件付きとはいえ、努力で十分に対応可能な条件であり、反対と数えるのはあまりにも乱暴で、歪曲されていたと言えると思います。

かばこ
かばこ

新しいことを始めるときに、無条件で賛成という事はほとんどないと思います。

ましてや専門の先生方であれば色々な患者さんを診てきているわけで、無条件で無責任に賛成と言わないのはある程度当たり前の結果だと思います。

むしろ条件付きでも賛成と考えている医師が多くいる結果を考えてほしいと思います。

実際は反対42%、賛成と条件付き賛成で54.7%

条件付きというところで気になるのが、一番挙げている条件に「性教育の充実」となっており、医師会側も「義務教育で適切な性教育が行われていない状況下での、緊急避妊薬のOTC化は反対」という姿勢を示しているようですが、この「義務教育での適切な性教育の充実」という条件が実に曲者だと思うのです。

教育は管轄が厚生労働省ではなく、文部科学省

医師等の管轄は厚生労働省なのですが、条件となっている性教育の拡充を行う権限を持っているのは文部科学省で、管轄外になります。

いくら数名の現場で働く医師が性教育の拡充を行いたいと思っていても、全国の教育機関で継続的に講演会を開く事は現実的ではありません。文部科学省が協力して教科書の内容を拡充したり、先生自体の性教育に対する意識を変えていかないと難しいと思います。

数年前から議論になっているにもかかわらず、医師会がその問題に対して文部科学省も働きかけている様子も見られなければ、文部科学省が自発的に行う様子ももちろんありません。

緊急避妊薬の勉強会でも「条件となっている性教育の拡充は文部科学省の管轄だから…」と少し悔しそうに言っていました。

かばこ
かばこ

もしかして薬局やドラッグストアで緊急避妊薬が手に入るようになると医師会が困るから、あえて無理な条件を出し続けている??と懸念すら抱いてしまいます。

それと、もう既に義務教育が終わってしまった世代の人でも、望まない妊娠で苦しんでいる人がいます。

そういった人に今更教育を!と理想を掲げても仕方がないので、そういった人を救うためにも、「性教育の拡充」と並行して安全に早く緊急避妊薬が手に入る仕組みを整えてあげるべきなのではないでしょうか。

意外と賛成が多くてほっとした

現場にいる医師達も医師会の先生方と同様な、現状維持を支持する人ばかりなのかと思っていたのですが、患者さんの事を考えて前向きに検討し、苦慮している先生方がいることも知り、ほっとしました。

現在の薬局での緊急避妊薬の取り扱いに関して

現在はオンラインで医師に処方箋を発行してもらい、研修を受けた薬剤師がいる薬局でのみ販売となっています。

ただ、あまりに面倒で、患者にとっては恥ずかしい条件が多すぎて実際にはほとんど処方で出ない

緊急避妊薬の勉強会で驚いたのが

  • オンラインであっても、医師の処方がなければ調剤できない(2度手間)
  • 薬局で調剤する場合は必ず本人が、来局する
  • 薬剤師の前で必ず服用しなければならない
  • 必ず3週後に産婦人科を受診しなければならない

そもそもこういうものはあまり話したくない事情が多いし、どんなにプライバシーを配慮しようとしても限界のある薬局で、ここまでの制限をかけると、ほとんど来局するメリットはありません。

産婦人科に行けば一度で済むので楽だし、プライバシーにも配慮されているし、安心です。

更にびっくりしたのが、出来れば薬局で性教育も投薬時に行って欲しいというものでした。患者さんからしたら薬局で、プライバシーの配慮も十分でなく、気持ちも落ち込んで焦っているときに性教育なんか受けたいわけがありません。

かばこ
かばこ

本当に制度だけ整えてやったぞというような内容でした。医師会は薬局では薬を出したくないんだなというのがとても良くわかる内容でした。

緊急避妊薬の勉強会を受けたときの内容はこちら↓

出来ないばかりでなく、出来る為にはどうしたらいいのか考えていってほしい

産婦人科医会の発言全体に感じている事なのですが、あれこれ理由をつけて現状維持しようとする発言が多すぎて、疑問を感じています。

産婦人科医会のみならず、医師会などに対しても日々感じている事なのですが、これだけ薬剤師にとって使いにくい制度にしておきながら、「薬剤師は私たちが色々制度を作ってやっているのに活用できていない。仕事をしていない」という趣旨の発言を度々されているのを記事で見るたびに悲しくなります。

仕事をしているかしていないかは、もう少し私たちが介入しやすい制度を作ってから言って欲しいなと思います。

追加)中絶薬の承認でも色々問題になっているようです

イギリスが承認を求めており、世界80か国で承認されている「中絶薬」があまりにも高額で物議をかもしています。

経口中絶薬の世界の平均卸価格は700円台。それを人工中絶と同じ価格の10万円程度で処方することを示唆する日本産婦人科医会の発表に対して反対の声があがっているようです。

出典:現代ビジネス

医療も慈善事業ではないので、ある程度利益を追求しないといけないのがわかりますが、ここまで色々お金と命のバランスが悪いと問題だと思います。

 

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